Medha Singh Lisa Pauline Mattackal
[12日 ロイター] - 暗号資産(仮想通貨)で最大の時価総額を誇るビットコインにとって、昨年が「傷心」の時期だったとすれば、今年はその痛手を回復している。
ビットコインは価格低迷、少ない取引量、厳しい経済環境という逆境から敢然と立ち直った。夏場には一時不振に見舞われたものの、10月には第二波の上昇も経験した。
スパルタン・グループの共同創業者兼マネジングパートナー、ケビン・コー氏は「(ビットコインは)見事な回復であるばかりか、新たなサイクルの入り口に差し掛かっている」と強調する。
実際に今年はビットコインにとって驚くほど素晴らしい1年になりつつある。年初からの上昇率は164%に達し、価格は4万ドルを突破。伝統的な資産である金の10%や、S&P総合500種の20%をはるかに上回る値上がりぶりだ。
コインゲッコーによると、ビットコインは仮想通貨市場における取引シェアも38%から50%強に拡大した。
今年のビットコインの上昇は大半が終盤になってからのものだった。米国で現物ビットコインの上場取引信託(ETF)が承認される可能性や、金融緩和期待が投資家に改めて買いのエネルギーを注ぎ込んだからだ。
ビットコインの売買高も上向き、CCデータによると、各交換所における11月の現物とデリバティブの合計売買高は3兆6100億ドルと、1月時点の約2兆9000億ドルから増加した。
一方、法定通貨などと連動するように設計されたステーブルコインの売買も増え、取引規模が最も大きいテザーの時価総額は過去最高の900億ドル強に達している。
<相次ぐ大物の失墜>
昨年は交換所大手FTXトレーディングが破綻し、創業者サム・バンクマンフリード被告が逮捕されたが、今年はさらに仮想通貨業界の大物の権威が相次いで失墜した。
交換所大手バイナンスの趙長鵬最高経営責任者(CEO)は、米国のマネーロンダリング(資金洗浄)規制に違反したことを認め、当局に多額の罰金を支払うことに同意。仮想通貨レンディングサービスのセルシウスのアレックス・マシンスキー元CEOも証券詐欺の疑いで7月に逮捕されている。
業界の明るい話題としては、リップル・ラボ社による交換所を通じた仮想通貨XRPの販売は証券法違反に該当せず、合法だと米裁判所が判決を下し、XRPの価格が年初来で82%上昇したことが挙げられる。
<来年の展望>
第4・四半期におけるビットコインの上昇率55%のほとんどは、米国で現物ビットコインのETFが承認され、適切な規制監督を受けている証券取引所経由でビットコインに投資する道が開かれれば、個人投資家と機関投資家の双方から多額の資金が流入するとの期待に由来している。
米証券取引委員会(SEC)に現物ビットコインのETF認可を申請しているのは、ブラックロックやフィデリティなど13社だ。
これらのファンドには取引開始からの数日で最大30億ドルが流れ込み、その後さらに多くの資金が流入すると見込まれる。
もっとも、だれもが強気というわけではない。
JPモルガンは、来年序盤に現物ビットコインETFが承認されるとの想定で、仮想通貨市場の回復は続くとみているが、市場で織り込まれているほどに取引が普及するかには懐疑的な姿勢だ。
今の期待値では、仮想通貨市場の時価総額1兆7000億ドルの10%相当がビットコインETFに流入するとされるが、JPモルガンの見立てでは数%ないし5%前後にとどまる。
流入額がこうした期待に届かなければ、市場の地合いが悪化に転じてもおかしくない。
ただ何人かの専門家は、足元のビットコイン価格の戻りはまだ始まったばかりと受け止めている。
分析プラットフォームのグラスノードによると、ビットコイン投資家が確定したドル建ての利益は差し引きで1日当たり3億2400万ドルに達しているものの、これは21年の強気相場の成熟段階に記録された1日当たり30億ドル強というピーク水準よりずっと低い。
グラスノードは、この状況からは今が強気相場の終盤というよりも、序盤に過ぎないことが読み取れると指摘した。