Noriyuki Hirata
[東京 19日 ロイター] - 日経平均算出の定期見直しの基準日を1月末に控え、ファーストリテイリング株式を巡る需給動向が意識されている。同社株の日経平均に占めるウエート(構成比率)がキャップ(上限)の11%に接近し、潜在的な売りのリスクが警戒されているためだ。
前回基準日の昨年7月末には、キャップに接近しながらも超えることはなかった。直前には大株主による保有株の一部売却がみられた経緯があり、今回も同様の動きがあるかにも関心が寄せられている。
ファーストリテのウエートは、年始から徐々に上昇してきている。大発会の4日には10.45%だったが、16日には10.98%と11%目前となった。足元でも10.9%付近で高止まりしている。
基準日にキャップを上回った場合、日経平均算出時に用いられる株価換算係数にキャップ調整比率0.9が設定され、指数に対するウエートが4月から低下する。
この場合、3月末には日経平均をベンチマークとするパッシブ連動資金でリバランスの売りが見込まれる。フィリップ証券の増沢丈彦・株式部トレーディング・ヘッドの試算によると、リバランスによる潜在的な売り圧力は約3000億円となる。
<出遅れ投資家の買い>
株価の変動がほかの銘柄に比べて相対的に大きい場合、ウエートの変化は大きくなる。指数の上昇が始まった5日から18日までの日経平均の上昇率は6.5%。これに対し、ファーストリテ株は12.2%上昇した。
年明け後、ファーストリテ株が上昇したのは、好決算を発表して物色が強まったとの事情もあるが、投資家が運用成績の向上を狙って活発に買いを入れたことも影響していそうだ。
同期間のパフォーマンスをみると、大型株を指数化したTOPIXコア30は7.1%高で、コア30に次ぐラージ70(4.5%高)やミッド400(2.6%高)、スモール(1.2%高)に比べ、上昇が際立つ。上昇相場に乗り遅れたアクティブ投資家が、指数の上昇に取り残されないよう、指数への寄与度の大きい大型株への物色を強めたためとみられている。
ファーストリテ株はラージの構成銘柄だが、日経平均への寄与度が高いことから、手掛ければ「効率よく日経平均にキャッチアップできる」(国内証券のアナリスト)という。
<「大株主の売り」にも関心>
1月末にかけ、ファーストリテの株主はウエートの変動と11%のキャップを見比べながら、一喜一憂することになりそうだ。リバランスによる将来の売り圧力だけでなく、目先の需給悪化への警戒感もある。
前回の判定があった昨年7月末にかけては、基準日の前の数日間に、大株主の柳井正会長兼社長が保有株を一部売却していたことが明らかになっている。売却の理由やウエート判定との関連は不明だが、結果としてウエートは抑え込まれ、キャップの超過は回避された。
当時の柳井氏の売却額は単純計算で600億円程度とみられ、ファーストリテの株主は、柳井氏の売りによる株価下押し圧力を受けた。一方、キャップを上回っていた場合のリバランスの売りは3000億円規模と試算されていた。このため、柳井氏の売りによる下押しはあっても、将来のより大きな下押しのリスクは免れた形となった。
市場では「偶然タイミングが重なっただけかもしれないが、思惑につながってもおかしくない」(国内証券のアナリスト)との見方が聞かれる。 仮にファーストリテのウエートが基準日にキャップを上回る場合、「売られる分の資金は構成銘柄で薄く広く買われるようなリバランスになる」(しんきんアセットマネジメント投信の藤原直樹シニアファンド・マネージャー)。基準日まで約2週間となる中、物色面の思惑にもつながりそうだ。
(平田紀之 編集:橋本浩)
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