Hannah Lang
[16日 ロイター] - 代表的な暗号資産(仮想通貨)のビットコインは今年、大幅な値上がり局面に入ったのか─。
これはビットコインのマイニング(採掘)に対する報酬が半分になる「半減期」を間もなく迎える中で、仮想通貨トレーダーの頭に浮かんでいる重大な疑問だ。
過去にあった半減期は2012年、16年、20年の3回で、いずれもその後にビットコイン価格は高騰。20年5月の半減期以降の1年間の上昇率は545%超を記録した。
コインゲッコーによると、次の半減期は20日に到来する予定。ただ今回、ビットコインの新たな大幅上昇につながるかどうか、市場では見方が分かれている。
理論的に考えると、半減期でマイニングの報酬が減れば採掘意欲が薄れてビットコインの供給が縮小する。これがビットコインの希少価値を一層高めてくれるというのが強気派の主張だ。
ビットフィネックスのアナリストチームは8日付リポートで、ビットコイン価格は今年の半減期から12―14カ月で約160%跳ね上がり、15万ドルを超えて過去最高値に達すると予想した。
リポートは「現在のサイクルは過去の全てのサイクルとの違いが際立っている。半減期の前から価格が既に最高値を付けているからだ。この特異性は強気の指標と解釈できる」と述べた。ただ市場の動きに一定の不確実性ももたらすともくぎを刺した。
仮想通貨交換所を運営するLMAXグループのデービッド・マーサー最高経営責任者(CEO)は懐疑派の一人で、市場の成熟化という視点から、今回は12年や16年、20年のような半減期後の強気相場が到来するとは思わないと話す。
何人かのアナリストは、半減期の影響は最近のビットコイン急伸でとっくに織り込まれた可能性があるとみている。ビットコイン価格は3月に過去最高値の7万3803.25ドルを付け、年初来の上昇率は60%超。背景には、米国でビットコイン現物上場投資信託(ETF)の販売が始まったことを歓迎するムードや、新たな機関投資家の資金が市場に流入するとの期待がある。
クラーケンの戦略責任者トーマス・パーフュモ氏は、以前ならば半減期後の新規資金流入で目にされていた価格水準が、ビットコイン現物ETFなどの影響で半減期前から実現してしまっているとの見方を示した。
<少ない事例>
過去の半減期がまだ3回だけという面で、前例として手掛かりにするのは難しいとの声も出ている。例えば20年のビットコイン高騰は、金融緩和やコロナ禍に伴って巣ごもり生活となった個人投資家の活発な仮想通貨購入といった半減期とは別の外部要因が働いていた。
カイコの調査チームはノートに「3回(の半減期)というサンプル数は結論を得る上で必ずしも十分多いとは言えない。他の強気イベントが値上がりに寄与したことに留意するのも大事だ」と記した。
それでも今回も半減期の後、ETF以外にビットコイン価格の追い風になりそうな要素があるとみられている。米連邦準備理事会(FRB)は年内に利下げするとの予想が大勢で、これは仮想通貨を含むリスク資産の価格を押し上げてもおかしくない。
仮想通貨プライムブローカー、ファルコンXの市場責任者ラビ・ドシ氏は、最終的にETF経由で新規資金が流れ込み、続いてFRBが年内の緩和開始を計画しており、物価の落ち着きが続くと仮定すれば、この組み合わせは仮想通貨の相当な値上がりをもたらす、と主張した。