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アートネイチャ Research Memo(8):新規売上の回復に向けて販促などを見直す

発行済 2024-06-17 13:48
更新済 2024-06-17 14:00
© Reuters.
*13:48JST アートネイチャ Research Memo(8):新規売上の回復に向けて販促などを見直す ■アートネイチャー (TYO:7823)の業績動向

2. 新規売上苦戦の要因と対策
2024年3月期業績の特徴は、アフターサービスとジュリア・オージェは好調、増毛商品のリピートは引き続き堅調だったものの、新型コロナウイルス感染症が5類に移行したことで期待していた新規売上が男女とも苦戦したことである。
苦戦の主な要因は、アフターコロナにおける個人消費がモノより旅行や外食などサービスに集中したためウィッグ購入の優先順位が下がったこと、反響営業がやや変質してきたことにある。
反響営業はこれまでTVCMや新聞広告、イベントを通じて主に電話で反響を得ていたが、インターネットの時代になってメインターゲットの中高齢層でWebでの問い合わせが増えていることに対して工夫が不足していたことや、女性に向けてふらっと来店した際の店頭での新規問い合わせへの対応が不十分だったことなどに課題があったようだ。


また、男女別で要因が異なる部分があり、男性の場合、ウィッグや増毛に対してまだ規模は小さいものの、発毛や育毛を謳う企業の広告が目につくようになり、毛髪の課題解決への入口で選択肢が増えたことも要因として挙げられる。
潜在需要の掘り起こしといった側面もあるが、一方で競合として意識する必要が出てきた可能性がある。
女性の場合は、発売して2年が経過したレディースオーダーメイドウィッグ「フィーリン」の反響が落ち着いてきたことも要因として考えられる。
なお、低価格業態の企業が増えていることも脅威となりそうだが、アフターコロナでは高価格業態の企業以上に苦戦しており、一方、同社の低価格業態の企業は増収トレンドが続いているため、さほどの脅威はないと言えよう。


業界全体も新規顧客の獲得に苦戦しているようだが、同社はこうした課題に対しすでに対策を講じている。
販促については、WebやSNS、出店施設との連携を重視した手法へと見直した。
男性向けウィッグでは、従業員を使ったインパクトのあるテレビCMを投入した。
女性向けでは、リピートが好調のため現状の販促方法を基本的に変えず、新たに1つのウィッグで様々なスタイルを楽しめる新ブランド「スタイリア」を2024年3月に発売した。
来店への対応では、リピート専門だった店頭のスタイリストと、反響営業のカウンセラーや理美容の従業員を連携することで、新規顧客に対する対応力を強化している。


現状は、インターネットを使った販促は資料請求など一方通行になりがちのため、双方向となるようにLineなどのSNSを使い、情報発信のタイミングや文面を試行錯誤しているところである。
男性向けのテレビCMは検証中だが、ヘアケアの入口における問題のため、さらなるインパクトが必要になると思われる。
女性向けは、「スタイリア」は発売したばかりなので、大ヒットした「フィーリン」ほどの手応えはまだない。
これらは始めたばかりとはいえ一定の時間を要する対策であるため、まだ言えるほどの成果にはなっていないようだが、トータルの問い合わせ数は変わらないものの、新たな反響経路による新規問い合わせ数は着実に増えている。



新たな販促手法などを背景に増収増益予想
3. 2025年3月期の業績見通し
同社は2025年3月期の連結業績見通しに関して、売上高45,001百万円(前期比5.0%増)、営業利益2,911百万円(同9.7%増)、経常利益2,949百万円(同8.3%増)、親会社株主に帰属する当期純利益1,509百万円(同3.2%増)を見込んでいる。
消費の変化や隣接業界を含めた新規参入企業、同業他社との競合激化などにより、同社を取り巻く事業環境は引き続き厳しい状況といえる。
こうした環境下、同社は2024年3月期にスタートした中期経営計画「アートネイチャーAdvanceプラン」を着実に実行することで、毛髪業界におけるトップブランドの位置付けを確固たるものにするとともに、「美と健康」に関わる新たな領域での事業を拡充し、「次代を切り拓くアートネイチャー」を次のステージに飛躍させる考えである。


男性については、SNSなどでの情報発信やWeb問い合わせに対する体制強化などで反響を増やし、オーダーメイドウィッグ、増毛商品ともに新規売上の増加につなげる方針である。
特に育毛や発毛との差別化では、従来女性中心に展開してきたイベントを開催するほか、商品を訴求しやすいホームページへのリニューアルも検討している。
新商品については、2024年3月に、毛髪の根元部分の色を地肌にとけこませる「ネイティブフロント加工」など先端技術を使って一人ひとりにあった増毛を実現した増毛システム「ヘアユニオン」をリリースした。
女性については、男性同様にSNSやWeb対応を強化する一方、店頭のスタイリストとカウンセラーやジュリア・オージェなど全体を連携することで、新規とリピート両方の売上を確保するとともに、より高級なオーダーメイドへの送客の流れを強化する方針である。
また、ジュリア・オージェは未出店地域での出店も積極化する。
新商品については、前述したよりスタイリシュなヘアスタイルができる新ブランド「スタイリア」の訴求を強めたいところだが、「フィーリン」が好調を継続しているため、ブランドか集客か、繁忙の秋需へ向けて販促手法を詰めているところである。
低価格業態の「NAO-ART」については販売拡大を狙って新たな施策を講じる可能性もある。


これらにより男女ともに増収を見込むが、利益面では売上高を上回る伸びを計画している。
2023年3月に続き2024年6月に実施する価格改定や原材料の入れ替えは期待できるが、円安や物価高、スタイリストの処遇改善を織り込んで売上総利益率は低下を見ている。
一方販管費については、人員補充や待遇改善に加え様々な販促を予定するなど増加要因はあるものの、全体で売上高の伸び以下に抑制する方針で、販管費率は改善を見ている。
この結果、売上総利益率の低下を販管費の低下でカバーして、営業利益は売上高の伸びを上回る計画となった。
親会社株主に帰属する当期純利益については、特別損失がなくなるが法人税等調整額も平準化するため、伸びが相対的に低くなる見込みである。
なお、足元では4月が減収となったが、計画どおりの進捗のようだ。
コロナ禍で発生していた納期遅延が解消したことで、2024年3月期末から2025年3月期第1四半期に期ズレしていた売上が正常化する(なくなる)ため、5~6月を含めて第1四半期の売上は弱く見えるだけで、懸念はないと弊社では考える。


(執筆:フィスコ客員アナリスト 宮田仁光)

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