*14:01JST 品川リフラ Research Memo(1):2024年3月期の売上高、各利益は2期連続で過去最高更新
■要約
品川リフラクトリーズ (TYO:5351)は、世界で五指に入る工業用耐火物メーカーであり、同社を含む国内8社、海外16社を擁してグループ経営を推進している。
海外売上高比率は2024年3月期に約3割に達し、2020年3月期の1.8倍に成長している。
2025年3月期は、事業成長と社会課題解決を表裏一体として追求することを基本方針とした長期ビジョンを策定し、グローバル展開を加速し、ROIC経営と積極的な成長投資を進める第6次中期経営計画(2024〜2026年度)をスタートしている。
1. 2024年3月期の業績概要
2024年3月期の連結業績は、原料費の高止まりやエネルギーコストの高騰を踏まえた販売価格の改定、販売構成の改善によるスプレッドの向上、海外事業の業績寄与などにより2期連続で過去最高業績を記録した。
売上高は前期比15.4%増の144,175百万円、経常利益は同30.1%増の14,903百万円となった。
親会社株主に帰属する当期純利益は同83.9%増の15,280百万円となったが、これは、遊休資産(名古屋市港区他の土地)の売却益(6,564百万円)、投資有価証券売却益(2,102百万円)を特別利益に計上したことによる。
その売却代金は、2022年に実施したイソライト工業(株)の完全子会社化とブラジルにおける耐火物事業及び米国における耐摩耗性セラミックス事業の買収に要した資金、並びに2023年11月より2024年3月までに実施した自己株式の取得資金(2,249百万円)に充当している。
2. 「ビジョン2030」と第6次中期経営計画
2024年5月に公表した長期ビジョン「ビジョン2030」において、事業成長における財務目標と社会課題解決におけるサステナビリティ目標を設定した。
2025年3月期から7ヶ年累計で1,280億円の積極的な設備投資・事業投資を実施していくことで、2031年3月期に売上高2,400億円、海外売上高比率50%などを達成する。
資金は、事業成長により7ヶ年累計で1,500億円のキャッシュ・フローを創出するほか、440億円を外部調達するが、有利子負債/EBITDA倍率は1.9倍と健全性は維持する計画である。
この資金は、株主還元や業容拡大に伴う増加運転資金にも充当する。
また、2023年3月期のCO2排出量50%削減、グリーン原料※使用比率の20%への引き上げ、人的資本戦略をサステナビリティ目標として掲げる。
同社は2025年に創業150年を迎えるが、その先の未来に向けた第一歩としての第6次中期経営計画(2024〜2026年度)は、「ビジョン2030」からバックキャスティングの手法により策定している。
2027年3月期の売上高1,800億円、ROS(営業利益ベース)11%、ROIC10%、海外売上高比率45%を目標とする。
ROICを重要な評価指標としたグループ経営により、経営資源の配分見直し、資本コストを重視した3ヶ年累計410億円の積極的な設備投資・事業投資を進める。
セクター戦略の深化、生産基盤の整備、グローバル展開の加速、サステナビリティ経営の推進を図る。
ただし、2025年3月期は、JFEスチール(株)京浜地区の高炉、転炉休止や大型工事案件の減少の影響が大きく、売上高は143,000百万円と前期比0.8%減を見込む。
海外向けを中心とした高収益品の拡販やさらなるコストダウンなどにより経常利益は同0.6%増の15,000百万円を計画する。
2027年3月期の目標に向け成長の種を仕込む重要な期となろう。
※グリーン原料:使用後耐火物リサイクル原料、社内発生リサイクル原料、他産業の副産物等の合計
3. 株主還元策 - 第6次中期経営計画では配当性向を40%へ引き上げ、持続的な株主還元の充実を図る
2023年10月1日に普通株式1株につき5株の割合で株式分割を行った。
2024年3月期の株式分割修正後の1株当たり年間配当金は前期比28.0円増配の68.0円とした。
第5次中期経営計画から基準とする配当性向を20%から30%へ引き上げたことと増益傾向により、3期前の水準と比べると1株当たり配当金は3倍強となる。
増配は、特別利益の計上を反映した一時的なものではなく、特別損失が発生した期は配当性向の上昇を許容し、安定的な配当を行った。
配当性向は表面的には20.7%と基準の30%を下回るが、遊休資産の売却益など特別損益の影響額を除くと実質的には30%程度となる。
さらに、株式市場の高騰を利用して政策株の売却を進め、得られた資金を活用して自己株式を取得した。
第6次中期経営計画からは目標とする配当性向を40%に引き上げるとともに、利益還元額の総額を基本的に維持すべく自己株式取得も機動的に行い、株主還元の充実を図る。
2025年3月期の1株当たり年間配当金は前期比22.0円増配の90.0円(中間45.0円、期末45.0円)、配当性向は41.0%としている。
■Key Points
・2024年3月期は売上高、各段階利益とも2年連続過去最高を更新
・2025年3月期以降の中期経営計画ではROIC経営により積極的な成長投資を進める
・配当性向を40%に引き上げ、自己株式取得と併せた持続的な利益還元の充実を目指す
(執筆:フィスコ客員アナリスト 松本章弘)
品川リフラクトリーズ (TYO:5351)は、世界で五指に入る工業用耐火物メーカーであり、同社を含む国内8社、海外16社を擁してグループ経営を推進している。
海外売上高比率は2024年3月期に約3割に達し、2020年3月期の1.8倍に成長している。
2025年3月期は、事業成長と社会課題解決を表裏一体として追求することを基本方針とした長期ビジョンを策定し、グローバル展開を加速し、ROIC経営と積極的な成長投資を進める第6次中期経営計画(2024〜2026年度)をスタートしている。
1. 2024年3月期の業績概要
2024年3月期の連結業績は、原料費の高止まりやエネルギーコストの高騰を踏まえた販売価格の改定、販売構成の改善によるスプレッドの向上、海外事業の業績寄与などにより2期連続で過去最高業績を記録した。
売上高は前期比15.4%増の144,175百万円、経常利益は同30.1%増の14,903百万円となった。
親会社株主に帰属する当期純利益は同83.9%増の15,280百万円となったが、これは、遊休資産(名古屋市港区他の土地)の売却益(6,564百万円)、投資有価証券売却益(2,102百万円)を特別利益に計上したことによる。
その売却代金は、2022年に実施したイソライト工業(株)の完全子会社化とブラジルにおける耐火物事業及び米国における耐摩耗性セラミックス事業の買収に要した資金、並びに2023年11月より2024年3月までに実施した自己株式の取得資金(2,249百万円)に充当している。
2. 「ビジョン2030」と第6次中期経営計画
2024年5月に公表した長期ビジョン「ビジョン2030」において、事業成長における財務目標と社会課題解決におけるサステナビリティ目標を設定した。
2025年3月期から7ヶ年累計で1,280億円の積極的な設備投資・事業投資を実施していくことで、2031年3月期に売上高2,400億円、海外売上高比率50%などを達成する。
資金は、事業成長により7ヶ年累計で1,500億円のキャッシュ・フローを創出するほか、440億円を外部調達するが、有利子負債/EBITDA倍率は1.9倍と健全性は維持する計画である。
この資金は、株主還元や業容拡大に伴う増加運転資金にも充当する。
また、2023年3月期のCO2排出量50%削減、グリーン原料※使用比率の20%への引き上げ、人的資本戦略をサステナビリティ目標として掲げる。
同社は2025年に創業150年を迎えるが、その先の未来に向けた第一歩としての第6次中期経営計画(2024〜2026年度)は、「ビジョン2030」からバックキャスティングの手法により策定している。
2027年3月期の売上高1,800億円、ROS(営業利益ベース)11%、ROIC10%、海外売上高比率45%を目標とする。
ROICを重要な評価指標としたグループ経営により、経営資源の配分見直し、資本コストを重視した3ヶ年累計410億円の積極的な設備投資・事業投資を進める。
セクター戦略の深化、生産基盤の整備、グローバル展開の加速、サステナビリティ経営の推進を図る。
ただし、2025年3月期は、JFEスチール(株)京浜地区の高炉、転炉休止や大型工事案件の減少の影響が大きく、売上高は143,000百万円と前期比0.8%減を見込む。
海外向けを中心とした高収益品の拡販やさらなるコストダウンなどにより経常利益は同0.6%増の15,000百万円を計画する。
2027年3月期の目標に向け成長の種を仕込む重要な期となろう。
※グリーン原料:使用後耐火物リサイクル原料、社内発生リサイクル原料、他産業の副産物等の合計
3. 株主還元策 - 第6次中期経営計画では配当性向を40%へ引き上げ、持続的な株主還元の充実を図る
2023年10月1日に普通株式1株につき5株の割合で株式分割を行った。
2024年3月期の株式分割修正後の1株当たり年間配当金は前期比28.0円増配の68.0円とした。
第5次中期経営計画から基準とする配当性向を20%から30%へ引き上げたことと増益傾向により、3期前の水準と比べると1株当たり配当金は3倍強となる。
増配は、特別利益の計上を反映した一時的なものではなく、特別損失が発生した期は配当性向の上昇を許容し、安定的な配当を行った。
配当性向は表面的には20.7%と基準の30%を下回るが、遊休資産の売却益など特別損益の影響額を除くと実質的には30%程度となる。
さらに、株式市場の高騰を利用して政策株の売却を進め、得られた資金を活用して自己株式を取得した。
第6次中期経営計画からは目標とする配当性向を40%に引き上げるとともに、利益還元額の総額を基本的に維持すべく自己株式取得も機動的に行い、株主還元の充実を図る。
2025年3月期の1株当たり年間配当金は前期比22.0円増配の90.0円(中間45.0円、期末45.0円)、配当性向は41.0%としている。
■Key Points
・2024年3月期は売上高、各段階利益とも2年連続過去最高を更新
・2025年3月期以降の中期経営計画ではROIC経営により積極的な成長投資を進める
・配当性向を40%に引き上げ、自己株式取得と併せた持続的な利益還元の充実を目指す
(執筆:フィスコ客員アナリスト 松本章弘)