*16:32JST 上海協力機構首脳会議から中露関係と地域安全保障の現状を読み解く(2)【中国問題グローバル研究所】
◇以下、中国問題グローバル研究所のホームページ(※1)でも配信している「(1)【中国問題グローバル研究所】」の続きとなる。
中央アジア諸国の戦略的選択と課題
中央アジア諸国は、対中関係と対ロ関係のバランスを取りながら経済発展と安全保障協力を追求しており、SCOの地域ダイナミクスで極めて重要な役割を果たしている。
主要エネルギー生産国で輸送ハブでもあるカザフスタンは、一帯一路構想の下で中国が行うインフラ・産業プロジェクトへの投資の恩恵を受けてきた。
また同時に、集団安全保障条約機構(CSTO)を通じた防衛・安全保障協力を中心に、ロシアと緊密なつながりを維持している。
キルギスとタジキスタンは、新疆(中国)のトルコ語・ペルシャ語系住民との民族・文化的つながりが強く、インフラプロジェクトや貿易協定を通じて中国の経済圏にますます取り込まれつつある。
この2カ国は、中国西部の省が一帯一路構想の陸路を通じて欧州市場とつながることでチャンスが生まれるとみている。
一方、ウズベキスタンはバランスの取れた外交政策を展開しており、SCOの枠組みの中で地域の安全保障協力を強化しながら、自国の戦略的立場を生かして中国とロシア双方から投資を誘致してきた。
これら諸国は、主要国との関係のかじ取りで戦略的課題に直面しており、経済的利益と国家主権のバランスを取りながら、債務の持続可能性や大規模プロジェクトによる環境問題に対処し、国民の公平な利益を確保しなければならない。
加えて、国境紛争や、国家以外のアクターによる安全保障上の脅威、戦略的選択に影響を及ぼす外部からの干渉など、地政学的圧力に対応する必要もある。
上海協力機構の拡大と課題
SCOの拡大は、そのグローバルな影響力を高めると同時に、内部の調整と結束の面で課題ももたらした。
加盟国数の増加に伴い、加盟国の経済・政治・安全保障面の利益が多様化し、地域協力の推進に困難が生じている。
加えて、組織の運営が外部からの干渉や圧力を受け、不透明感を生んでいる。
中央アジアでは中国の経済発展を受けて、これまでのようにロシアではなく、中国への依存を高める国が多い。
さらにインドやイラン、トルコなど中央アジア以外の国がSCOに参加し、中国の経済成長の恩恵を受けるようになってきた。
地理的には遠いベラルーシですら、ウクライナ問題でロシアと立場を同じくしていることなどから、SCOに加わった。
こうした加盟国の拡大に伴い、SCOは地域安全保障協力枠組みから、幅広い国際協力のプラットフォームへと姿を変え、グローバルな影響力を強める反面、内部の調整と統一性の面で課題を深刻化させている。
SCOが拡大するにつれ、課題は複雑さを増している。
まず、加盟国間の国益の相違が大きなハードルとなる。
反テロと経済協力推進では利害が一致するものの、特定の政策や戦略的選択では隔たりが大きい。
例えば、インドとパキスタンの加盟は南アジアにおけるSCOの地政学的な存在感を強化しただけでなく、SCOに新たな経済的活力を注入し、その戦略的重要性も強めた。
その一方で、新規加盟国を迎えたことで、加盟国間の多様性と統一性のバランス、地政学的な相違点や安全保障上の課題への対処などの課題が浮上した。
次に、組織の拡大は内部の意思決定プロセスを複雑にする。
加盟国が増えるに従い合意に達することがより難しくなり、国際社会でのSCOの実効性が低下しかねない。
加えて、外部勢力の干渉がSCOをさらに圧迫している。
SCO拡大に対する米国や欧州連合(EU)など西側諸国からの懸念が運営を混乱させ、不透明感を高め、課題をさらに生むかもしれない。
こうした要因が相まって、地域安全保障と経済協力、政治的調整におけるSCOの能力と実効性に影響を与えている。
SCOの拡大は、国際社会におけるその重要性を知らしめているが、実効性の確保と加盟国全体の利益の実現には内外の課題の克服が不可欠となる。
まとめ:SCOの枠組みの中での中露協力の見通し
SCOの首脳会議では、戦略的協力、経済統合、多国間外交への中国とロシアのコミットメントを再確認した。
習近平氏とウラジーミル・プーチン氏の対話は、相互尊重と主権、内政不干渉を原則とする多極的な世界秩序の形成というビジョンの共有を示した。
SCOが加盟国を増やし、影響力を拡大させるにつれ、ユーラシア地域のダイナミクスを構築し持続可能な発展を促進する上でその重要性は今後も増すだろう。
SCOの枠組みに不可欠な存在である中央アジア諸国は、中国やロシアなど地域のアクターとの関係のかじ取りで難しい課題に直面している。
その戦略的決定はSCOの将来の道筋を大きく左右し、ユーラシア地域の安全保障や経済協力、文化交流に影響を及ぼすだろう。
地政学的環境が変化する中で、安定をもたらす力をSCOが発揮するには、SCO内部のダイナミクスと外部圧力に効果的に対処することが不可欠となる。
これら諸国は、中国とロシア両国が影響力を及ぼす中で、巧みな外交・経済戦略によって主権と地域の安定のバランスを取るべく努めなければならない。
戦略的課題としては、主要国の影響への対応や、多国間外交で自らの立場を主張し地域内外で戦略的独立を維持することなどが挙げられる。
SCOは、加盟国・オブザーバー国・対話パートナー国間での経済統合の深化や安全保障協力の強化、文化交流の推進を目指している。
デジタル接続性や持続可能な発展、包摂的成長に焦点を当てたイニシアチブは、新たな地政学的不確実性の発生に備えて、地域のレジリエンスを高めるためのものである。
中央アジア諸国は主要国との関係のかじ取りをしながら、債務の持続可能性を確保し、社会経済格差に対処するという大きな戦略的ハードルに直面している。
SCOが地域の安全保障上の脅威に対処できるか否か。
その鍵は、足並みを揃えた行動と合意に基づく意思決定、地政学的情勢の変化に対応できる頑健な制度的枠組みの実現が握っている。
写真: 上海協力機構首脳会議 カザフスタンで開催
(※1)https://grici.or.jp/
中央アジア諸国の戦略的選択と課題
中央アジア諸国は、対中関係と対ロ関係のバランスを取りながら経済発展と安全保障協力を追求しており、SCOの地域ダイナミクスで極めて重要な役割を果たしている。
主要エネルギー生産国で輸送ハブでもあるカザフスタンは、一帯一路構想の下で中国が行うインフラ・産業プロジェクトへの投資の恩恵を受けてきた。
また同時に、集団安全保障条約機構(CSTO)を通じた防衛・安全保障協力を中心に、ロシアと緊密なつながりを維持している。
キルギスとタジキスタンは、新疆(中国)のトルコ語・ペルシャ語系住民との民族・文化的つながりが強く、インフラプロジェクトや貿易協定を通じて中国の経済圏にますます取り込まれつつある。
この2カ国は、中国西部の省が一帯一路構想の陸路を通じて欧州市場とつながることでチャンスが生まれるとみている。
一方、ウズベキスタンはバランスの取れた外交政策を展開しており、SCOの枠組みの中で地域の安全保障協力を強化しながら、自国の戦略的立場を生かして中国とロシア双方から投資を誘致してきた。
これら諸国は、主要国との関係のかじ取りで戦略的課題に直面しており、経済的利益と国家主権のバランスを取りながら、債務の持続可能性や大規模プロジェクトによる環境問題に対処し、国民の公平な利益を確保しなければならない。
加えて、国境紛争や、国家以外のアクターによる安全保障上の脅威、戦略的選択に影響を及ぼす外部からの干渉など、地政学的圧力に対応する必要もある。
上海協力機構の拡大と課題
SCOの拡大は、そのグローバルな影響力を高めると同時に、内部の調整と結束の面で課題ももたらした。
加盟国数の増加に伴い、加盟国の経済・政治・安全保障面の利益が多様化し、地域協力の推進に困難が生じている。
加えて、組織の運営が外部からの干渉や圧力を受け、不透明感を生んでいる。
中央アジアでは中国の経済発展を受けて、これまでのようにロシアではなく、中国への依存を高める国が多い。
さらにインドやイラン、トルコなど中央アジア以外の国がSCOに参加し、中国の経済成長の恩恵を受けるようになってきた。
地理的には遠いベラルーシですら、ウクライナ問題でロシアと立場を同じくしていることなどから、SCOに加わった。
こうした加盟国の拡大に伴い、SCOは地域安全保障協力枠組みから、幅広い国際協力のプラットフォームへと姿を変え、グローバルな影響力を強める反面、内部の調整と統一性の面で課題を深刻化させている。
SCOが拡大するにつれ、課題は複雑さを増している。
まず、加盟国間の国益の相違が大きなハードルとなる。
反テロと経済協力推進では利害が一致するものの、特定の政策や戦略的選択では隔たりが大きい。
例えば、インドとパキスタンの加盟は南アジアにおけるSCOの地政学的な存在感を強化しただけでなく、SCOに新たな経済的活力を注入し、その戦略的重要性も強めた。
その一方で、新規加盟国を迎えたことで、加盟国間の多様性と統一性のバランス、地政学的な相違点や安全保障上の課題への対処などの課題が浮上した。
次に、組織の拡大は内部の意思決定プロセスを複雑にする。
加盟国が増えるに従い合意に達することがより難しくなり、国際社会でのSCOの実効性が低下しかねない。
加えて、外部勢力の干渉がSCOをさらに圧迫している。
SCO拡大に対する米国や欧州連合(EU)など西側諸国からの懸念が運営を混乱させ、不透明感を高め、課題をさらに生むかもしれない。
こうした要因が相まって、地域安全保障と経済協力、政治的調整におけるSCOの能力と実効性に影響を与えている。
SCOの拡大は、国際社会におけるその重要性を知らしめているが、実効性の確保と加盟国全体の利益の実現には内外の課題の克服が不可欠となる。
まとめ:SCOの枠組みの中での中露協力の見通し
SCOの首脳会議では、戦略的協力、経済統合、多国間外交への中国とロシアのコミットメントを再確認した。
習近平氏とウラジーミル・プーチン氏の対話は、相互尊重と主権、内政不干渉を原則とする多極的な世界秩序の形成というビジョンの共有を示した。
SCOが加盟国を増やし、影響力を拡大させるにつれ、ユーラシア地域のダイナミクスを構築し持続可能な発展を促進する上でその重要性は今後も増すだろう。
SCOの枠組みに不可欠な存在である中央アジア諸国は、中国やロシアなど地域のアクターとの関係のかじ取りで難しい課題に直面している。
その戦略的決定はSCOの将来の道筋を大きく左右し、ユーラシア地域の安全保障や経済協力、文化交流に影響を及ぼすだろう。
地政学的環境が変化する中で、安定をもたらす力をSCOが発揮するには、SCO内部のダイナミクスと外部圧力に効果的に対処することが不可欠となる。
これら諸国は、中国とロシア両国が影響力を及ぼす中で、巧みな外交・経済戦略によって主権と地域の安定のバランスを取るべく努めなければならない。
戦略的課題としては、主要国の影響への対応や、多国間外交で自らの立場を主張し地域内外で戦略的独立を維持することなどが挙げられる。
SCOは、加盟国・オブザーバー国・対話パートナー国間での経済統合の深化や安全保障協力の強化、文化交流の推進を目指している。
デジタル接続性や持続可能な発展、包摂的成長に焦点を当てたイニシアチブは、新たな地政学的不確実性の発生に備えて、地域のレジリエンスを高めるためのものである。
中央アジア諸国は主要国との関係のかじ取りをしながら、債務の持続可能性を確保し、社会経済格差に対処するという大きな戦略的ハードルに直面している。
SCOが地域の安全保障上の脅威に対処できるか否か。
その鍵は、足並みを揃えた行動と合意に基づく意思決定、地政学的情勢の変化に対応できる頑健な制度的枠組みの実現が握っている。
写真: 上海協力機構首脳会議 カザフスタンで開催
(※1)https://grici.or.jp/