■今後の成長見通し
(1) 2016年3月期見通し
エイジアの2016年3月期の連結業績は、売上高が前期比9.6%増の1,130百万円、営業利益が同23.2%増の220百万円、経常利益が同21.5%増の220百万円、当期純利益が同28.6%増の140百万円となる見通し
企業の投資マインドが回復するなかで、前期は低迷していた「WEBCAS」シリーズの大型案件の引き合いが回復してきたのが背景で、アプリケーション事業の売上高が前期比15.7%増の990百万円と拡大し、業績をけん引するこのうち、クラウドサービスはマーケティング戦略の見直しを行うこともあって前期比13.2%増の554百万円に、ライセンス販売は同19.9%増の361百万円といずれも2ケタ増収を見込んでいる既に数件の大型案件の受注も決まっており、計画達成に向けて滑り出しは順調なようだ
一方、サービスソリューション事業の売上高は前期比20%減の140百万円と保守的に見積もっているソフトの受託開発を行っていたエンジニアをアプリケーション事業の新製品開発要員として投入するため、同売上を予算計上していないことに加えて、FUCAの顧客のうち、大型案件の契約が9月に一旦終了となるためだただ、同案件に関して継続受注すれば、売上高としては20百万円程度の上積み要因となる可能性がある
(2)アプリケーション事業の取り組み
主力のアプリケーション事業の今期の施策としては、クラウドサービスのマーケティング戦略の見直しと新製品の投入が挙げられる
クラウドサービスのマーケティング戦略では、新規顧客の獲得に加えて、既存顧客のアップセル、休眠顧客の掘り起しを強化していく方針だ既存顧客に対しては同社が今まで蓄積してきたメール配信システムによる効果的なマーケティング施策のノウハウを、より積極的に提案していくことで、顧客単価の増加を図っていく具体的には、コンバージョンレートが上がる効果的なキャンペーンメールを打つ提案を行うことで、メールの配信通数を増やしていく、あるいは、顧客企業の会員数を増やす、あるいは退会数を減らすノウハウを提供していくことで、メール配信先リストを増やし、顧客単価の増加を進めていく
クラウドサービスの今期売上としては既存顧客の月額課金収入だけで約500百万円程度となる見込みで、これに新規顧客の開拓、既存顧客のアップセル、休眠顧客の掘り起しで約130百万円の売上増加を見込んでいる
また、今期は「WEBCAS SMS」「WEBCAS CRM」の2つの新製品を5月にリリースしており、売上増への貢献が期待される
○WEBCAS SMS(SMS配信システム)
「WEBCAS SMS」は、携帯電話のショートメール機能を使うサービスで、利用シーンとしてはメールアドレスが変更になった会員への再登録申請の案内や、派遣会社などで派遣社員に重要事項を伝える確実な情報伝達手段としての需要を見込んでいるメールアドレスは変更されることも多いが、携帯電話番号はほとんど変更されないといった特徴を生かしたサービスとなるメールと違ってコストはかかるものの、郵送や電話と比較すると大幅にコストは低減可能となるこのため、マイナンバー制度導入に向けて、派遣会社などが従業員のマイナンバーを取得するためのソリューションサービスとしての需要も見込んでいる
○「WEBCAS CRM」(顧客管理システム)
「WEBCAS CRM」は顧客データベースの作成・運用に加えて、Web登録フォームの作成やメール配信、SMS配信、アンケート作成機能といった同社の主要サービスをワンパッケージにしたサービスとなる従来のCRMシステムでは機能が多すぎて使いこなせない、あるいは費用対効果が低いといった声が多く、こうしたニーズに応えるため、機能をシンプルなものに絞って使い勝手を良くし、かつ低価格なシステム(月額2.5万円~)として、クラウドサービスでの販売を開始した売上目標としては3年後に100百万円以上を目指している
(3)新製品開発について
また、今期は次代の主力製品として期待される「WEBCAS マーケティングオートメーション(仮称)」の開発に注力していく「複雑化したデジタルマーケティングを世界一カンタンに、確実に!」をコンセプトに今期中のリリースを目指している現在は、差別化を図っていくための機能など仕様を固めている段階にあるが、今まで蓄積してきた効果的なメール配信のノウハウをパターン化し、半自動化することで企業のマーケティング担当者の負荷を軽減するサービスが想定される
米調査機関の予測によれば、マーケティングオートメーションの世界市場は、BtoB型企業だけでも2009年の100万ドルから2014年には1,200百万ドルに成長するとみられている今後はBtoC企業においてもマーケティングオートメーションのニーズが拡大していく見通しで、同領域を主力顧客としマーケティングソリューションのノウハウを蓄積する同社にとっても、成長ポテンシャルは大きいと言えよう
同社では「WEBCAS マーケティングオートメーション(仮称)」の成功には、2つの「統合化」がポイントになると考えている1つは「企業が保有するビッグデータの統合化」で、顧客情報を収集・整理するデータマネジメントプラットフォーム(WEBCAS connector、WEBCAS DB creator)と連携し、顧客情報に基づいてパーソナライズされたメール配信により成果を高めていくことであるなお、分析機能については、マーケティングオートメーション開発時に搭載する予定となっている
もう1つは「コミュニケーションチャネルの統合化」で、企業と消費者をつなぐチャネルとして、メールだけではなく、SMS、LINEなどのソーシャルメディア、スマートフォンアプリといった様々なチャネルを駆使して、最適なコミュニケーションを伝達することが重要な要素になってくると考えている
同社ではこの2つの機能を統合した新たなマーケティングプラットフォームをBtoC企業向けに提供していくことで、「“メールアプリケーションソフトのエイジア”から、“eコマース売上UPソリューション(アプリケーションソフトと関連サービスを組み合わせたもの)を世界に提供するエイジア”へ」という経営ビジョンの実現に向け取り組んでいく方針だ
同社の収益構造は前述したように、ストック型ビジネスモデルであるクラウドサービスの売上高比率が60%を超えており、安定的な収益基盤を確立している2015年3月期は人員増強による固定費増加によって一時的に減益となったものの、今後は競争力の高い新製品の開発、投入によって、売上高は持続的に拡大していく見通しであり、更なる高収益企業へ成長していくことが期待される
(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)