カイオム・バイオサイエンス {{|0:}}は、国立研究開発法人理化学研究所(以下、理研)発の創薬基盤技術型バイオベンチャーである。
独自の創薬基盤技術であるADLib®システムを核とした抗体医薬品の研究開発支援や研究開発等を行っている。
ADLib®システムの特徴は、従来の抗体作製技術と比較して「多様性」「迅速性」「困難抗原への対応」に優れていることにあり、従来方式では作製が困難な抗体を中心に研究開発を進めている。
2月12日付で発表された2015年12月期の業績は売上高で280百万円、営業損失で1,269百万円となった。
売上高は、中外製薬 (T:4519)グループを中心とした国内外製薬企業や、アカデミアとのADLib®システムを用いた創薬支援プロジェクトの収入や、オリジナルADLib®システムの技術導出先である、みらかホールディングス (T:4544)グループの富士レビオ(株)からのロイヤルティ収入などが寄与したが、利益面では、完全ヒトADLib®システムの技術導出活動やリード抗体の開発に向けた研究開発負担が重く、損失が続く格好となった。
なお、当期のトピックスとしては、がん幹細胞を標的とした抗体「LIV-1205」に関して、スイスのADC Therapeutics社(以下、ADCT社)とAntibody Drug Conjugate(ADC:抗体薬物複合体※)での全世界における独占的開発・販売権に関するオプションライセンス契約を締結したこと、感染症領域での完全ヒト化抗体の開発実績を持つイーベック社に資本参加したことが挙げられる。
※ADC(抗体薬物複合体)は抗体と薬物を結合させ、抗体の抗原特異性を利用して薬物を疾患部位に効率的に行き届かせることを目的とした抗体薬のこと。
次世代のがん治療法としても注目されている技術である。
今後の成長戦略として、戦略的アライアンスの推進による創薬基盤技術の強化と、医薬品候補となりうる開発パイプラインの拡充に注力していく方針だ。
完全ヒトADLib®システムについては、パイプラインとして取り扱えるPOC確立済みのターゲットでの開発実績を蓄積し、抗体作製機能の検証を進めていくことで、導出につなげていく考えだ。
また、パイプラインとしては旧(株)リブテックが開発したがん疾患を対象とする抗体(LIV-1205※1、LIV-2008※2)や、抗セマフォリン3A抗体の導出活動を継続していくほか、新規パイプラインの拡充も進めていく予定となっている。
※1 LIV-1205:肝臓がんを中心とする固形がんの細胞表面に発現する抗原(標的分子)「DLK-1」に結合し、がんの増殖活性を阻害するヒト化モノクローナル抗体 ※2 LIV-2008:乳がん、肺がん、膵臓がん、大腸がんを中心とする固形がんの細胞表面に発現する抗原(標的分子)「TROP-2」に結合し、がんの増殖活性を阻害するヒト化モノクローナル抗体 なお、同社の事業セグメントは2015年12月期まで創薬アライアンス事業、リード抗体ライセンスアウト事業および基盤技術ライセンス事業と定義されていた。
今期2016年12月期より事業セグメントを変更し、創薬事業および創薬支援事業の2つのセグメントとしている。
これは、事業展開や経営変化に即応した迅速な意思決定と効率的な業務の執行を目的としたためである。
2016年12月期の業績見通しは、創薬事業での合理的な業績予想の算定が困難なことから非開示となっているが、創薬支援事業の売上高は227百万円と前期比で若干の減収を見込んでいる。
今期は収益体質を筋肉質なものとするため、希望退職による社員数の適正化を実施するほか、研究開発費もプロジェクトの選択と集中を行い抑制していく計画となっている。
このため、営業損失額は前期から縮小することが予想される。
■Check Point ・ヒト化抗体「LIV-1205」に関してスイスADCT社と独占的開発・販売に関する契約 ・潤沢な手元キャッシュにより事業資金は確保 ・戦略的アライアンスによりADLib(R)システムと他の創薬技術の融合を図る (執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)
独自の創薬基盤技術であるADLib®システムを核とした抗体医薬品の研究開発支援や研究開発等を行っている。
ADLib®システムの特徴は、従来の抗体作製技術と比較して「多様性」「迅速性」「困難抗原への対応」に優れていることにあり、従来方式では作製が困難な抗体を中心に研究開発を進めている。
2月12日付で発表された2015年12月期の業績は売上高で280百万円、営業損失で1,269百万円となった。
売上高は、中外製薬 (T:4519)グループを中心とした国内外製薬企業や、アカデミアとのADLib®システムを用いた創薬支援プロジェクトの収入や、オリジナルADLib®システムの技術導出先である、みらかホールディングス (T:4544)グループの富士レビオ(株)からのロイヤルティ収入などが寄与したが、利益面では、完全ヒトADLib®システムの技術導出活動やリード抗体の開発に向けた研究開発負担が重く、損失が続く格好となった。
なお、当期のトピックスとしては、がん幹細胞を標的とした抗体「LIV-1205」に関して、スイスのADC Therapeutics社(以下、ADCT社)とAntibody Drug Conjugate(ADC:抗体薬物複合体※)での全世界における独占的開発・販売権に関するオプションライセンス契約を締結したこと、感染症領域での完全ヒト化抗体の開発実績を持つイーベック社に資本参加したことが挙げられる。
※ADC(抗体薬物複合体)は抗体と薬物を結合させ、抗体の抗原特異性を利用して薬物を疾患部位に効率的に行き届かせることを目的とした抗体薬のこと。
次世代のがん治療法としても注目されている技術である。
今後の成長戦略として、戦略的アライアンスの推進による創薬基盤技術の強化と、医薬品候補となりうる開発パイプラインの拡充に注力していく方針だ。
完全ヒトADLib®システムについては、パイプラインとして取り扱えるPOC確立済みのターゲットでの開発実績を蓄積し、抗体作製機能の検証を進めていくことで、導出につなげていく考えだ。
また、パイプラインとしては旧(株)リブテックが開発したがん疾患を対象とする抗体(LIV-1205※1、LIV-2008※2)や、抗セマフォリン3A抗体の導出活動を継続していくほか、新規パイプラインの拡充も進めていく予定となっている。
※1 LIV-1205:肝臓がんを中心とする固形がんの細胞表面に発現する抗原(標的分子)「DLK-1」に結合し、がんの増殖活性を阻害するヒト化モノクローナル抗体 ※2 LIV-2008:乳がん、肺がん、膵臓がん、大腸がんを中心とする固形がんの細胞表面に発現する抗原(標的分子)「TROP-2」に結合し、がんの増殖活性を阻害するヒト化モノクローナル抗体 なお、同社の事業セグメントは2015年12月期まで創薬アライアンス事業、リード抗体ライセンスアウト事業および基盤技術ライセンス事業と定義されていた。
今期2016年12月期より事業セグメントを変更し、創薬事業および創薬支援事業の2つのセグメントとしている。
これは、事業展開や経営変化に即応した迅速な意思決定と効率的な業務の執行を目的としたためである。
2016年12月期の業績見通しは、創薬事業での合理的な業績予想の算定が困難なことから非開示となっているが、創薬支援事業の売上高は227百万円と前期比で若干の減収を見込んでいる。
今期は収益体質を筋肉質なものとするため、希望退職による社員数の適正化を実施するほか、研究開発費もプロジェクトの選択と集中を行い抑制していく計画となっている。
このため、営業損失額は前期から縮小することが予想される。
■Check Point ・ヒト化抗体「LIV-1205」に関してスイスADCT社と独占的開発・販売に関する契約 ・潤沢な手元キャッシュにより事業資金は確保 ・戦略的アライアンスによりADLib(R)システムと他の創薬技術の融合を図る (執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)