■業績動向1. 2018年12月期は増収減益、数量増だが原材料価格高騰サカタインクス (T:4633)が2019年2月14日に発表した2018年12月期の連結業績は、売上高が2017年12月期比3.0%増の162,056百万円、営業利益が同40.4%減の5,112百万円、経常利益が同38.6%減の6,910百万円、親会社株主に帰属する当期純利益が同44.0%減の4,692百万円だった。
アジア、北米を中心とするパッケージ用インキの数量増加、機能性材料の拡販等で増収だったが、原材料価格の高騰や為替換算影響などにより減益となった。
販売価格改定効果は一部にとどまった。
売上総利益は10.0%減少し、売上総利益率は20.5%で3.0ポイント低下した。
販売費及び一般管理費は0.8%減少し、販管費比率は17.4%で0.6ポイント低下した。
営業外収益では持分法投資利益1,572百万円(2017年12月期は1,783百万円)を計上した。
為替差損益は差し引き628百万円悪化(2017年12月期は為替差益389百万円計上、2018年12月期は為替差損239百万円計上)した。
特別利益では2017年12月期に計上した投資有価証券売却益1,124百万円がはく落した。
為替影響排除後ベースでは売上高が3.9%増収、営業利益が39.2%減益、経常利益が37.5%減益、親会社株主に帰属する当期純利益が42.9%減益だった。
為替の期中平均レートは2017年12月期1米ドル=112円19銭に対して、2018年12月期1米ドル=110円43銭と1円76銭のドル安・円高だった。
為替換算影響は売上高で1,438百万円減収要因、営業利益で103百万円減益要因、経常利益で115百万円減益要因、親会社株主に帰属する当期純利益で98百万円減益要因となった。
また2017年12月期との比較による要因別増減分析によると、売上高47億円増加の増収要因はインキ数量56億円、機能性材料8億円、その他5億円、減収要因は機材2億円、インキ単価0億円、為替14億円、調整額4億円だった。
営業利益34.6億円減少の増益要因はインキ数量23.2億円、機能性材料0.8億円、その他0.3億円、調整額0.1億円、減益要因はインキコスト56.8億円、機材0.8億円、インキ単価0.3億円、為替影響1.0億円だった。
なお修正計画値(2018年11月13日に売上高及び各利益を下方修正し、売上高161,600百万円、営業利益5,500百万円、経常利益7,300百万円、親会社株主に帰属する当期純利益5,300百万円)との比較で見ると、売上高は456百万円上回ったが、営業利益は388百万円、経常利益は390百万円、親会社株主に帰属する当期純利益は608百万円、それぞれ下回って着地した。
原材料価格の高騰が想定以上となった一方で、販売価格の改定効果が一部にとどまった。
2. セグメント別動向セグメント別(連結調整前、為替影響排除前、2017年12月期比)の動向は以下のとおりである。
印刷インキ・機材(日本)は、売上高が0.1%減の54,950百万円、営業利益が50.1%減の1,125百万円だった。
売上面は、パッケージ関連で食品・飲料用途グラビアインキが安定的に推移したが、フレキソインキが天候不順の影響で伸び悩み、新聞・オフセットインキ及び機材(印刷製版用材料、印刷製版関連機器)が低調だった。
利益面はパッケージ関連で一部販売価格改定効果があったものの、原材料価格の高騰と新聞・オフセットインキの需要低迷等で大幅減益だった。
印刷インキ(アジア)は、売上高が6.3%増の32,156百万円、営業利益が34.8%減の1,529百万円だった。
売上面は、インド、インドネシア、ベトナムにおいてパッケージ用グラビアインキ、インドや中国において新聞・オフセットインキの販売数量が増加し、為替換算影響を吸収して増収だった。
利益は原材料価格高騰の影響、現地通貨安の影響、競争激化の影響等で大幅減益だった。
販売価格改定の効果は一部にとどまった。
印刷インキ(北米)は、売上高が3.2%増の44,957百万円、営業利益が45.8%減の992百万円だった。
売上面は、オフセットインキが印刷市場縮小の影響で減少したが、パッケージ用のフレキソインキ、グラビアインキ、金属缶印刷用メタルインキ、UVインキが好調に推移し、為替換算影響を吸収して増収だった。
利益は、販売数量の増加や高付加価値製品の拡販がプラス要因だったが、原材料価格高騰の影響、拡販に伴うコスト増加等で大幅減益だった。
なお原材料価格については、米中貿易摩擦による制裁関税の影響も加わり、年後半に一段と高騰した。
印刷インキ(欧州)は、売上高が6.2%増の9,321百万円、営業利益が791百万円の赤字(2017年12月期は25百万円の黒字)だった。
売上面はグラビアインキ、フレキソインキ、金属缶印刷用メタルインキの販売数量が増加し、為替の現地通貨高・円安も寄与して増収だった。
利益は販売数量の増加がプラス要因だったが、原材料価格の高騰、生産体制再編に伴うコスト増加等で赤字となった。
機能性材料は、売上高が7.5%増の12,185百万円、営業利益が7.2%増の1,222百万円だった。
売上面はインクジェットインキ、カラーフィルター用顔料分散液及びトナーが順調に伸長し、数量増効果と合理化効果が原材料価格高騰の影響を上回り、増収増益だった。
その他は売上高が3.5%増の16,335百万円、営業利益が11.4%増の390百万円だった。
3. 財務状況財務面では2017年12月期末との比較で、借入金合計が20億円増加、自己資本比率が1.1ポイント低下したが、特にネガティブ視される水準ではなく、財務健全性に問題はないだろう。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 水田雅展)