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コラム【新潮流2.0】:動かない(マネックス証券チーフ・ストラテジスト広木隆)

発行済 2017-07-26 09:53
更新済 2017-07-26 10:00
コラム【新潮流2.0】:動かない(マネックス証券チーフ・ストラテジスト広木隆)
◆日銀による巨額の購入で国債市場が干上がって久しい。
流動性が枯渇して、取引が成立しない日もある。
そんなところに「イールドカーブ・コントロール」である。
国債利回りを釘付けにするわけだから債券価格は動かない。
これでは国債ディーラーの仕事はあがったりである。
実際に、ディーラー職を削減しようという金融機関も出始めた。


◆株式のディーラーはとっくの昔に廃業の憂き目にあっている。
東証の取引システム、「アローヘッド」が高速化し、いまや注文応答時間は 0.5ミリ秒未満。
実際には猛烈な速さで価格は動いているのだが、人間の目にはまるで動いていないように見える。
こうなると板にある「玉」をとらえて「1カイ2ヤリ」で売買してさやを抜くといった昔ながらのディーラーのやり方では機械に敵わない。
なにしろ人間の視力では追いつけない速さなのだから。
コンピュータによるHFT(高速高頻度取引)によってほとんどのディーラーは駆逐されてしまったのである。


◆ところがそのHFTもこのところリターンが出なくなっている。
ひとつの理由はマーケットが波乱なく安定しているからだ。
債券市場も株式市場もボラティリティは記録的な低水準にある。
ボラティリティが低下すると取引量も減る。
これは当たり前で、相場が動くからリターンをあげようと取引に参加するのである。
動かないなら誰も取引しようがない。
HFTが縦横無尽に稼げるのはじゅうぶんな流動性があってこそ。
「板」がスカスカではHFTといえども、儲ける機会がないのである。


◆要は「動かない」のは人間にとっても機械にとっても困るのだ。
流動性と変動性はマーケットの「空気」みたいなもの。
「空気」がなくてはディーラーやトレーダーは息ができない。
プレーヤーが窒息死してしまっては、マーケット自体が成り立たない。
市場に「空気」を注入し、一刻も早くこの息苦しい相場を終わらせる必要がある。
寝苦しい夜が続くが、熱帯夜は長くてもお盆過ぎには終わるだろう。
相場のほうも8月下旬のジャクソンホールあたりが転機となりそうだ。


マネックス証券 チーフ・ストラテジスト 広木 隆
(出所:7/24配信のマネックス証券「メールマガジン新潮流」より抜粋)

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