■成長戦略と新たな挑戦
(1)従来からの成長戦略:強みを生かした店舗網の拡大
前述のように厳しい事業環境が続くパチンコホール業界だが、この厳しさはダイナムジャパンホールディングス<06889/HK>にとっては成長のチャンスだと弊社では考えている。
パチンコホール業界の右肩下がりのトレンドはここ数年の話ではなく、遅くとも10年から15年ほど前には認識されていたことだ。
同社は業界としての縮小トレンドを早くから察知する一方、自社の収益力を強化する努力を続けた。
その努力が、前述したチェーンストア理論にローコストオペレーションや業界トップの店舗数からのスケールメリット、上場企業としての資金調達力などの強みとして今に生きている。
今後加速すると予想される業界再編において、そうした強みを最大限発揮してM&Aあるいはオーガニック出店を加速し、長期目標として掲げる1,000店舗・台数シェア10%の実現を図るというのが、同社の成長戦略だ。
(2)新たな挑戦と第2の成長戦略
これまで弊社は、同社の成長戦略を店舗網拡大という1軸で理解してきた。
しかしこうした理解を修正する必要があるかもしれない。
ここにきて同社は新しい挑戦を始めたもようだ。
それは、既存店売上高の押し上げだ。
チェーンストア理論に基づく経営にこだわる同社は、当然ながら既存店売上高にも意を注いできた。
2015年3月期第4四半期から2016年3月期第1四半期にかけて行った大規模リニューアルはその一例だ。
低貸玉営業も客数伸長を狙った既存店のてこ入れ策とも言える。
2017年3月期に入って同社が始めたことは、1)地域の顧客にフォーカスした営業と、2)実験的施策の実施だ。
1)の地域の顧客にフォーカスした営業というのは、地域ごとの顧客の特性を踏まえ、その顧客の視点に基づいた店づくりを行うということだ。
また、2)の各種実験的施策というのは、2店舗を実験店に設定し、従来のパチンコホールのイメージを超えるような施策を行い、効果があるものは他店舗に展開していこうというものだ。
同社の店舗運営についてはこれまで、“チェーンストア理論に基づくローコストオペレーション”にフォーカスすることが多かった。
これはコスト削減や効率性の追求の方向性の施策だ。
今回の地域フォーカスや各種実験的施策への取り組みはトップライングロース(売上の成長)に向けた取り組みであるため、これら新たな取り組みは同社の従来からの経営方針の転換を意味するわけではない。
売上拡大に向けた取り組みはこれまでも種々、行われてきたことだ。
それでも弊社が今回の新たな取り組みを“挑戦”と表現するのは、今回の施策においては、成否の帰趨が各店舗の店長など個々の従業員の才覚に依存する割合が高くなると想像するためだ。
新たな取り組みで目指すところは、“固定ファンづくり”であるとされる。
顧客の心に刺さるような施策は、本部でマニュアルを作って各店舗に配布するということでは実現できないであろう。
そこがコスト削減策とは大きく異なる点だと考えている。
これらの新たな取り組みは今期から開始されたばかりで、具体的事例や成功体験を少しずつ蓄積している最中とみられる。
これら新たな施策との因果関係は確認されていないが、遊技台の稼働状況において、同社の数値が2016年9月から前年同期比でプラスに転じてきている。
また、業界参考値との比較でも、同業他社を明確に上回って回復してきている。
このように改善が数値として表れてきたことは、挑戦を継続・拡大させていく上で心強い材料といえる。
同社がこうした新たな挑戦を通じてトップライングロースの実現に成功すれば、店舗網拡大に加えて、既存店売上高の拡大というもう1つの成長戦略を手にすることになる。
文字どおりの“成長”には至らなくとも、既存店売上高の落ち込みを相対的に縮小することができれば、ローコストオペレーションと相まって店舗利益をしっかりと確保できることになる。
個々の店舗の収益力の基盤強化は店舗網拡大戦略にもプラスの相乗効果をもたらすと期待される。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 浅川 裕之)
(1)従来からの成長戦略:強みを生かした店舗網の拡大
前述のように厳しい事業環境が続くパチンコホール業界だが、この厳しさはダイナムジャパンホールディングス<06889/HK>にとっては成長のチャンスだと弊社では考えている。
パチンコホール業界の右肩下がりのトレンドはここ数年の話ではなく、遅くとも10年から15年ほど前には認識されていたことだ。
同社は業界としての縮小トレンドを早くから察知する一方、自社の収益力を強化する努力を続けた。
その努力が、前述したチェーンストア理論にローコストオペレーションや業界トップの店舗数からのスケールメリット、上場企業としての資金調達力などの強みとして今に生きている。
今後加速すると予想される業界再編において、そうした強みを最大限発揮してM&Aあるいはオーガニック出店を加速し、長期目標として掲げる1,000店舗・台数シェア10%の実現を図るというのが、同社の成長戦略だ。
(2)新たな挑戦と第2の成長戦略
これまで弊社は、同社の成長戦略を店舗網拡大という1軸で理解してきた。
しかしこうした理解を修正する必要があるかもしれない。
ここにきて同社は新しい挑戦を始めたもようだ。
それは、既存店売上高の押し上げだ。
チェーンストア理論に基づく経営にこだわる同社は、当然ながら既存店売上高にも意を注いできた。
2015年3月期第4四半期から2016年3月期第1四半期にかけて行った大規模リニューアルはその一例だ。
低貸玉営業も客数伸長を狙った既存店のてこ入れ策とも言える。
2017年3月期に入って同社が始めたことは、1)地域の顧客にフォーカスした営業と、2)実験的施策の実施だ。
1)の地域の顧客にフォーカスした営業というのは、地域ごとの顧客の特性を踏まえ、その顧客の視点に基づいた店づくりを行うということだ。
また、2)の各種実験的施策というのは、2店舗を実験店に設定し、従来のパチンコホールのイメージを超えるような施策を行い、効果があるものは他店舗に展開していこうというものだ。
同社の店舗運営についてはこれまで、“チェーンストア理論に基づくローコストオペレーション”にフォーカスすることが多かった。
これはコスト削減や効率性の追求の方向性の施策だ。
今回の地域フォーカスや各種実験的施策への取り組みはトップライングロース(売上の成長)に向けた取り組みであるため、これら新たな取り組みは同社の従来からの経営方針の転換を意味するわけではない。
売上拡大に向けた取り組みはこれまでも種々、行われてきたことだ。
それでも弊社が今回の新たな取り組みを“挑戦”と表現するのは、今回の施策においては、成否の帰趨が各店舗の店長など個々の従業員の才覚に依存する割合が高くなると想像するためだ。
新たな取り組みで目指すところは、“固定ファンづくり”であるとされる。
顧客の心に刺さるような施策は、本部でマニュアルを作って各店舗に配布するということでは実現できないであろう。
そこがコスト削減策とは大きく異なる点だと考えている。
これらの新たな取り組みは今期から開始されたばかりで、具体的事例や成功体験を少しずつ蓄積している最中とみられる。
これら新たな施策との因果関係は確認されていないが、遊技台の稼働状況において、同社の数値が2016年9月から前年同期比でプラスに転じてきている。
また、業界参考値との比較でも、同業他社を明確に上回って回復してきている。
このように改善が数値として表れてきたことは、挑戦を継続・拡大させていく上で心強い材料といえる。
同社がこうした新たな挑戦を通じてトップライングロースの実現に成功すれば、店舗網拡大に加えて、既存店売上高の拡大というもう1つの成長戦略を手にすることになる。
文字どおりの“成長”には至らなくとも、既存店売上高の落ち込みを相対的に縮小することができれば、ローコストオペレーションと相まって店舗利益をしっかりと確保できることになる。
個々の店舗の収益力の基盤強化は店舗網拡大戦略にもプラスの相乗効果をもたらすと期待される。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 浅川 裕之)