■事業概要アトラエ (T:6194)が手掛ける事業は、主力サービスである成功報酬型求人メディア「Green」の企画・運営と、組織改善プラットフォーム「wevox」の企画・開発・運営、ビジネスパーソン同士を結び付けるスマートフォンアプリ「yenta」の3種類である。
1. 成功報酬型求人メディア「Green」「Green」は業界初の成功報酬型求人プラットフォーム(メディア)である。
インターネット時代におけるまったく新しい人と企業のマッチングプラットフォームとして、蓄積してきた膨大な採用活動・転職活動データの解析をもとに、転職希望者には最適化した求人提案を、採用企業には最適化した人材提案を実現し、効率的なマッチングを生み出している。
アナログに人が仲介することで、クローズド・高額にならざるを得なかった従来のサービスに対し、ITを最大限活用することによってオープンで安価に価値を提供するプラットフォームを実現している。
「Green」の広義の意味での競合企業としては、(株)リクルートキャリア、パーソルキャリアなどを始めとする人材紹介会社やそれらによって運営されている求人メディアなどを挙げられる。
既存の企業が多く、参入障壁が低いため新規参入企業も多く、激しい競争が繰り広げられているが、独自のポジショニングと差別性(選ばれる理由)により優位性を築いている。
(1) 「Green」のポジショニングと4つの選ばれる理由「Green」は業界でもユニークな位置にポジショニングされており、圧倒的な差別性を保有している。
4つの選ばれる理由という観点で整理する。
a) 圧倒的な価格競争力従来型の人材紹介会社は、専門的なアドバイザーを抱え、カウンセリング施設など設置することが前提である。
それに対して同社は、アドバイザーや施設コストは不要なため固定費を抱え込まずに運営している。
これにより競合サービス(特にアナログな人材紹介会社)と比較して圧倒的に安価で優秀な人材採用が可能となっている。
ちなみに同社は、関東圏、関西圏、東北圏などエリアごとに一律の固定料金(成功報酬型)を設定している。
b) 成功報酬型で掛け捨てリスクが低い従来の求人メディアは採用の成否に関わらず、求人広告の掲載と同時に広告掲載料金が発生していた。
しかし、「Green」では新規登録時に初期設定費を支払った後は、求人広告の掲載期間や掲載求人数の制限がない。
また、採用が成功し、求職者が実際に入社した段階で成功報酬が発生する料金体系であるため、掛け捨てリスクが極めて低い。
c) 圧倒的な先行優位「Green」は成功報酬型のモデルで10年以上運営しており、登録企業数が6,700社を超え、登録ユーザIDが67万人を超える。
魅力的な求職が豊富なため登録ユーザが増え、登録ユーザが多いため魅力的な求職も増えるという好循環が先行優位のメカニズムであり、「Green」はまさにその領域に達している。
先行優位は信用力・ブランド認知にも好影響を与える。
IT/Web系の人材に強みを持つ求人メディアであり、当該業界では知らぬ者はいない状況だが、様々な業界でデジタル化が進んでおり、上場による知名度や信用力の向上も相まって利用企業の裾野がますます拡大している。
2019年9月期においても、凸版印刷 (T:7911)、セブン銀行 (T:8410)などが、各業界のデジタル化が進む環境の中で同サービスの利用を開始している。
d) ビッグデータ蓄積活用によるマッチング精度「Green」には、どのような職務経歴、専門能力、経験年数の求職者(プロフィールデータ)が、どのような業種、職種、規模、社風の企業にアプローチを行ったか(アクションデータ)、書類選考を通過したか、何次面接まで進んだか、内定もしくは入社まで至ったか(選考データ)、といった求人企業の採用活動または求職者の転職活動に関するあらゆるデータが蓄積されている。
このデータを解析することで、転職を考える求職者には最適化された求人情報を、採用を考える求人企業には最適化された求職者情報を届けられるシステムを実現しており、書類選考通過率(マッチング精度)向上を実現し、同社の優位性を確立している。
精度の高い情報を基に求人企業からもダイレクトにアプローチができる点も人材不足に悩む企業にとって不可欠な機能となっている。
e) KPIの推移「Green」の各種KPI(重要業績評価指標)はすべて順調に推移し過去最高を記録した。
2019年9月期のアクティブユーザー数(期末)で前期末比27.5%増の38,423人、入社人数(第4四半期単独)で前年同四半期比35.5%増の839人、登録企業数(期末、累計)で前期末比13.4%増の6,761社、掲載求人数(期末)で同18.6%増の16,583件である。
同社では「Green」が狙うターゲット市場として、国内の人材紹介市場規模を2,860億円、そのうち30%に当たる860億円をIT業界の市場規模と見込んでいる。
「Green」は従来の人材紹介サービスのディスカウントモデルであるため、市場規模としてはこの60%に相当すると見込んでおり、それが全業界では1,700億円、IT業界では510億円がターゲットとみている。
2020年9月期の「Green」の成功報酬売上目標32億円を達成したとしても、全業界に対しては1.8%、IT業界に対しては6.2%とわずかであり、今後も「Green」の成長可能性は高いと推察される。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 角田秀夫)