■今後の見通し
(1)2017年2月期業績見通し
システムインテグレータ (T:3826)の2017年2月期の業績見通しは、売上高が前期比1.7%増の3,600百万円、営業利益が同12.4%増の500百万円、経常利益が同12.5%増の503百万円、当期純利益が同1.3%減の360百万円を見込む。
税負担の正常化で当期純利益が微減益となるのを除けば、連続で過去最高を更新する見通しだ。
売上高についてはERP事業のリソース不足がボトルネックとなり、前期比微増収にとどまるが、追加償却122百万円がなくなることで2ケタ増益となる。
費用面では前期に抑制した人件費や研究開発費、広告宣伝費などを通常レベルに戻す予定にしている。
今期については収益回復が軌道に乗ったことから、再成長に向けた人員体制の強化並びに社外協力企業の開拓・育成に重点を置く1年と位置付け、2018年2月期以降の2ケタ成長を目指していく方針だ。
なお、新卒採用者数に関して2016年は採用がなかったが、2017年は10名超の採用を予定している。
事業セグメント別の見通しは以下のとおり。
○Object Browser事業 Object Browser事業は今期も堅調な推移を見込んでいる。
「SI Object Browser」シリーズは若干増、「OBPM」は2ケタ増収基調が続く見通しだ。
IT業界では慢性的な人不足が続くなかで繁忙状況が続いており、プロジェクト管理体制が行き届かず、開発期間の長期化などにより不採算化するケースも増えている。
こうしたなかで、競合品のない「OBPM」に対する関心も高まっており、自社製品からの切り替えを検討する大手IT企業も出始めているほか、ソフトウェア開発とは異なる他業界からの引き合いも増え始めているようだ。
例えば、エンジニアリング会社などでプラントの設計・施工の管理ツールとして「OBPM」の導入を検討している。
導入社数は前期末で120社超だが、今後はさらに顧客層が拡大していく可能性がある。
また、中国でも提携先のウィナーソフト社が中国版「OBPM」の販売を5月より開始するため、その動向が注目される。
中国のソフトウェア開発の市場規模は日本の10倍以上と大きいためだ。
また、中国ではPMに対する意識が高いことも今後の成長期待として挙げられる。
これは、プロジェクトマネジメントに関するアプローチ手法を体系化したPMBOK(ピンボック)※の国際資格であるPMPの有資格者数でも見て取れる。
数年前の中国の資格取得者数は約3万人と日本並みの水準であったが、現在は約10万人と日本の3倍以上に増加している。
中国ではExcelで自作してプロジェクト管理を行っており、市販品はまだない状態にある。
中国においても人件費の高騰により生産性の向上が求められており、性能の良いPMツールがあれば導入が進む可能性が高いと言えるだろう。
※PMBOK(Project Management Body of Knowledge):米国のプロジェクトマネジメント協会が発行する「プロジェクトマネジメント知識体系ガイド」の略称。
建設、製造、ソフトウェア開発など幅広いプロジェクトに適用可能なプロセスベースのアプローチ手法を体系的にまとめたもの。
プロジェクトマネジメントを効果的に達成するためのアプローチ手法として、5個の基本的なプロセス群と10個の管理エリアに分類し、必要なプロセスがまとめられている。
ウィナーソフト社では現在、中国大手IT企業1社にトライアルで導入しており、評価が良ければ今後の販売にも弾みが付くものと予想される。
中国市場向けでは「SI Object Browser」も現地代理店を通じて販売しているが、こちらはフリーソフトの競合品やそのコピー品が出回っていることもあり、売上げはほとんど伸びていないだけに、「OBPM」にかかる期待は大きい。
2013年にリリースした「OBDZ」については顧客の要望などを取り入れながら製品改良を進めている段階にある。
まだ、業績へのインパクトは軽微だが、ソフトウェア設計の自動化ニーズは確実にあるため、数年後には認知度の向上とともに2ケタ成長局面に入り、収益に貢献してくるものと予想される。
○ERP事業 ERP事業の売上高は前期比で2~3%の増収を見込んでいる。
需要は引き続き旺盛なものの、受注案件の規模も年々大きくなっており、開発能力の問題から受注活動を制限しているためだ。
課題は能力拡大にあり、今期は中途採用人員の育成のほか、協力会社の開拓及び育成を最重点課題として取り組んでいく方針だ。
能力が増強する2018年2月期には再び2ケタ成長を目指していくことになる。
また、「GRANDIT」でもクラウド対応を前期末より開始しており、既に数社で稼働している。
ネットワークはAWS(アマゾン ウェブ サービス)を利用する。
ERPを導入する企業の中には、ハードウェアとソフトの一括導入を希望する企業もあるが、同社はハードウェアを扱わないため、今まではこうした企業の受注を取り逃すケースもあった。
しかし、クラウドではハードウェアやネットワークをクラウド事業者が用意するため同社の負担は掛からずに、受注獲得の機会が増すことになる。
「GRANDIT」の料金プランは従来と変わりないが、クラウドのサポートフィー(ネットワーク料金、ハードウェア利用料等)が毎月の収入として入ってくることになり、顧客の囲い込み効果も期待できる。
○EC・オムニチャネル事業 EC・オムニチャネル事業の売上高は前期比で微増収を見込んでいる。
前述したようにECサイト構築パッケージについては、競争激化により厳しい環境が続いているが、今6月に新バージョンをリリースする予定となっている。
新バージョンでは、CMS(コンテンツマネジメントシステム)※機能を実装し、顧客側で導入後に簡単にECサイトのレイアウト変更などをできるようにした。
従来は、追加料金を支払って同社が対応する格好だったが、同機能を実装したことにより、顧客の利便性が向上することになる。
また、同製品でもAWSを使ったクラウドサービスを開始しており、既に1社受注を獲得している。
※CMS(Content Management System):Webコンテンツを構成するテキストや画像、レイアウト情報などを一元的に保存・管理し、サイトを構築したり編集したりするソフトウェアのこと。
「SOCS」についても今4月に新バージョンをリリースした。
2015年1月に発表して以降、機能面での改善に注力し、ようやくサービス・機能面で実用化レベルに達する製品に仕上がった。
このため、今期は各種セミナーなどを通じて営業活動を本格化していくフェーズに移る。
本格的な営業活動初年度となるため、売上げ面での寄与は軽微と見ているが、小売業界の中でオムニチャネルに対する関心度は高く、また経営統合管理分析システムのニーズは強いだけに、認知度が向上してくれば導入社数も広がっていくものと予想される。
なお、前期は追加償却の影響で営業損失を計上したが、当期については償却費が減少するため、黒字に転換する見通しだ。
(2)中期経営計画について 同社は、2015年4月に中期経営計画「Core2015」を策定、発表している。
基本方針としては、同社の強みであるコア製品・事業に経営リソースを集中し、同時に低コスト・高収益体質を取り戻すことで、早期に業績を回復させることを掲げていた。
また、クラウドサービスの強化により、ストック売上比率を高めることで、安定性の高い収益構造に変革していく方針に変わりない。
業績目標値としては最終年度である2018年2月期に売上高4,000百万円、経常利益600百万円を掲げている。
中期経営計画初年度の2016年2月期に関しては売上高、利益とも上回る結果となり、順調な滑り出しを見せていると言えよう。
今後については、国内の景況感がやや悪化していることが懸念要因ではあるものの、企業の生産性向上に向けたIT投資は堅調な推移が予想されること、また、流通業界においてはオムニチャネル体制の構築に向けた投資が、活発化することが予想されることから、中期計画を達成する可能性は高いと弊社では見ている。
また、国内だけでなく、中国においても「OBPM」が普及拡大するようであれば、業績面でプラスに寄与することが予想される。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)
税負担の正常化で当期純利益が微減益となるのを除けば、連続で過去最高を更新する見通しだ。
売上高についてはERP事業のリソース不足がボトルネックとなり、前期比微増収にとどまるが、追加償却122百万円がなくなることで2ケタ増益となる。
費用面では前期に抑制した人件費や研究開発費、広告宣伝費などを通常レベルに戻す予定にしている。
今期については収益回復が軌道に乗ったことから、再成長に向けた人員体制の強化並びに社外協力企業の開拓・育成に重点を置く1年と位置付け、2018年2月期以降の2ケタ成長を目指していく方針だ。
なお、新卒採用者数に関して2016年は採用がなかったが、2017年は10名超の採用を予定している。
事業セグメント別の見通しは以下のとおり。
○Object Browser事業 Object Browser事業は今期も堅調な推移を見込んでいる。
「SI Object Browser」シリーズは若干増、「OBPM」は2ケタ増収基調が続く見通しだ。
IT業界では慢性的な人不足が続くなかで繁忙状況が続いており、プロジェクト管理体制が行き届かず、開発期間の長期化などにより不採算化するケースも増えている。
こうしたなかで、競合品のない「OBPM」に対する関心も高まっており、自社製品からの切り替えを検討する大手IT企業も出始めているほか、ソフトウェア開発とは異なる他業界からの引き合いも増え始めているようだ。
例えば、エンジニアリング会社などでプラントの設計・施工の管理ツールとして「OBPM」の導入を検討している。
導入社数は前期末で120社超だが、今後はさらに顧客層が拡大していく可能性がある。
また、中国でも提携先のウィナーソフト社が中国版「OBPM」の販売を5月より開始するため、その動向が注目される。
中国のソフトウェア開発の市場規模は日本の10倍以上と大きいためだ。
また、中国ではPMに対する意識が高いことも今後の成長期待として挙げられる。
これは、プロジェクトマネジメントに関するアプローチ手法を体系化したPMBOK(ピンボック)※の国際資格であるPMPの有資格者数でも見て取れる。
数年前の中国の資格取得者数は約3万人と日本並みの水準であったが、現在は約10万人と日本の3倍以上に増加している。
中国ではExcelで自作してプロジェクト管理を行っており、市販品はまだない状態にある。
中国においても人件費の高騰により生産性の向上が求められており、性能の良いPMツールがあれば導入が進む可能性が高いと言えるだろう。
※PMBOK(Project Management Body of Knowledge):米国のプロジェクトマネジメント協会が発行する「プロジェクトマネジメント知識体系ガイド」の略称。
建設、製造、ソフトウェア開発など幅広いプロジェクトに適用可能なプロセスベースのアプローチ手法を体系的にまとめたもの。
プロジェクトマネジメントを効果的に達成するためのアプローチ手法として、5個の基本的なプロセス群と10個の管理エリアに分類し、必要なプロセスがまとめられている。
ウィナーソフト社では現在、中国大手IT企業1社にトライアルで導入しており、評価が良ければ今後の販売にも弾みが付くものと予想される。
中国市場向けでは「SI Object Browser」も現地代理店を通じて販売しているが、こちらはフリーソフトの競合品やそのコピー品が出回っていることもあり、売上げはほとんど伸びていないだけに、「OBPM」にかかる期待は大きい。
2013年にリリースした「OBDZ」については顧客の要望などを取り入れながら製品改良を進めている段階にある。
まだ、業績へのインパクトは軽微だが、ソフトウェア設計の自動化ニーズは確実にあるため、数年後には認知度の向上とともに2ケタ成長局面に入り、収益に貢献してくるものと予想される。
○ERP事業 ERP事業の売上高は前期比で2~3%の増収を見込んでいる。
需要は引き続き旺盛なものの、受注案件の規模も年々大きくなっており、開発能力の問題から受注活動を制限しているためだ。
課題は能力拡大にあり、今期は中途採用人員の育成のほか、協力会社の開拓及び育成を最重点課題として取り組んでいく方針だ。
能力が増強する2018年2月期には再び2ケタ成長を目指していくことになる。
また、「GRANDIT」でもクラウド対応を前期末より開始しており、既に数社で稼働している。
ネットワークはAWS(アマゾン ウェブ サービス)を利用する。
ERPを導入する企業の中には、ハードウェアとソフトの一括導入を希望する企業もあるが、同社はハードウェアを扱わないため、今まではこうした企業の受注を取り逃すケースもあった。
しかし、クラウドではハードウェアやネットワークをクラウド事業者が用意するため同社の負担は掛からずに、受注獲得の機会が増すことになる。
「GRANDIT」の料金プランは従来と変わりないが、クラウドのサポートフィー(ネットワーク料金、ハードウェア利用料等)が毎月の収入として入ってくることになり、顧客の囲い込み効果も期待できる。
○EC・オムニチャネル事業 EC・オムニチャネル事業の売上高は前期比で微増収を見込んでいる。
前述したようにECサイト構築パッケージについては、競争激化により厳しい環境が続いているが、今6月に新バージョンをリリースする予定となっている。
新バージョンでは、CMS(コンテンツマネジメントシステム)※機能を実装し、顧客側で導入後に簡単にECサイトのレイアウト変更などをできるようにした。
従来は、追加料金を支払って同社が対応する格好だったが、同機能を実装したことにより、顧客の利便性が向上することになる。
また、同製品でもAWSを使ったクラウドサービスを開始しており、既に1社受注を獲得している。
※CMS(Content Management System):Webコンテンツを構成するテキストや画像、レイアウト情報などを一元的に保存・管理し、サイトを構築したり編集したりするソフトウェアのこと。
「SOCS」についても今4月に新バージョンをリリースした。
2015年1月に発表して以降、機能面での改善に注力し、ようやくサービス・機能面で実用化レベルに達する製品に仕上がった。
このため、今期は各種セミナーなどを通じて営業活動を本格化していくフェーズに移る。
本格的な営業活動初年度となるため、売上げ面での寄与は軽微と見ているが、小売業界の中でオムニチャネルに対する関心度は高く、また経営統合管理分析システムのニーズは強いだけに、認知度が向上してくれば導入社数も広がっていくものと予想される。
なお、前期は追加償却の影響で営業損失を計上したが、当期については償却費が減少するため、黒字に転換する見通しだ。
(2)中期経営計画について 同社は、2015年4月に中期経営計画「Core2015」を策定、発表している。
基本方針としては、同社の強みであるコア製品・事業に経営リソースを集中し、同時に低コスト・高収益体質を取り戻すことで、早期に業績を回復させることを掲げていた。
また、クラウドサービスの強化により、ストック売上比率を高めることで、安定性の高い収益構造に変革していく方針に変わりない。
業績目標値としては最終年度である2018年2月期に売上高4,000百万円、経常利益600百万円を掲げている。
中期経営計画初年度の2016年2月期に関しては売上高、利益とも上回る結果となり、順調な滑り出しを見せていると言えよう。
今後については、国内の景況感がやや悪化していることが懸念要因ではあるものの、企業の生産性向上に向けたIT投資は堅調な推移が予想されること、また、流通業界においてはオムニチャネル体制の構築に向けた投資が、活発化することが予想されることから、中期計画を達成する可能性は高いと弊社では見ている。
また、国内だけでなく、中国においても「OBPM」が普及拡大するようであれば、業績面でプラスに寄与することが予想される。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)