みなさんこんにちは!フィスコマーケットレポーターの高井ひろえです。
以前、本連載で各国の金の購入動向について取り上げたことがありましたが、これらを見ると国際関係が浮き彫りになってくるように思えてとても面白いと感じました。
そこで今回は改めて金の「購入量」に焦点を当てて国際関係を読み解いていきます。
■ 大量に金を買っている国がある今、各国の中央銀行が金購入に走っています。
ちなみに中国では金が宝飾品として愛されていますし、インドでは嫁入り道具として必要とされています。
ですが、この2国のように国民が金を必要としているのとは異なるレベルで、金をたくさん買っている国があるのです。
そしてなんと2018年の世界全体の金の購入量は前年比で74%増の651トンにまで増加しています。
これはなぜなのでしょうか?世界中に金の愛好家が増えたのでしょうか?今、金は「有事」にも価値を保ち続けてくれるという側面が注目されて買われているのです。
かつては「有事」といえば物理的な戦争でしたが、最近では米中貿易摩擦などの経済戦争、マネー戦争のリスクも「有事」とされ、金が買われるようになっています。
■ 経済制裁が金購入に向かわせている近年、最も金を購入しているのはロシアで2001年から2018年第3四半期までの合計は1,651.8トンにも上ります。
ロシアは米国債の保有量を減らす一方、金の購入量を増やしているのです。
ロシアは米国との関係がよくないので、もし米国に「ロシアが持っている米国債は無効だよ」などといわれたときなどに備えて米国債を売って、「有事の金」を買っているのです。
ロシアの中央銀行総裁が金について、「法的・政治的リスクから100%保証されている」という見方を示していることからも、金への信用の高さがうかがえます。
具体的な米国からの経済制裁は、ロシアの財閥経営者と参加企業を対象に、米国内の資産凍結や取引を禁止することなどが打ち出されています。
米国の制裁は厳しく、ロシアが対処に迫られている状況を見て取れます。
今後さらにロシアの金保有の動きは加速することになりそうです。
ロシアの次に金を購入しているのは中国で1,447.5トン(同=2001-2018第3四半期)です。
ロシアと競る購入量ですね。
中国もロシアと同様に米国との関係がよくないので、米国債を減らして金を買い増しています。
中国は米中貿易交渉で米国と関税の掛け合いをしていますよね。
■ 金から世界が見えてくる中国に続くのはカザフスタンで、277.9トン(同)です。
中国とは1,000トン以上ひらきがあります。
世界地図を眺めれば一目瞭然ですが、カザフスタンはロシアのすぐ南に位置しています。
このこともありロシアと経済的な結びつきが強く、米国がロシアに導入する経済制裁の影響を大きく受けてしまいます。
また戦争懸念の強い中東諸国に囲まれているので、有事に備えて金を購入しています。
金が「有事にも価値を保つ」という側面に注目しながら各国の購入量を見ることで、有事への意識の強さを考察することができます。
その「有事」がどの国に関わるものなのかを考えていくことで国際関係がみえてくるのですね。
次回のコラムでは各国の金の「保有量」に注目して国際関係を考えていきましょう。
フィスコマーケットレポーター 高井ひろえ