2017年は、一般的にビットコインと暗号通貨にとって重要な分岐点の年である。
ビットコインの価格は記録的な水準まで上昇し、ICOは10億ドル以上の資金を調達している。
暗号通貨支持者は、この急速な成長は、このテクノロジーがほぼ無限のユースケースを提供するという認識の高まりから生じていると主張する。
一方、批評家はビットコインを17世紀のオランダのチューリップバブルと比較し、ビットコイン価値は完全に投機からきていると主張する。
ニューヨーク大学金融学教授のAswathDamodaran氏は、彼の個人ブログ「MusingonMarkets」で、その議論について語った。
Damodaran氏は、ビットコインの猛烈な批評家よりも適度な語調を取っているが、彼は懐疑的な考えを示し、ビットコインは単に「危険な数字だけのゲーム」になるかもしれないと示唆している。
■ビットコインの最弱のリンク
Damodaran氏は、ビットコインの通貨として有用性を分析することによってその結論に至っている。
通貨の地位は、その通貨が勘定単位、交換手段、および価値の保存としてどれだけうまく機能するかによって評価されるとDamodaran氏は述べる。
暗号通貨の最弱のリンクは、「それらが交換媒介物として、また、価値の保存として深く浸透していないことである」と彼は言う。
具体的に、彼はビットコインが小売業者からほとんど受け入れられてないことを訴えており、モルガン・スタンレーが最近述べた「事実上ゼロ」の受け入れというに考えと一致している。
▽参考
ビットコインの受け入れは「実質的にゼロで収縮している」と、MorganStanley(モルガン・スタンレー)は主張
Damodaran氏は、ビットコインが受け入れられていない理由は、慣性(社会の変化を受け入れが鈍いこと)、価格の変動性、他の暗号通貨との競争のためであると言う。
ビットコインの価格変動は投資家にとっては良いことであるが、交換媒介物として受け入れられることを妨げると彼は述べる。
さらにDamodaran氏は、具体的な例は述べていないが、金持ちになるための手段としてビットコインを推進するビットコイン開発者とそのコミュニティを非難している。
Damodaran氏は、ビットコインの通貨としての有用性は記録的な価格水準によって示されているのか、それとも、単なる「終わりのない危険な価格設定のゲーム」なのかを正直に評価するよう人々に呼びかけている。
「もしあなたはビットコインが最終的にデジタル通貨として広く受け入れられると信じているのであれば、ビットコインの現在の価格を正当化することができるかもしれません。
しかし、ビットコインは広く受け入れられないだろうと考えるのであれば、あなたは自分自身に正直になり、ビットコインは儲けるためだけの危険な価格のゲームであることを認識して下さい。
」
■ビットコインはプライバシーと中央集権化を妥協しなければならない
Damodaran教授は、ビットコインや他の暗号通貨が法定通貨と争う可能性はないと信じているが、法定通貨とデジタル通貨の競争に関して強気な見通しを持っている。
「私は、割合早くに、売買の取引手段として法定通貨と競合する1つ以上のデジタル通貨が現れると考えていますが、現在存在する暗号通貨の中でどの通貨が競争を勝ち抜くかを判断することは難しいです。
しかし、もし暗号通貨の支持者と開発者が暗号通貨を投機的な資産としてではなく、交換媒介物として考え始めれば、どの暗号通貨が競争を勝ち抜くか判断できるかもしれません。
それが起こらなければ、私たちは新しいものを待たなければならず、市場における最も永続的なステージはブロックチェーンである可能性があり、暗号通貨自体ではないかもしれません。
」
Damodaran氏がビットコインが成功するかどうか疑問に思う理由の1つは、ビットコインがプライバシーと分権化(decentralization)にコミットしすぎているためである。
ビットコインや他のデジタル通貨が多くの人に受け入れられるには、ユーザーのプライバシーと中央集権化(centralization)に関して妥協する必要があると彼は主張する。
「私たちは信頼が希少資源である時代に生きています。
私は暗号通貨の成長は、この信頼の喪失が原因であると主張しました。
しかし、通貨として効果的であるためには、あなたは何かを信頼し、おそらくプライバシーと中央集権の妥協を受け入れる必要がある(少なくとも通貨のいくつかの次元では)。
」
暗号通貨のコミュニティの多くは間違いなくそれが悪魔の交渉だと考えている。
(出典:CryptoCoinsNews)
■エムトレの視点
Damodaran氏の主張に同意する。
まさに、ビットコインもしくはその他の暗号通貨が法定通貨の代替物となり得るためには、プライバシーと中央集権化に関して“ある程度の”妥協は必要となるであろう。
ビットコインの最大のメリットと言ってもいい部分の崩壊はまた、ビットコインそのものの分裂にも繋がりかねないため結果として、妥協は起こらないだろう。
その結果、実質ゼロ価値のマネーゲームないしはババ引きで終わる可能性すらある。
他方、ビットコイン及びブロックチェーンが示した可能性は、法定通貨や経済の新たな方向性を示したといっても過言ではなく、どのブロックチェーンなのかはともかくとして、ブロックチェーン自体は生き残るのではないだろうか。
【ニュース提供・エムトレ】