[ニューヨーク 20日 ロイター] - 米大手銀行はトレーディング収入が、ここ2年の新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)中の高水準とパンデミック前の水準との間の「ニューノーマル」に落ち着くと予想している。
パンデミックに対応して米連邦準備理事会(FRB)が資本市場にキャッシュを大量に注入したため、市場の流動性はかつてないほど潤沢になり、取引が活発化した。しかし、市場の正常化とFRBの量的緩和縮小に伴い、昨年第4・四半期の米大手銀行のトレーディング収入は減少した。
ゴールドマン・サックス、JPモルガン・チェース、モルガン・スタンレーといった大規模なトレーディング部門を持つ銀行は、市場が不安定な局面で最も恩恵を受け、各行のトレーディング部門は2007─09年の金融危機以降で最高のパフォーマンスをあげた。
ただここにきて、好ましい市場環境は永遠には続かないと認識させられている。
ゴールドマンが18日発表した第4・四半期決算は、トレーディング部門の減収などを背景に減益だった。
デービッド・ソロモン最高経営責任者(CEO)は決算発表後のアナリスト会議で「過去2年の状況は誰も予測できなかった」とし、特に昨年はビジネスに追い風が吹いたと振り返ったものの、「このペースがいつまでも続く永続的な環境とはみていない」と述べた。22年については、取引はそこそこ活発で、市場がどのような環境でもトレーディング部門は良い業績を達成できるとの見方を示した。
モルガン・スタンレーのシャロン・イェシャヤ最高財務責任者(CFO)は、19日のインタビューで、取引量がパンデミック前の水準に落ちることはないとの見方を示し「各国中央銀行の政策に違いがあると認識した。政策の違いは市場を一層活発にするはずだ」と述べた。
19日発表した第4・四半期決算では利益が市場予想を上回った。
イェシャヤ氏は「われわれはこれまで市場シェアを獲得できてきた。そのおかげで22年に入っても非常に良い位置に立っている」と語った。
JPモルガンも同様な見方。14日発表した第4・四半期決算は、トレーディング収入が落ち込み減益となったが、ジェレミー・バーナム最高財務責任者(CFO)はアナリストに「22年の市場と投資銀行業務は、20年や21年に比べると多少正常化するが、その後緩やかな成長を回復するというのが、当行の中央予測だ」と述べた。
取引量は22年も高水準を保つと予想し「利上げサイクルの始まりは、特に債券取引部門の収入にとって非常に健全とも言える」と語った。
アナリストも、市場取引に関する全体的な環境は過去2年ほどではないが引き続き良好と予想する。
シチズンズ・ファイナンシャル・グループのJMP証券アナリスト、デビン・ライアン氏は「20年や21年からのバーは非常に高い。おそらくある程度正常化するだろう。業界は正常化と呼べる状態を見極めようとしている」と述べた。
ゴールドマン、JPモルガン、モルガン・スタンレー3行の幹部は、欧州勢の不振を踏まえ、パンデミック中に獲得した市場シェア維持に自信を示している。
とりわけゴールドマンは大口の企業顧客に代わって取引することに注力。ソロモンCEOは「広範な顧客基盤を考えるとシェアを拡大する余地はある。市場が提供する機会からより持続可能なシェアを確保していく」と述べた。
モルガン・スタンレーのイェシャヤCFOも、市場シェアを維持ないし拡大できるとの見方を示した。
アナリストの間では、トレーディング事業の見通しは、予想されているより明るいとの見方が大勢。
ニューバーガー・バーマンのシニア調査アナリストのクシュ・ゴエル氏は「トレーディングの見通しはもっと楽観的だ。19年に戻ることはない」と述べた。