[ブリュッセル 9日 ロイター] - 欧州連合(EU)は9日に出した報告書で、国家を後ろ盾とするサイバー攻撃が拡大するリスクについて警告した。ただ、中国や同国の通信機器メーカー、華為技術(ファーウェイ)を脅威として特定することはしなかった。
米国はEUを含む同盟国に、安全保障上の理由で次世代高速通信「5G」からファーウェイ製品を排除するよう呼びかけてきたが、報告書はそれを無視した格好。
報告書は5G通信網に対するサイバーセキュリティー上のリスクに関するもので、これを作成した欧州委員会とEU議長国を現在務めるフィンランドは声明で「さまざまな当事者の関与が見込まれるなかで、EU以外の諸国あるいは国の支援を受けている主体が最も重大性が高く、5G網を標的にする可能性が最も高いと考えられている」と指摘した。
「供給業者が手助けして行われる攻撃のリスクが高まっていることを踏まえると、供給業者がEU以外の国家の干渉を受ける可能性を含め、個々の供給業者のリスク特性が特に重要になる」とした。
ファーウェイは報告書を受け、欧州の協力相手と5G通信網のセキュリティーにともに取り組む用意があると表明。同社は、自社製品が中国政府の情報収集に使われているとの見方を一貫して否定してきた。
ファーウェイの広報担当は報告書について、「5G時代のサイバーセキュリティーや安全な通信網の提供における共通のアプローチを見いだすのに重要な一歩」と評価。「EUが証拠資料に基づく手法を取るという約束を守り、特定の国家や当事者を標的にするのではなく、徹底的なリスク分析を行ったことにわれわれは満足している」と語った。
EU加盟国はファーウェイへの対応についてこれまで異なる見解を示してきた。英国は通信網の主要部分から同社を排除する方向に傾いているが、ドイツはどの供給業者も信用に値すると自ら証明すべきとし、公平に対応する考えを示してきた。
EUの報告書は、通信機器メーカーについて1社に過度に依存すべきでないと強調。「単一の供給業者への強い依存によって、企業破産などの理由による供給途絶への影響を受けやすくなる」と指摘した。