[東京 23日 ロイター] - 理化学研究所(理研)と富士通 (T:6702)は22日、開発・整備を進めているスーパーコンピューター「富岳」が、世界のスパコンランキングの4部門すべてで1位になったと発表した。全部門で同時に1位になるのは世界初。人工知能(AI)などを活用して経済発展と社会的課題の解決を図る「ソサエティー5.0」の情報基盤技術として期待される。
高性能計算技術(HPC、ハイパフォーマンス・コンピューティング)に関する国際会議「ISC2020」で、スパコン性能ランキングの「TOP500」のほか、産業向けアプリケーションや人工知能での計算性能、大規模グラフ解析の性能のランキングで、いずれも2位に大差をつけて1位になった。
TOP500で日本のスパコンが1位を獲得するのは、2011年11月の「京」以来、8年半ぶり。過去数年は米中勢が1位を争ってきたが、今回、富岳は2位の米「サミット」に約2.8倍の性能差をつけた。産業向けアプリケーションでは同じく2位の米サミットに対し約4.6倍の性能差だった。グラフ解析では京に比べ約2倍の性能向上をし、2位の中国製スパコンとは約3倍の性能差となった。
理研の計算科学研究センター松岡聡センター長は「すべての主要なスパコンの諸元で、突出して世界最高性能であることが示せた」とし、新型コロナウイルスなどの社会問題の解決につながるとの見方を示した。富士通の新庄直樹理事は「ソサエティー5.0の実現を担うスーパーコンピューターとして広く活用されることを期待する」とコメントした。CPUの一部では、英アームも協力している。
富岳は京の後継機で、構想から10年、プロジェクト開始から6年でほぼ完成。21年度の共用開始を目指している。すでに今年4月から一部で、人の口から飛まつが飛散する様子の分析や創薬などのコロナ関連研究で用いられている。
(平田紀之) OLJPTEC Reuters Japan Online Report Technology News 20200622T155149+0000