[10日 ロイター] - 米マイクロソフト (O:MSFT)は中国・北京字節跳動科技(バイトダンス)傘下の短編動画投稿アプリ「TikTok(ティックトック)」の一部事業買収を検討しているが、技術的な面で複雑な問題が生じる可能性があると、関係者が明らかにした。
トランプ米大統領は3日、ティックトックについて、米事業の買収合意が成立しなければ9月15日付で運営を禁止すると表明した。
だが、一部の関係者によると、トランプ大統領や議員らが想定しているような米事業の完全分離には1年以上かかる可能性があるという。
関係者は、ティックトックは機能的にも技術的にもバイトダンスが運営する中国版の短編動画投稿アプリ「抖音」と類似しており、技術的な資源を同アプリなどと共有していると指摘。バイトダンスは米政府の監視下で数カ月前から技術的な分離に取り組み始めており、ティックトックのデザインや操作性に関するコードは抖音から分離されたものの、データ保存やコンテンツに関するアルゴリズムなど基本的な機能を提供するサーバーコードについては、バイトダンスの他のアプリと部分的に共有されているとした。
リバー・ループ・セキュリティーのサイバーセキュリティー専門家、ライアン・スピアーズ氏は、ティックトックのサービスを中断させることなくコードの見直し・修正などを行うためには、マイクロソフトはバイトダンスのコードに依存する必要があると述べた。
対米外国投資委員会(CFIUS)の責任者を務めた元財務副次官補のアイメン・ミール氏は、米事業売却後も技術面や運用面で中国企業に依存し続けることをCFIUSは容認しないだろうと語った。
マイクロソフトはティックトックの北米、オーストラリア、ニュージーランド事業の買収を目指しているが、バイトダンスから分離するだけでなく、他の地域からも分離する必要がある。加えて、関連するデータ量が多いことが技術的な問題につながっている。
マイクロソフトの元最高情報責任者(CIO)、ジム・デュボア氏は「最大の問題はユーザーデータの分離」とし、バイトダンスとマイクロソフトとの間でデータのハードディスクを移動させる必要があるかもしれないと述べた。
ティックトックによると、ユーザーデータは米国に保存され、バックアップはシンガポールにあるという。
ベナブル法律事務所の弁護士、カレン・C・ハーマン氏は、「分離した事業のニーズを把握したり、どの知的財産などの資産を独占的に活用するか、他事業と共有するかなどを確認したりするだけでも数カ月かかる」とし、期限内の買収完了は非常に困難と語った。