[東京 23日 ロイター] - 横浜市に住む30歳のフィリピン人女性が、預けたパスポートの返還を拒否されているとして雇用者を訴えた裁判で、弁護士と支援団体が23日記者会見し、外国人労働者を雇用する場合に、パスポートを取り上げて返還しないことを禁止する法律の制定が必要だと訴えた。
指宿昭一弁護士は日本外国特派員協会の会見で「パスポートを預かって、そのことによって労働を強制することは強制労働にあたり、日本の法律でも許されない」と指摘した。同氏によると、外国人技能実習生については、2017年に法律が制定され、パスポートを預かることが禁止されているが、他の外国人労働者に対しては取り上げが禁止されておらず、同様なケースについてよく相談を受けるという。
女性は2017年4月に来日して日本語学校に入学、2年後に卒業し在留資格更新について相談するため「アドバンスコンサル行政書士事務所」(横浜市)を訪れ、2019年5月から同事務所で翻訳・通訳業務を行うことになった。
その際、パスポートなどの管理に関する契約書に署名して事務所にパスポートなどを預けた。契約書の内容を完全には理解できなかったという。
同年7月に女性の在留資格が変更され、パスポートの返還を求めたが、同事務所はこれを拒否した。「返したら逃げるだろう」と言われたという。
このため女性は今月16日、アドバンスコンサル行政書士事務所を相手取り、パスポートの返還や未払い賃金の支払いを求めて横浜地裁に提訴した。
若者の労働問題に取り組むNPO法人POSSE(ポッセ)の岩橋誠氏は会見で、こうした事案は決して珍しくないが、多くの場合表面化しないため、どの程度広がっているかを把握するのは難しい、と指摘した。
アドバンスコンサル行政書士事務所はロイターの取材に対し、コメントを拒否した。
フィリピン人女性は会見で公表されたビデオで、「私が立ち上がったのは、自分のためだけではなく、同じような状況にある外国人労働者が、正しいことのために恐れず戦うことができるようにとの思いから」と語った。
指宿弁護士は、外国人労働者のパスポートを保管するべきでないという厚労省のガイドラインを法律に格上げし、罰則をつけるべきだと主張している。
(村上さくら) OLJPWORLD Reuters Japan Online Report World News 20200123T082209+0000