[ワシントン 23日 ロイター] - 米議会上院でのトランプ大統領の弾劾裁判は23日、検察官役を務める下院民主党による2日目の冒頭陳述を行い、議員らは、大統領選の同党の有力候補、バイデン氏が副大統領在任中にウクライナに不適切な行動を取ったとのトランプ氏の以前からの主張に理路整然と反論を試みた。
民主党議員らは、バイデン氏が政治腐敗への懸念を理由に、ウクライナ政府にビクトール・ショーキン検事総長(当時)を解任するよう圧力をかけたのは、米政府の方針に沿った措置だったと主張。
トランプ氏側はバイデン氏が、息子ハンター・バイデン氏が取締役を務めていたウクライナの天然ガス会社ブリスマ社への調査を阻止するため、ショーキン氏の解任に動いたと主張してきた。
民主党側は、この主張を裏付ける根拠はないと強調。トランプ氏がウクライナ政府にバイデン氏の不正疑惑を捜査するよう圧力をかけた本当の理由は、今年の大統領選でバイデン氏と対決するのを恐れていたからだと強調した。
同党のシルビア・ガルシア下院議員は、トランプ氏が「自らの政治的メリットのためだけに」捜査を要求したと論じた。
同議員によると、バイデン氏が2019年の早い段階に大統領選への出馬を表明するまでは、トランプ氏がウクライナに汚職捜査を要求することはなく、同国への軍事支援も支持していた。
トランプ氏がウクライナにバイデン親子の捜査を要求する数カ月前の世論調査では、バイデン氏がトランプ氏と大統領選で戦うことになれば、バイデン氏が勝つとの結果が出ていたと指摘し、「これに気付かなかったはずはない」と述べた。
トランプ氏は23日のツイッターへの投稿で、弾劾裁判の手続きは「不公正で腐敗している」と批判した。
<大統領は弾劾に値する>
下院司法委員会のナドラー委員長は共和党のリンゼー・グラム上院議員の過去の弾劾審議での発言などを引き合いに出しトランプ大統領の行為は弾劾に値すると主張した。
ナドラー委員長はグラム議員が民主党のクリントン元大統領に対する1999年の弾劾審議で行った発言のビデオを議場で再生。ビデオでグラム議員は、問題の行動が法律上の犯罪行為でなかったとしても大統領を弾劾することはできると主張している。
ナドラー氏はこのほか、トランプ氏の弁護団の一員のアラン・ダーショウィッツ氏の1998年の発言を収録したビデオも再生。ビデオの中でダーショウィッツ氏は「権力乱用」は弾劾の根拠になるとの見解を示している。
ナドラー氏は「弾劾は犯罪行為に対する処罰ではない」とし、「弾劾は政治システムに対する脅威に対応するために存在しており、対象は政治的な当局者のみで、禁錮刑や罰金を課すのではなく、政治権力を剥奪することで対応される」と指摘。「トランプ大統領の行為は米国第一主義ではない。ドナルド・トランプ第一主義だ」と批判した。
<トランプ氏弁護団は25日にも反論開始へ>
この日の民主党による冒頭陳述は予定される3日間のうち2日目。その後、トランプ氏の弁護団は25日にも反論を開始する可能性がある。
共和党議員の一部はこれまで、ボルトン前米大統領補佐官などによる証言を認める代わりに、バイデン親子の両方あるいはどちらかの証言を来週に開くことを提案したが、民主党側は拒否した。
弾劾裁判に対する国民の関心が既に薄れつつある兆しもある。冒頭陳述の2日目で上院の傍聴席には空席が見られ、ニールセンの視聴率調査によると、冒頭陳述1日目の22日にテレビ中継を視聴したのは約890万人と、21日の審理初日の1100万人から大幅に減った。