[香港 27日 ロイター] - 香港立法会(議会)が中国国歌の侮辱を禁じる国歌条例案の審議を進めようとしている。市民らの抗議デモも活発化している。
国歌条例案の争点と今後に予想される展開を整理した。
<国歌条例案とは何か>
条例案は立法会で成立すれば、中国国歌の香港での扱いや歌い方、演奏の仕方を司ることになる。「侮辱」する者は最大禁錮3年か、最大5万香港ドル(約70万円)の罰金、もしくはその両方が科される恐れがある。
条例案は「すべての個人と組織」が中国国歌を尊重し、その威厳を保つべきで、演奏したり歌ったりするのは「適切な時に」行われるべきだと規定する。小中学生が中国国歌を歌うのを教わるように命じてもいる。その際には中国国歌の歴史や歌う際の礼儀作法も学ぶとされている。
<なぜ物議を醸すのか>
香港で昨年繰り広げられた反政府抗議活動は、香港が中国本土にさらに一体化されていくことに抵抗するのを第一の狙いとしていた。中国国歌は、サッカーの試合といった幾つかのイベントの場でブーイングを受けていた。
抗議活動参加者や民主派政治家は国歌条例案を、香港に保障されている自治に中国政府が介入を強めようとしている最新の動きと見なしている。
1997年に英国から中国に主権が返還された「香港返還」の際、当時の中国国家主席は「一国二制度と高度の自治」を確約した。これが香港の中核的な自由と市民の生活を守ることになっている。中国政府は一国二制度を尊重していると主張する。
言論と報道、団体活動、示威行動の自由は、憲法に当たる基本法に明文化されている。条例反対派によれば、こうした自由が今、脅かされている。
もっとテクニカルな観点では、香港の一部の弁護士らは、条例案の中に中国共産党のイデオロギー的な強い願望が反映されているという点で、極めて異例だと懸念する。香港でそうした党のイデオロギーを実現させるのは困難であるにもかかわらずだ。
ある上級判事は最近ロイターに対し、個人的な意見として、「まるで北京で書かれたかのように見える初めての香港の条例だ。これをもとに判決を下すのは悪夢だろう」と話した。
香港の弁護士団体は、こうした法令の必要は認めるとしたが、国歌条例案の一部は香港の慣習法体系の「良き伝統」から逸脱していると指摘。香港の法体系と、政治的イデオロギーと指導的概念を含む中国本土の社会主義的法体系とは、根源的な違いがあるとした。
<これまでの経緯は>
中国当局と香港の親中派は何年も、極めて自由闊達(かったつ)で騒乱も多い香港社会に中国の愛国的プライドの感覚を植え付けたいと願ってきた。
香港政府は、国歌条例案には香港自身の法体系や、置かれた状況が反映されていると主張する。香港政府の報道担当者は今年、条例案の主要な精神は「尊重」であって、香港社会の一部メンバーが訴えるような「言論の自由の規制」とは絶対に無関係であり、「悪法」では断じてないと述べている。
<今後はどうなるか>
さらなる抗議活動と立法会審議の混乱が広く予想されている。
香港政府は中国政府から圧力をかけられており、7月に立法会の4年間の現任期が切れる前に最優先で成立させるとしている。審議は長く混迷し泥沼状態になっていたが、ついに6月初めにも採決にかけられる可能性がある。
現任期中に採決できなければ、香港政府は今後、条例案を次の任期で再提出するか、あるいは発布措置に切り替えて強制的に施行するかを決断しなければならないだろう。条例の発布は極めて異例で、さらなる抗議活動が噴出しかねない。
市民と協議し直し、代案を作る道もある。
長期的には、条例案が成立して施行された場合は、内容や成立手続きが法廷闘争に持ち込まれ、違憲かどうかが争われる可能性もある。
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