[ワシントン 1日 ロイター] - トランプ米大統領は、SNS(交流サイト)への投稿に関する運営企業の決定を規制する考えを示したが、実際に規制の作成を担う連邦通信委員会(FCC)は過去にインターネット企業の監督はできないとの立場を示しており、トランプ氏の意向を受け入れるかどうかは不明だ。
トランプ氏は前週、ユーザーの投稿内容に関してソーシャルメディア企業の法的責任を免除する米通信品位法230条について、「撤廃か変更」する必要があるとの考えを表明。
230条の規定を明確にするためのルール作りをFCCに要請するよう商務省に指示する内容の大統領令に署名した。
FCCのパイ委員長は声明で、トランプ氏の提案への支持は示さず、「この議論は重要」で、FCCは「ルール作りのいかなる要請も慎重に検討する」と述べるにとどめた。
パイ氏は2018年8月にあるフォーラムで、ソーシャルメディア企業が言論の自由を守ることを望むが、FCCがフェイスブック (O:FB)やアルファベット (O:GOOGL)傘下グーグル、ツイッター (N:TWTR)を含むプラットフォーム運営企業を規制するのが適切だとは考えていないと表明。「言論の自由という観点で運営企業が規制されることはない」とし、「これらのプラットフォームを規制するのは政府の役割ではない。われわれにその権限はない」と語った。
FCCの共和党系委員、マイク・オライリー氏はツイッターへの投稿で、「保守派の私としては、リベラルなIT最大手が言論を抑圧していることに困惑している。一方で、圧倒的な重要性がある憲法修正第1条は断固として守りたい」と述べた。憲法修正第1条は言論の自由を定める。
FCCの元共和党系委員ロバート・マクダウェル氏はツイッターへの投稿で、230条の見直しは「政治的なプラットフォーム上の言論管理に基づいている。つまり、今回の政府の『介入』は流動的な部分が多くある。実現するとは思えない」とした。
<見直しは長期化も>
もう1つの問題は230条の見直しに要する時間だ。FCCは少なくとも数カ月かけて見直しを行い、規制案を作成する前に意見を公募する公算が大きい。新たなルールの最終決定までには1年かそれ以上かかる可能性があり、11月の大統領選のかなり後になる。
1996年に成立した米通信品位法230条の下で、インターネット企業はユーザーが違法なコンテンツを投稿しても法的責任を問われず、一方で合法的であっても、不適切と判断した投稿を削除できる。
企業が「善意」による判断で投稿を削除できるとの規定について、トランプ大統領は「善意」を明確化する規制を「直ちに」作成するようFCCに求めている。また、議会に対しては、230条の法的責任免除の規定を無効にするよう求めている。
FCCの共和党系委員、ブレンダン・カー氏は、FCCが企業の「善意ある行動」の意味を明確化し、許容可能な行動と不適切な行動の線引きをするために意見を公募することになると予想。「最終的な決定が下される時点で、明確な線引きができるというのが私の望みであり期待だ」と述べた。
ツイッターは大統領令について、「画期的な法律に対する保守的で政治色の強いアプローチだ」とし、230条の効力を弱めれば「オンライン上の言論の未来とインターネットの自由が脅かされる」と指摘している。
トランプ氏はかねてから、ツイッターを含むSNSが保守派の意見を封じてきたと不満を表明している。FCCの民主党の委員であるジェシカ・ローゼンウォーセル氏は、「大統領の言論の監督を(FCCに)担わせても問題は解決しない。政府が憲法修正第1条(の権利)をはっきりと主張するべき時がきた」と訴えた。
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