[ストックホルム/ベルリン 5日 ロイター] - スウェーデンのカロリンスカ研究所は5日、2020年ノーベル医学生理学賞の受賞者に、C型肝炎ウイルスを発見した米国人2人、英国人1人の研究者3人が選ばれたと発表した。数十年におよぶ研究は、感染拡大の抑制や感染者を治療する抗ウイルス薬開発に役立った。
受賞者は米国立衛生研究所(NIH)のハービー・アルター氏と米ロックフェラー大学のチャールズ・ライス氏、カナダ・アルバータ大の英国人マイケル・ホートン氏。3人の研究結果により、世界保健機関(WHO)が2030年までの目標とするC型肝炎ウイルス根絶を達成する可能性が出てきた。
3人の研究者は、血液によって感染するウイルスがC型肝炎を起こすことを発見・証明。賞金1千万クローナ(110万ドル)を等分する。
C型肝炎の年間の感染者は7000万人を超える。死者は毎年約40万人。
今年のノーベル医学生理学賞の指名期間は新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)より前だった。受賞者を選定するカロリンスカ研究所で選考委員会を率いるトーマス・パールマン氏は、新たな疾患との闘いに勝つ第一歩はウイルスの発見が重要であることを認識した選定だと説明した。
研究は1960年代にさかのぼる。NIH勤務のアルター氏は、肝炎が輸血によって感染しうることを発見した。それまで知られていたA型やB型が原因でないことを確認した。
1980年代半ばにバイオ医薬品会社カイロンで研究チームを率いていたホートン氏が、感染したチンパンジーの血液を利用してウイルスのクローンを作成。フラビウイルス属のこのウイルスは後にC型肝炎ウイルスと名付けられた。ウイルスを特定したことにより血液バンクにある血液を検査し感染を大幅に抑えることができるようになった。C型肝炎ウイルスは、肝硬変や肝臓がんを引き起こす。
その後、当時ワシントン大学セントルイス校にいたライス氏が遺伝子工学によってC型肝炎ウイルスを複製。チンパンジーの肝臓に注入すると、人の肝炎患者と同様の症状が起きることを確認した。
ノーベル財団は、12月の祝賀式の中心となる恒例の晩餐会を中止し、メダルと賞状の授与をテレビで放送することとした。