[ワシントン 13日 ロイター] - トランプ米大統領が連邦最高裁判所判事に指名したエイミー・バレット氏の公聴会は2日目の13日、質疑応答が行われた。民主党からの相次ぐ質問に対してバレット氏は落ち着いて対応し、人工妊娠中絶や性的マイノリティー(LGBT)、銃規制といった国民の関心の高い問題について、自身の見解を明確に述べることを控えた。
この日の公聴会は11時間にわたり行われた。バレット氏は11月10日に予定されている医療保険制度改革法(オバマケア)の存続をめぐる審理に参加するかどうかや、11月3日の大統領選に関連した案件に関与するかどうかについても明言を避けた。
民主党はバレット氏がオバマケアに否定的な判断を下す恐れがあるとして、承認されてもバレット氏は審理を辞退すべきだと主張している。さらに11月の大統領選の結果をめぐる案件にも、関与すべきでないとしている。
バレット氏は「オバマケアを廃止するという使命のために、ここにいるのではない。法を適用し、法の支配を忠実に守るという使命のためにここにいるのだ」と語った。
民主党副大統領候補のカマラ・ハリス議員は、新型コロナウイルスのパンデミック下でオバマケアが廃止されることを米国民は恐れていると指摘。「共和党は出来るだけ早期の承認に躍起になっている。オバマケア廃止に向け11月10日の審理までにトランプ派判事があと1名必要だからだ」と批判した。
トランプ氏は共和党が過半数を握る上院で、大統領選前にバレット氏を承認するよう求めている。また、選挙結果は法廷闘争に持ち込まれ、最高裁の判断を仰ぐことになるとの見方も示している。
バレット氏は、選挙結果に関連した案件などにどのような判断を下すかという点で、ホワイトハウスの誰からも圧力を受けていないと説明し、政治的圧力から司法の独立を守るということに100%コミットしていると強調した。
<人工妊娠中絶や同性婚問題>
妊娠中絶に憲法上の権利を認めた1973年の「ロー対ウェイド事件」の最高裁判決について質問されると、判決を覆すかどうかの判断では通常の要因を考慮すると述べた。
ただ、ロー対ウェイド事件の最高裁判決は、決して覆すことができない判決例(super-precedent)ではないことを示唆した。「ロー対ウェイド事件について多くの質問に答えており、そのことは、ロー対ウェイド事件が、super-precedentというカテゴリーに入らないことを示していると思う。様々な分野の学者は、それは判決が撤回されるべきだという意味にはならないと指摘するが、全ての人が受け入れた事例ではない、ということも記述的には意味している」と述べた。
上院司法委員会の民主党トップ、ダイアン・ファインスタイン委員は、ロー対ウェイド事件の判決は誤っており、覆されるべきだと主張した保守派のアントニン・スカリア元最高裁判事に同意するかと質問。バレット氏が明言を避けると、ファインスタインは「率直な返答を得られず残念だ」と返した。
同性婚を認めた2015年の「オーバーグフェル対ホッジス裁判」に反対の立場を取るスカリア氏に同意するかという質問も出たが「これまでに性的嗜好に基づき人を差別したことは決してないし、これからもない」と答えた。
大統領選で敗北した場合、トランプ氏は平和的な政権移行を確実に行うべきかとの質問に対しては「この問題を巡っては現在、政治的議論が繰り広げられており、判事として関与したり見解を述べることを望まない」と答えた。
再びコメントを求められると「共和制の開始以来、米国の美点の1つとなっていることに平和的な政権移行がある」と語った。
上院議員による質疑応答は14日も行われる。
*内容を追加しました。