[シドニー 1日 ロイター] - オーストラリア準備銀行(RBA、中央銀行)が発表した声明は以下の通り。
本日開催された理事会において、10ベーシスポイント(bp)のキャッシュレート、3年物国債利回りの目標、ターム資金調達ファシリティー(TFF)と国債購入プログラムの上限など、現行の政策を維持することを決定した。
世界的には、このところニュースが錯綜している。欧米では新型コロナウイルスの陽性率が急上昇し、景気回復の勢いが失われている。その一方で、ワクチンに関しては明るいニュースがあり、これが世界経済の回復を支えている。また、世界経済の回復は、財政政策と金融政策の継続的な支援に依存している。ほとんどの国で労働時間は新型コロナのパンデミック(大流行)前の水準を著しく下回ったままであり、インフレ率は低く、中銀の目標を下回っている。
金融情勢は世界的に緩和的な状態が続いており、債券利回りは歴史的な低水準に近くなっている。ワクチンに関する前向きなニュースは株式市場を押し上げ、リスクプレミアムを低下させ、一部の商品価格のさらなる上昇を支えている。リスク選好度の改善は米ドル安と豪ドル高にも関連している。
オーストラリアでは景気回復が進行中であり、最近のデータはおおむね予想を上回っている。これは良いニュースだが、回復はまだ不均一で長引くと予想されており、かなりの政策支援に依存していることに変わりない。豪中銀の基本シナリオでは、国内総生産(GDP)が2019年末の水準に達するのは2021年末になるとしている。基本シナリオでは、GDPは来年5%前後、22年は4%の成長が見込まれている。
10月の雇用の伸びは再び好調だったが、職探しを再開した人が増えたことで失業率は7%に上昇した。企業がパンデミックに対応して事業を再編し、より多くの人が労働市場に復帰する中、失業率のさらなる上昇がなお予想されている。失業率は来年には低下するとみられるが緩やかなペースとなり、2022年末時点では6%程度にとどまると見込まれる。
高い失業率と過剰生産能力の期間が長期化することで、今後数年間は賃金と物価の上昇は控えめになると予想されている。第3・四半期の労働賃金指数はわずか0.1%の上昇で、前年同期比では1.4%の上昇となった。基調インフレ率は2021年に1%、22年は1.5%になる見込みだ。
理事会は高失業率に対処することが重要な国家的優先事項と考えている。ここ数カ月間の政策決定はこれに寄与するだろう。これらの決定は、雇用と経済成長を支援するために豪政府が行ってきた重要な措置を補完するものだ。
豪中銀の政策対応はイールドカーブ全体で金利を引き下げた。この結果、1)借り手の資金調達コストの低下、2)為替レートの低下、3)資産価格やバランスシートを下支え、によって景気回復を後押しする。
またTFFは企業への信用供給を支援している。現在までに、公認預金受入金融機関(ADI)向けに840億ドルが提供され、さらに 1050億ドルが利用可能だ。豪中銀は先月、債券購入プログラムの下で190億ドルの国債を購入したほか、3年物国債の利回り目標の達成に向けてさらに50億ドルの国債を購入した。今年に入ってから、中銀のバランスシートは約1300億ドル拡大した。
雇用とインフレの見通しを考えると、金融・財政支援はしばらくの間必要となる。理事会はインフレ率が目標の2─3%の範囲内に持続的に収まるまでは、キャッシュレートを引き上げない。これを実現するためには、賃金の伸びが現在よりも大幅に向上しなければならない。そのためには、雇用が大幅に増加し、労働市場が引き締まった状態に戻ることが必要となる。
今後の見通しを踏まえると、少なくとも3年間はキャッシュレートを引き上げることはないと考えている。債券購入プログラムについては、特に雇用とインフレの見通しの変化を考慮して、規模に関する検討を続ける。理事会は必要に応じて、より多くのことを行う準備ができている。