[香港 8日 ロイター] - 香港警察が民主派によるデモに関連して複数の人物の口座を凍結する動きに乗り出す中、銀行筋や弁護士らによると、香港住民の一部は預金の海外移転を加速している。
各行は先週、ベテラン民主活動家の許智峯(テッド・フイ)氏と同氏の家族の口座を凍結するよう警察から求められた。7日には地元教会の口座がブロックされた。いずれもマネーロンダリング(資金洗浄)容疑だ。
これらはHSBCなどにある口座が対象になっており、HSBCは8日、教会の口座に関する質問に対し、特定の口座に関するコメントはしないとした。
ボランティアがデモ隊に「人道的支援」を行った好隣舎北区教会は、フェイスブックで、HSBCの口座が「政治的報復行為」で凍結されたと訴えた。
複数の銀行筋や弁護士は、警察当局の動きは限定的ではあるものの香港の反政府派に対して資産凍結措置が取られる可能性があるとの懸念を引き起こしている、と説明。敏感な問題であることを理由にいずれも匿名で明らかにした。
リテールプランニング業界で働くジミー・チュン氏(40)は、国家安全法が通過した時期にあたる6月にスイスで銀行口座を開設した。7月までに数千ドルの預金を移転し、さらなる海外移転を検討している。
同氏は香港で政治活動と何らつながりを持たないものの、民主派を巡る最近の銀行口座凍結について「これほど事態の展開が速くなるとは思わなかったため、さらなるコンティンジェンシー・プラン(不測の事態に備える緊急対応策)を練らなければならない」と述べた。
銀行筋2人は、昨年に海外口座を開設した顧客の一部について、資金移転を始めたことを明らかにした。このうち1人の銀行筋は「傍観者だった人々が今では行動を取り始めている。彼らは口座凍結がさらに広がる可能性を懸念している」と語った。
別の銀行筋によると、民主派デモに関与していない一部顧客が海外への資金移転を見据えて香港ドル資産を米ドルに換えているという。
富裕層への助言を行っているある弁護士は「資産を安全に置いておくのに最善の方法について尋ねられている」と明かす。
香港警察は7日、詐欺とマネーロンダリングの容疑に関連して、5口座(計320万ドル)を凍結するようある銀行に依頼したと表明。銀行名は明らかにしなかった。