[ワシントン 12日 ロイター] - 米議会下院民主党は13日にも、トランプ大統領が先週の暴徒による連邦議会議事堂乱入を事前にあおったとして、同氏の弾劾手続きを始めるかどうかの決議案を採決する。民主党議員らが11日明らかにした。
2度目となるトランプ氏の弾劾手続きについて基本事項をまとめた。
◎弾劾の機能
弾劾を巡っては、大統領の罷免を直接に指すものだという誤解がある。実際には弾劾という言葉は、下院が大統領を「重罪もしくは軽罪」で訴追することのみを指している。
下院435議席の単純過半数の賛成で「弾劾条項」と呼ばれる訴追決議案が承認されれば、手続きは上院での弾劾裁判へと移る。憲法では、大統領への有罪宣告と罷免には、上院の3分の2以上の賛成が必要と定められている。
◎トランプ氏の「重罪もしくは軽罪」とは
下院民主党は、6日に連邦議会議事堂で起きた「不法行為」をあおった罪でトランプ氏を弾劾訴追する計画。
6日はトランプ氏の支持者数千人もが議会を襲い、多くが議場にも乱入し、大統領選での民主党バイデン氏の勝利認定手続きを行っていた議員らが退避して隠れざるを得ない事態となった。米国の民主主義の象徴に対する、このぞっとするような事件により、5人が死亡した。
◎下院採決後の展開は
下院が大統領を弾劾訴追すると、手続きは上院での弾劾裁判へと移行する。
共和党のマコネル上院院内総務は上院が18日まで休会するため、裁判開始は早くて19日になる可能性があると述べている。マコネル氏は、ワシントン・ポスト紙が入手した8日付の同僚議員らへのメモで、それ以前に裁判を開始するには上院議員100人全員の賛成投票が必要との考えを示した。
民主党の上級スタッフが11日明らかにしたところでは、民主党のシューマー上院院内総務は、上院を早めに再開するために臨時権限の活用を模索している。臨時権限を使うにはマコネル氏の同意が必要になるだろう。
弾劾の専門家によると、上院は自由に独自のルールを設けることができ、望めば1日で弾劾裁判を行うことも可能だ。
ブラウン大の政治科学教授、コレイ・ブレットシュナイダー氏は「弾劾の特徴の1つは、適正手続きが義務付けられておらず、裁判所法廷の監視も受けないことだ」と説明した。
◎トランプ氏退任が決まっているのに弾劾裁判を行う意味は
弾劾はトランプ氏を罷免するとともに、将来的に再出馬する資格を無くすのに使うことができる。
連邦判事が関わった過去の2つの判例により、大統領が再登板する資格を奪うには、上院の単純過半数が賛成するだけで足りることが明確になっている。このため複数の法律専門家によると、今月内に上院多数派となる民主党が、トランプ氏が2024年大統領選に出馬する資格を奪うことには現実味がある。トランプ氏の内部協議に詳しい筋によると、同氏は周囲に24年大統領選への出馬を計画していると告げており、今年末までにそれを発表する可能性があるという。
◎過去に2度弾劾訴追された米大統領はいるか
いない。一方で、法律専門家らによると、議会が2度弾劾訴追することは明らかに合憲だ。
トランプ氏は19年12月、ウクライナ疑惑を巡る権力乱用と議会妨害で下院に弾劾訴追され、上院は20年2月の弾劾裁判でトランプ氏に無罪評決を下した。