[シドニー 24日 ロイター] - 中国の対話アプリ「微信(ウィーチャット)」のモリソン豪首相のアカウントが数カ月前から使用できなくなっていた問題で、このアカウントを中国のテック企業がに買い取っていたことが分かった。この企業は、オーストラリアのフォロワーを多数持つアカウントが欲しかったが、モリソン首相のものとは知らなかったと説明した。
自由党と労働党の豪二大政党は2019年以降、中国系豪州人に向けた情報発信でウィーチャットを活用してきた。このアカウントは19年に、中国本土に居住する中国人の名義で登録された。5月までに総選挙が予定される中、自由党は春節(旧正月)の大型連休中にモリソン氏の政策を公式アカウントで宣伝するつもりだった。
ところが数カ月前からアカウントを使用できなくなった。首相官邸はアカウントを再び利用可能にするようウィーチャットに繰り返し求めたが解決していなかったという。
アカウントは、今年1月から名前が「Australia China New Life」に変わり、所有者は福建省に拠点を置くFuzhou 985 Technologyとなった。
Fuzhou 985 Technologyの社員はロイターに、アカウントがモリソン首相に関連していたとは知らなかったと語った。アカウントの所有者変更は、福建省福州市に在住する中国人男性と行ったという。
社員は「このアカウントが多くのフォロワーを持っていたので、買い取ることにした」と述べた。この会社は、オーストラリアの中国系をターゲットとするアカウントを探していたという。いくら払ったかは明らかにしなかった。
ウィーチャットの親会社、騰訊控股(テンセント・ホールディングス)は24日、声明で「アカウントの所有権を巡る争いとみられる。問題のアカウントはもともと個人が登録し、その後、現在の所有者のテクノロジーサービス企業に移管された」と述べた。その上で、この問題は「当社のプラットフォーム規則に則り対処される」とし、さらに調査する方針を示した。
中国外務省の趙立堅報道官は24日の定例会見で「豪政治家のウィーチャットのアカウント問題は両者間の問題だ」と述べた。
モリソン首相の与党自由党のジェームズ・パターソン上院議員はメディアに対し、この問題は「検閲」と「海外からの干渉」の好例だと述べた。
一方、オーストラリア戦略政策研究所のシニアアナリスト、ファーガス・ライアン氏は、中国人の名前でモリソン首相のアカウントを登録するのは「リスクが高く、軽率だった」と指摘、ウィーチャットのルールに違反していた可能性もあるとした。