[クアラルンプール 24日 ロイター] - マレーシアの元副首相で野党連合指導者のアンワル・イブラヒム氏(75)は24日、宣誓を行い首相に就任した。単独で過半数を得た政党連合がなかった選挙後の政治危機は5日目で終息した。
しかしムヒディン元首相がアンワル氏に対し、議会で過半数の支持を得ていることを証明するよう求めれば、政局が再び不安定化する恐れがある。
19日の総選挙では、アンワル、ムヒディン両氏の陣営はとも過半数議席を獲得できなかった。このためアブドゥラ国王が複数の議員から話を聞いた上でアンワル氏を首相に任命した。
この30年でマハティール元首相の弟子、同性愛の罪で有罪判決を受けた受刑者、野党指導者を経たアンワル氏はついに首相に就いた。1990年代には副首相、2018年には正式な首相候補と、長年にわたって首相ポストに近づいていた経緯がある。
政治危機が解消されたことを受けて通貨リンギが急伸し、2週間ぶりの上げ幅を記録した。主要株価指数は3%上昇した。
アンワル氏が率いるのは進歩的な傾向を持つ多民族の政党連合「希望連盟(PH)」。19日投開票の下院総選挙(定数222人)では82議席と最多議席を獲得した。
30議席にとどまった現在の与党連合「国民戦線(BN)」は24日、イスラム保守派を含む「国民連盟(PN)」(73議席を獲得)率いるムヒディン氏の政権を支持しないと表明。一方で、アンワル氏には言及しなかった。
アンワル氏は、インフレ高進と成長鈍化に対処し、民族間の緊張を和らげる必要がある。最も喫緊の課題はまだ成立していない来年の予算だ。また、議会で多数派の支持を得るため、他政党連合の議員と合意事項を交渉しなければならない。
シンガポールのシンクタンク、ISEASユソフ・イシャク研究所の客員研究員ジェームズ・チャイ氏はアンワル氏について「政治が混乱し、景気低迷と新型コロナウイルス禍からの回復途上という歴史的に重要な局面で(首相に)指名された」と指摘。「対立する全派閥をまとめることができる人物と常にみなされてきた。分裂の時期に登場したのはまさにうってつけだ」と述べた