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博展 Research Memo(2):マーケティング支援を展開。デジタルマーケティングの強化にも取り組む

発行済 2017-12-19 15:01
更新済 2017-12-19 15:33
博展 Research Memo(2):マーケティング支援を展開。デジタルマーケティングの強化にも取り組む
2173
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■会社概要

1. 事業概要
博展 (T:2173)は、2017年3月期より、報告セグメントの区分を「リアルエクスペリエンス&コミュニケーション事業」と「デジタルエクスペリエンス&コミュニケーション事業」の2つに変更した。
ただ、これまでと同様、主力商材の「展示会出展」「イベントプロモーション」「商談会・プライベートショー」のほか、次世代の基幹商材へと育成を進めている「カンファレンス・セミナー」「商環境」「デジタル・コンテンツ&マーケティング」の6つの商材に分類している。
主力3商材が売上高全体の63.9%を占めており、そのうち「展示会出展」の依存度が28.7%と高い(2018年3月期上期実績)。
同社では、新規事業の拡大や、デジタル・テクノロジーとの融合により新たな価値を提供することによって成長を加速させる方針である。


主なサービスの概要は以下のとおりである。


(1) 展示会出展
展示会出展は、企画・デザインから制作・運営までをワンストップで提供し、出展企業のマーケティング課題に沿った製品・サービス体験の創造により、出展効果を最大限引き出すサポートを行う。
高いシェアを誇るが、チャレンジャー(下位企業や異業種競合)からの参入攻勢が厳しくなっているなかで、ここ数年、売上高は若干伸び悩んできた。
もっとも、足元では、営業体制の強化(営業活動量の増加)により、受注件数が増えてきているようだ 。


(2) イベントプロモーション
イベントプロモーションは、発表会や体験会などの製品プロモーション、ユーザーイベント、広報イベントといったリアルな場におけるプロモーションプランの設計から実行までをサポートしている。
加えて、SNSにおける拡散など、イベントとデジタルメディアをシームレスにつなぎ、ターゲットへ効果的にアピールするイベント集客のためのプロモーションを展開する。
スポーツブランドやゲーム会社などによるBtoC向けイベントが増える傾向にあるなかで、ワンストップ・ソリューションを生かした大型案件の受注などにより、売上高はここ数年で大きく伸びてきた。
自動車や化粧品など大手メーカーからの新たな指名受注も獲得できているようだ。
一方、損益面では、新たな分野へのチャレンジが外注原価率を高める要因になってきたが、外注管理体制の構築(協業パートナーとの連携強化等)などによりコストコントロールの精度も高まってきた。
主力の展示会出展がインフラ(展示会場等)による制約を受けやすいことに対して、イベントプロモーションは地方開催や屋外イベントも可能なことから拡大余地も大きい。
今後も東京オリンピック・パラリンピックの開催に向けて、売上機会は増えていくものと考えられる。


(3) 商談会・プライベートショー
商談会・プライベートショーは、特定の顧客ターゲットに対し、商談やビジネスマッチング、自社製品・ブランドのプロモーションを目的に開催され、より深い製品・ブランド体験や双方向コミュニケーションを可能にする戦略立案、クリエイティブ、事務局サポート、施工、運営をワンストップでプロデュースを行う。
場(機会)の提供だけでなく、顧客のビジネス成果に結び付ける踏み込んだ提案力で差別化を図っている。
「働き方改革」を背景として、IT業界向けのプライベートショーが盛んであるが、銀行など金融機関からのビジネスマッチング案件なども増えている。


(4) カンファレンス・セミナー
カンファレンス・セミナーは、最新の技術動向、ユーザー事例など情報提供を目的に開催され、様々なフェーズの来場者に合わせた課題発見やニーズ喚起を実現する戦略立案、会場選定、集客プロモーション、事務局サポート、施工、運営、アフターフォローまでサポートを行う。
最近では、外資系IT企業やソフトウェア企業等からの需要が増えている。


(5) 商環境
商環境は、企業が自社及び商品のブランド認知度向上や販促活動のために設置する常設空間(ショールーム、店舗など)について、物件選定からデザイン、設計、施工、監理までトータルにサポートを行う。
顧客のマーケティング目標達成に向けた「売り」につながる施設の生涯価値を生み出すソリューションを提供する。
最近では、期間限定のポップアップストアやフラッグシップストアなど、コマーシャルスペースとしての需要が増えている。


(6) デジタル・コンテンツ&マーケティング
マーケティング活動におけるデジタル・テクノロジーは、メディアやデータプラットフォーム、デジタル・コンテンツの分野において、費用対効果の可視化や双方向のコミュニケーションツールとしてリアルのイベントと連動・融合させることで、顧客のマーケティング活動に新しい価値を提供する。
連結子会社である(株)アイアクトや(株)スプラシア、タケロボ(株)との協業等を通じて、デジタル・テクノロジーを駆使したソリューション分野での差別化と業容拡大を目指す。


年間の顧客数(単体)は595社(2017年3月期実績)。
ここ数年、取引先数が減少傾向で推移してきたのは、経営資源に制約があるなかで、顧客のマーケティング・パートナーとして顧客内シェアの拡大(顧客単価の向上)に注力していることが理由であるが、足元では取引先数の減少にも歯止めがかかってきた。


対象業種は多岐にわたるが、同社が得意としているのは、各種展示会やカンファレンスなどに対する需要が大きい「製造業」や「情報・通信」を筆頭として、「スポーツ」「自動車」「食料品」等が挙げられる。
また、最近は、官公庁関連など公的部門へも領域を広げつつあるようだ。
同社の事業拠点は、本社(東京都中央区)、西日本事業所(大阪市)に加えて、自社の制作部門(工場)を埼玉県八潮市に保有している。


連結子会社は、アイアクト(デジタル・コンテンツやWeb制作などのデジタルマーケティング)とスプラシア(独自開発の動画合成エンジンを用いた動画編集やタブレット端末対応のデジタルサイネージ等)、タケロボ(サービスロボットの開発・製品化等)の3社である。


2. 企業特長
同社の特長は、(1)直接取引を主体としたワンストップ・ソリューション、(2)専門分野を持つクリエイターによる企画・提案力、(3)採算性の高い指名受注が多いこと、の3点にある。


(1) 直接取引を主体としたワンストップ・ソリューション
同社の最大の特長は、顧客との直接取引の比率が高いことに加え、営業・進行管理から、プランニング、デザイン、制作まで、顧客の求めるサービスをワンストップで提供できるところにある。
代理店経由で個別のサービスを下請け的に受注する同業他社が多いなかで、同社は直接取引を主体としたワンストップ・ソリューションにこだわってきた。
それによって、迅速で柔軟な対応や高度な品質コントロール、中間マージンがないことによる価格競争力など、他社との差別化が図られている。


この事業モデルを支えているのは、長年積み上げてきた信頼の高さであり、さらに株式上場による信用力や知名度の向上もプラスに働いていると考えられる。
また、国内有数の製作部門(工場)を保有していることも、品質管理や柔軟かつ迅速な対応を可能としている。


加えて、連結子会社のアイアクトやスプラシアとの協業によるITソリューション(デジタル・コンテンツ)とイベントの連動のほか、タケロボのロボット技術の活用による新たな価値提案も、今後の差別化や付加価値向上に寄与するものと期待される。


(2) 専門分野を持つクリエイターによる企画・提案力
企画営業とデザイナーが自社内に在籍し、それぞれの得意分野を生かしたチーム編成で顧客ニーズを捉えた質の高い提案を行っている。
「ブースをいかに美しく見せるか」を競い合う傾向が強い業界の中で、同社は「顧客の求める成果を上げる」ことを命題に掲げ、企画・提案力の精度を高めてきた。
その結果が、顧客からの高い支持やリピート率の高さに結びついている。


(3) 採算性の高い指名受注も高い水準で推移
受注形態にはコンペとノーコンペ(指名受注)とがあるが、指名受注のほうが営業経費等を圧縮できるとともに、価格競争に巻き込まれにくい点で採算性が高い。
新規の積み上げ部分については、コンペとなる案件も増えているもようであるが、同社の指名受注売上高の比率は66.2%(単体)と高い水準にある(2017年3月期実績)。
それは、顧客のマーケティング・パートナーとして長期的な関係構築ができている証左であり、1社当たりの単価(顧客内シェア)の拡大と合わせ、同社の戦略が進展していることを示している。


(執筆:フィスコ客員アナリスト 柴田 郁夫)

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