■注目すべき内容
1. 2020年3月期に売上高50億円と復配の実現を目指す
テリロジー (T:9603)は、1)M&A・アライアンスによる事業拡大、2)最新技術を搭載する製品・サービスの提供、3)自社製品をコアとした他社製品とのバリューミックス、4)インバウンドビジネスへの挑戦と社会貢献への取り組み、を柱とする成長戦略により、中期経営計画最終年となる2020年3月期において、売上高50億円と復配の実現を目指している
まず、オーガニックな成長戦略について見ると、セキュリティ・モニタリング・認証のスペシャリスト企業を標榜する基本姿勢のもと、IT(情報技術)とOT(製造プロセスなどの運用技術)の融合やRPA(Robotic Process Automation)への対応など、工場やオフィスにおける生産性革命・働き方改革に関連した領域に注力していることが読み取れる
具体的には、企業の拠点間通信の安全を守るサイバー防御製品(米Tempered Networks製)や、社会インフラや工場などの産業用制御システムのサイバー脅威と異常プロセスを素早く検知するスイスNozomi Networks製の産業用制御システム(ICS: Industrial Control Systems)セキュリティ、自社開発RPAツールのEzAvater(7月販売開始予定)、などの商材の成長に期待したい
つぎに、自社製品/サービスである「momentum」や「CloudTriage」が他社製品とのバリューミックスを発揮し始めたことも評価できるだろう前者は世界的に評価が高い米Palo Alto Networks (T:4680)製ファイアウォールや米Lastline製のマルウェア対策と後者は次世代無線LANとして注目される米Aerohive Networks (T:8214)のWi-Fiソリューションとの連携を実現しており、販売強化・市場拡大の一助となりつつある
インバウンドビジネスへの挑戦は「みえる通訳」の展開がメインとなる「みえる通訳」は、タブレット・スマートフォンを利用した映像通訳サービスで、いつでもどこでもワンタッチで、通話オペレーターが接客等をサポートするもの英語、中国語、韓国語、タイ語、ロシア語、ポルトガル語、スペイン語、ベトナム語、フランス語、タガログ語、日本手話の通訳を定額制で提供している導入先は、H.I.S. (T:3356)や変なホテル、ラウンドワン、NEXCO北海道、ノジマ、JRA、AOKI
、Victoria、Zoffなどに広がっており、一部で売上増につながる実績も挙げているようだ2020年の東京オリンピック・パラリンピック開催に向けて、一段の伸長が期待できるだろう
とはいえ、オーガニックな成長だけでは、2020年3月期における売上高50億円の達成はチャレンジングな目標にみえるそこで、注目されるのがM&A・アライアンス戦略における次の一手である
2. アライアンス、M&Aを通じ、新たな事業機会を獲得
同社は2017年1月のシークエッジグループとのパートナーシップ促進に続き、2017年12月にはノジマグループのITXの法人向けICTサービス事業を買収した(対象事業を吸収分割により承継した会社の全株式を取得)これらを通じ、従来からの事業ドメインを基盤としながらも、顧客ネットワーク(従来手薄であった中堅・中小規模企業の顧客基盤)と提供ソリューション(ブロックチェーン・仮想通貨や法人向けICTサービスなど)の両面で新たな事業機会を獲得してきた
会社側は、中期経営計画(2020年3月期における売上高50億円と復配の実現)を達成する重要な手段として、M&A・アライアンス戦略を位置付けているわけだが、売上高目標だけでなく復配実現にも強く意識している点は見逃せない言うまでもなく、安定的な配当を実現するためには「キャッシュ・フロー創出力と財務体質の強化」が必要であり、そのことを会社側がしっかりと認識している可能性は高そうだ
次のM&Aにおいて、「ヒト(人材・組織)、モノ(商材・商流)、カネ(財務・収益)」のすべてにおいて納得性の高いエクイティ・ストーリーが示されることを期待したい
■業績動向
1. 2018年3月期決算
テリロジー (T:9603)の2018年3月期連結業績は、売上高が3,221百万円、営業利益が166百万円、経常利益が173百万円、親会社株主に帰属する当期純利益は154百万円となった前期が単独決算であったため、単純に前期比較は行えないが、2018年2月13日発表の業績予想修正値(売上高3,100百万円、営業利益90百万円、経常利益95百万円、親会社株主に帰属する当期純利益70百万円)を大幅に超過しており、2012年3月期以来6期振りの実質上振れ着地となる順調な決算と評価できる
また、売上総利益率は2015年3月期の20.6%(単体)から2018年3月期は31.8%と大幅に良化、自社製品・サービスの立ち上がりによるミックス改善効果が顕在化しつつある販管費比率についても、過去10年間(単体決算含む)で最低水準の26.6%へと低下、増収効果に加え、経費削減努力が奏功したことがうかがえる
2018年3月期末における総資産は3,123百万円、純資産は762百万円、自己資本比率は24.4%となった参考のため、単体決算であった2017年3月期との比較を見ると、受取手形及び売掛金が369百万円増加、無形固定資産が318百万円の増加、短期借入金が427百万円の増加、などが目立った変化として指摘できる
また、決算短信ベースのROEは20.2%、ROA(総資産経常利益率)は5.6%と、いずれも過去10年間(単体決算含む)で最も良好な数値となった
2018年3月期末における現金及び現金同等物の残高は、462百万円となった各キャッシュ・フローの状況を見ると、営業キャッシュ・フローは税金等調整前当期純利益が157百万円となったものの、売上債権が369百万円増加したことなどから、55百万円の支出、投資キャッシュ・フローは、M&A実施などを受けて440百万円の支出となった一方、財務キャッシュ・フローは、短期借入金の増加を主因に391百万円の収入となった
2. 2019年3月期業績見通し
同社は2019年3月期の連結業績予想について、引き続き良好な事業環境のもと、売上高が前期比17.9%増の3,800百万円、営業利益が同20.4%増の200百万円を見込んでいる
取り組みを強化する製品・サービスは、企業内ネットワーク環境の脆弱性を可視化・分析・レポートする「脆弱性診断サービス」、ダークネットを監視する「サイバースレットインテリジェンスサービス」、産業制御システム向けセキュリティ対策製品「Nozomi Networks」、自社開発商材の「momentum」と「CloudTriage」、リアルタイム映像通訳サービス「みえる通訳」などである
一方、配当に関しては、採算重視のバランス経営のもとで収益獲得能力の強化と組織の強靭化を優先し、現時点では見送る方針である
(執筆:フィスコ客員アナリスト 前田 吉弘)
1. 2020年3月期に売上高50億円と復配の実現を目指す
テリロジー (T:9603)は、1)M&A・アライアンスによる事業拡大、2)最新技術を搭載する製品・サービスの提供、3)自社製品をコアとした他社製品とのバリューミックス、4)インバウンドビジネスへの挑戦と社会貢献への取り組み、を柱とする成長戦略により、中期経営計画最終年となる2020年3月期において、売上高50億円と復配の実現を目指している
まず、オーガニックな成長戦略について見ると、セキュリティ・モニタリング・認証のスペシャリスト企業を標榜する基本姿勢のもと、IT(情報技術)とOT(製造プロセスなどの運用技術)の融合やRPA(Robotic Process Automation)への対応など、工場やオフィスにおける生産性革命・働き方改革に関連した領域に注力していることが読み取れる
具体的には、企業の拠点間通信の安全を守るサイバー防御製品(米Tempered Networks製)や、社会インフラや工場などの産業用制御システムのサイバー脅威と異常プロセスを素早く検知するスイスNozomi Networks製の産業用制御システム(ICS: Industrial Control Systems)セキュリティ、自社開発RPAツールのEzAvater(7月販売開始予定)、などの商材の成長に期待したい
つぎに、自社製品/サービスである「momentum」や「CloudTriage」が他社製品とのバリューミックスを発揮し始めたことも評価できるだろう前者は世界的に評価が高い米Palo Alto Networks (T:4680)製ファイアウォールや米Lastline製のマルウェア対策と後者は次世代無線LANとして注目される米Aerohive Networks (T:8214)のWi-Fiソリューションとの連携を実現しており、販売強化・市場拡大の一助となりつつある
インバウンドビジネスへの挑戦は「みえる通訳」の展開がメインとなる「みえる通訳」は、タブレット・スマートフォンを利用した映像通訳サービスで、いつでもどこでもワンタッチで、通話オペレーターが接客等をサポートするもの英語、中国語、韓国語、タイ語、ロシア語、ポルトガル語、スペイン語、ベトナム語、フランス語、タガログ語、日本手話の通訳を定額制で提供している導入先は、H.I.S. (T:3356)や変なホテル、ラウンドワン、NEXCO北海道、ノジマ、JRA、AOKI
、Victoria、Zoffなどに広がっており、一部で売上増につながる実績も挙げているようだ2020年の東京オリンピック・パラリンピック開催に向けて、一段の伸長が期待できるだろう
とはいえ、オーガニックな成長だけでは、2020年3月期における売上高50億円の達成はチャレンジングな目標にみえるそこで、注目されるのがM&A・アライアンス戦略における次の一手である
2. アライアンス、M&Aを通じ、新たな事業機会を獲得
同社は2017年1月のシークエッジグループとのパートナーシップ促進に続き、2017年12月にはノジマグループのITXの法人向けICTサービス事業を買収した(対象事業を吸収分割により承継した会社の全株式を取得)これらを通じ、従来からの事業ドメインを基盤としながらも、顧客ネットワーク(従来手薄であった中堅・中小規模企業の顧客基盤)と提供ソリューション(ブロックチェーン・仮想通貨や法人向けICTサービスなど)の両面で新たな事業機会を獲得してきた
会社側は、中期経営計画(2020年3月期における売上高50億円と復配の実現)を達成する重要な手段として、M&A・アライアンス戦略を位置付けているわけだが、売上高目標だけでなく復配実現にも強く意識している点は見逃せない言うまでもなく、安定的な配当を実現するためには「キャッシュ・フロー創出力と財務体質の強化」が必要であり、そのことを会社側がしっかりと認識している可能性は高そうだ
次のM&Aにおいて、「ヒト(人材・組織)、モノ(商材・商流)、カネ(財務・収益)」のすべてにおいて納得性の高いエクイティ・ストーリーが示されることを期待したい
■業績動向
1. 2018年3月期決算
テリロジー (T:9603)の2018年3月期連結業績は、売上高が3,221百万円、営業利益が166百万円、経常利益が173百万円、親会社株主に帰属する当期純利益は154百万円となった前期が単独決算であったため、単純に前期比較は行えないが、2018年2月13日発表の業績予想修正値(売上高3,100百万円、営業利益90百万円、経常利益95百万円、親会社株主に帰属する当期純利益70百万円)を大幅に超過しており、2012年3月期以来6期振りの実質上振れ着地となる順調な決算と評価できる
また、売上総利益率は2015年3月期の20.6%(単体)から2018年3月期は31.8%と大幅に良化、自社製品・サービスの立ち上がりによるミックス改善効果が顕在化しつつある販管費比率についても、過去10年間(単体決算含む)で最低水準の26.6%へと低下、増収効果に加え、経費削減努力が奏功したことがうかがえる
2018年3月期末における総資産は3,123百万円、純資産は762百万円、自己資本比率は24.4%となった参考のため、単体決算であった2017年3月期との比較を見ると、受取手形及び売掛金が369百万円増加、無形固定資産が318百万円の増加、短期借入金が427百万円の増加、などが目立った変化として指摘できる
また、決算短信ベースのROEは20.2%、ROA(総資産経常利益率)は5.6%と、いずれも過去10年間(単体決算含む)で最も良好な数値となった
2018年3月期末における現金及び現金同等物の残高は、462百万円となった各キャッシュ・フローの状況を見ると、営業キャッシュ・フローは税金等調整前当期純利益が157百万円となったものの、売上債権が369百万円増加したことなどから、55百万円の支出、投資キャッシュ・フローは、M&A実施などを受けて440百万円の支出となった一方、財務キャッシュ・フローは、短期借入金の増加を主因に391百万円の収入となった
2. 2019年3月期業績見通し
同社は2019年3月期の連結業績予想について、引き続き良好な事業環境のもと、売上高が前期比17.9%増の3,800百万円、営業利益が同20.4%増の200百万円を見込んでいる
取り組みを強化する製品・サービスは、企業内ネットワーク環境の脆弱性を可視化・分析・レポートする「脆弱性診断サービス」、ダークネットを監視する「サイバースレットインテリジェンスサービス」、産業制御システム向けセキュリティ対策製品「Nozomi Networks」、自社開発商材の「momentum」と「CloudTriage」、リアルタイム映像通訳サービス「みえる通訳」などである
一方、配当に関しては、採算重視のバランス経営のもとで収益獲得能力の強化と組織の強靭化を優先し、現時点では見送る方針である
(執筆:フィスコ客員アナリスト 前田 吉弘)