■高千穂交易 (T:2676)の今後の見通し
1. 2019年3月期の業績見通し
進行中の2019年3月期は売上高で22,500百万円(前期比15.0%増)、営業利益で1,200百万円(同80.8%増)、経常利益で1,200百万円(同69.8%増)、親会社株主に帰属する当期純利益で800百万円(同511.2%増)と増収増益の見通しだ。
以降に述べる中期経営計画(2017年3月期から2019年3月期)の最終年度として引き続き増益を維持する計画だ。
売上構成の変化などから売上総利益率は前期の24.5%から25.8%へ改善する見込みだ。
さらに、のれん償却(販管費に含まれる)がピークを過ぎて140百万円程度(前期192百万円)へ減少することもあり、営業利益以下は大幅な増益を予想している。
2. 2019年3月期のセグメント別見通し
セグメント別売上高は、システム事業が13,650百万円(前期比13.9%増)、デバイス事業が8,850百万円(同16.6%増)を予想している。
システム事業では小売業向け複合ソリューションを拡販、東南アジア防災システム案件を強化、アパレル市場等でのRFIDの拡販を図る。
デバイス事業では、電子は産業機器市場を中心に拡販を継続し、産機はグローバルビジネスの攻略を進める。
各サブセグメントの予想及び主な施策は以下のようになっている。
(1) システム事業
a) セキュリティ
売上高は8,730百万円(同14.1%増)を見込んでいるが、重要施策として海外では原油価格回復に伴う石油コンビナート等の防火システム案件の取り込みを強化する。
また小売業向けでは、商品監視システム、画像認識等の店舗セキュリティに関わる複合ソリューションを拡販する。
特に商品監視システムは更新需要を確実に捉え、リプレイス販売を強化する。
オフィス向けでは、外資系企業攻略を継続することに加え、国内企業向けに入退室管理により働き方改革を可能にする提案セールスを強化していく。
b) その他ソリューション
売上高は2,200百万円(同31.9%増)を見込んでいる。
RFIDは国内アパレル市場、ヨーロッパ向けリネンタグの拡販に注力する。
メーリングでは、大型封入封緘機のリプレース販売を強化する。
ネットワークでは、引き続きクラウド型無線LANの拡販を継続する。
(特にMPSサービス※)
※MPS=Management Service Providerの略で、情報通信機器などの運用管理を代行する業者のこと。
(2) デバイス事業
a) 電子プロダクト
売上高は4,160百万円(同17.9%増)を見込んでいる。
引き続き産業機器市場への販売強化を継続する。
具体的には、半導体製造装置量産化のフォローや、2020年までに政府が推進するWi-Fi環境整備の一環として、鉄道通信インフラ(新幹線トンネル内基地局)に向けて電子部品(フィルター)を拡販する。
その他、要求が高まる車載市場などへシリコンマイクを拡販する。
またソリューションビジネスの早期実績化を目指す。
b) 産機プロダクト
売上高は4,690百万円(同15.5%増)を計画している。
住設市場では、国内に加え、Takachiho America, Inc.を通じて本格的な米国市場攻略を進めるとともに、中国、欧州への販売も強化する。
PPC市場向けにソフトクローズレールを拡販、自動車内装向けに新製品を投入し販売を強化する。
その他では、新商品を製造設備・装置市場に投入し販売を強化する。
■中期経営計画
● 中期経営計画の目標利益は修正
高千穂交易 (T:2676)の2016年3月期までの3年間の業績(経常利益)は、円安やのれん償却などの逆風の影響もあり大きく落ち込んだ。
これを立て直し再び利益成長路線に戻るために2017年3月期から2019年3月期に向けての中期経営計画を発表し、これを遂行してきた。
この中期経営計画では経営方針に「独自ソリューションの展開とグローバル事業の拡大による利益成長の実現」を掲げ推進中。
最終年度にあたる2019年3月期は経常利益15億円の目標を掲げていた。
セキュリティ事業では、入退室管理や防犯システムは計画を上回る見込みだが、ATM市場縮小の影響や「グローバル事業の拡大」の遅れを考慮し修正。
経常利益12億円を予想している。
ただし、定性的な方向性は変えておらず、主にグローバルビジネスの拡大や付加価値による競争力強化により計画の実現を図る。
セグメント毎の詳細については「今後の見通し 2.2019年3月期のセグメント別見通し」を参照。
事業ポートフォリオについては次の通り。
事業ポートフォリオ
当初掲げた戦略を事業ポートフォリオ別に進捗状況を見ると「既存市場への既存商品の販売」では入退室管理システムが外資企業の進出や新しいオフィスへの移転等により伸張したことや、電子プロダクトにおいては、トンネル内の通信インフラ向けや半導体製造装置向けに堅調に推移したこと等から、当初の計画を上回る水準で進捗している。
一方産機プロダクトの遊技市場向けスライドレールの販売は苦戦。
「グローバルビジネスの拡大」は、産機市場の海外展開による販売拡大を見込んでいたが、中国ATM市場におけるキャッシュレス化の進展や外資排除等により想定を下回った事、東南アジアの防火システム事業は、原油価格の下落によりプラント建設の着工が遅延・縮小したこと等により当初計画が未達成の状況にある。
「付加価値による競争力強化」は、大手キャリア向けディスプレイセキュリティなど想定を上回る。
一方で、在庫管理向けリテールRFIDシステムの進捗が遅れている。
「新規ビジネスの創出」では、ROIなどの投資効果の要求が高まりRFIDシステム、特殊タグなどは遅れている。
■株主還元策
安定的・継続的な配当かつ事業拡大のための成長投資を実施
同社は株主に対する利益還元を経営の重要な課題と位置付けており、安定的・継続的な配当を行うことを基本方針としている。
これに基づき2018年3月期の年間配当は24.0円(配当性向171.2%)としている。
この基本方針に加えて、今後も将来の成長に向けた投資に注力し内部留保を事業拡大に活用することで、株主還元を果たしていく考えである。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 寺島 昇)
1. 2019年3月期の業績見通し
進行中の2019年3月期は売上高で22,500百万円(前期比15.0%増)、営業利益で1,200百万円(同80.8%増)、経常利益で1,200百万円(同69.8%増)、親会社株主に帰属する当期純利益で800百万円(同511.2%増)と増収増益の見通しだ。
以降に述べる中期経営計画(2017年3月期から2019年3月期)の最終年度として引き続き増益を維持する計画だ。
売上構成の変化などから売上総利益率は前期の24.5%から25.8%へ改善する見込みだ。
さらに、のれん償却(販管費に含まれる)がピークを過ぎて140百万円程度(前期192百万円)へ減少することもあり、営業利益以下は大幅な増益を予想している。
2. 2019年3月期のセグメント別見通し
セグメント別売上高は、システム事業が13,650百万円(前期比13.9%増)、デバイス事業が8,850百万円(同16.6%増)を予想している。
システム事業では小売業向け複合ソリューションを拡販、東南アジア防災システム案件を強化、アパレル市場等でのRFIDの拡販を図る。
デバイス事業では、電子は産業機器市場を中心に拡販を継続し、産機はグローバルビジネスの攻略を進める。
各サブセグメントの予想及び主な施策は以下のようになっている。
(1) システム事業
a) セキュリティ
売上高は8,730百万円(同14.1%増)を見込んでいるが、重要施策として海外では原油価格回復に伴う石油コンビナート等の防火システム案件の取り込みを強化する。
また小売業向けでは、商品監視システム、画像認識等の店舗セキュリティに関わる複合ソリューションを拡販する。
特に商品監視システムは更新需要を確実に捉え、リプレイス販売を強化する。
オフィス向けでは、外資系企業攻略を継続することに加え、国内企業向けに入退室管理により働き方改革を可能にする提案セールスを強化していく。
b) その他ソリューション
売上高は2,200百万円(同31.9%増)を見込んでいる。
RFIDは国内アパレル市場、ヨーロッパ向けリネンタグの拡販に注力する。
メーリングでは、大型封入封緘機のリプレース販売を強化する。
ネットワークでは、引き続きクラウド型無線LANの拡販を継続する。
(特にMPSサービス※)
※MPS=Management Service Providerの略で、情報通信機器などの運用管理を代行する業者のこと。
(2) デバイス事業
a) 電子プロダクト
売上高は4,160百万円(同17.9%増)を見込んでいる。
引き続き産業機器市場への販売強化を継続する。
具体的には、半導体製造装置量産化のフォローや、2020年までに政府が推進するWi-Fi環境整備の一環として、鉄道通信インフラ(新幹線トンネル内基地局)に向けて電子部品(フィルター)を拡販する。
その他、要求が高まる車載市場などへシリコンマイクを拡販する。
またソリューションビジネスの早期実績化を目指す。
b) 産機プロダクト
売上高は4,690百万円(同15.5%増)を計画している。
住設市場では、国内に加え、Takachiho America, Inc.を通じて本格的な米国市場攻略を進めるとともに、中国、欧州への販売も強化する。
PPC市場向けにソフトクローズレールを拡販、自動車内装向けに新製品を投入し販売を強化する。
その他では、新商品を製造設備・装置市場に投入し販売を強化する。
■中期経営計画
● 中期経営計画の目標利益は修正
高千穂交易 (T:2676)の2016年3月期までの3年間の業績(経常利益)は、円安やのれん償却などの逆風の影響もあり大きく落ち込んだ。
これを立て直し再び利益成長路線に戻るために2017年3月期から2019年3月期に向けての中期経営計画を発表し、これを遂行してきた。
この中期経営計画では経営方針に「独自ソリューションの展開とグローバル事業の拡大による利益成長の実現」を掲げ推進中。
最終年度にあたる2019年3月期は経常利益15億円の目標を掲げていた。
セキュリティ事業では、入退室管理や防犯システムは計画を上回る見込みだが、ATM市場縮小の影響や「グローバル事業の拡大」の遅れを考慮し修正。
経常利益12億円を予想している。
ただし、定性的な方向性は変えておらず、主にグローバルビジネスの拡大や付加価値による競争力強化により計画の実現を図る。
セグメント毎の詳細については「今後の見通し 2.2019年3月期のセグメント別見通し」を参照。
事業ポートフォリオについては次の通り。
事業ポートフォリオ
当初掲げた戦略を事業ポートフォリオ別に進捗状況を見ると「既存市場への既存商品の販売」では入退室管理システムが外資企業の進出や新しいオフィスへの移転等により伸張したことや、電子プロダクトにおいては、トンネル内の通信インフラ向けや半導体製造装置向けに堅調に推移したこと等から、当初の計画を上回る水準で進捗している。
一方産機プロダクトの遊技市場向けスライドレールの販売は苦戦。
「グローバルビジネスの拡大」は、産機市場の海外展開による販売拡大を見込んでいたが、中国ATM市場におけるキャッシュレス化の進展や外資排除等により想定を下回った事、東南アジアの防火システム事業は、原油価格の下落によりプラント建設の着工が遅延・縮小したこと等により当初計画が未達成の状況にある。
「付加価値による競争力強化」は、大手キャリア向けディスプレイセキュリティなど想定を上回る。
一方で、在庫管理向けリテールRFIDシステムの進捗が遅れている。
「新規ビジネスの創出」では、ROIなどの投資効果の要求が高まりRFIDシステム、特殊タグなどは遅れている。
■株主還元策
安定的・継続的な配当かつ事業拡大のための成長投資を実施
同社は株主に対する利益還元を経営の重要な課題と位置付けており、安定的・継続的な配当を行うことを基本方針としている。
これに基づき2018年3月期の年間配当は24.0円(配当性向171.2%)としている。
この基本方針に加えて、今後も将来の成長に向けた投資に注力し内部留保を事業拡大に活用することで、株主還元を果たしていく考えである。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 寺島 昇)