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世界株価指数は上昇トレンドラインを下回り、ダウントレンドを形成。
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アジアの株価も、浮き沈みを繰り返しながらダウントレンドを形成。
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欧州は上昇トレンドが崩れたが、まだダウントレンドになっていない。
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ダウジョーンズなどの米株価指数は2月以来上昇トレンドを保っている。
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アメリカのインフレーションは連邦準備理事会(FRB)の目標に到達したが、個人消費支出は失望させる結果だった。
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イールドカーブ(利回り曲線)の平坦化は景気後退の可能性を示している。
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原油は小規模の生産増加により最高水準に。しかし、市場は依然として不均衡状態である。
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ビットコインは最安値をつけてから伸び悩んでいる。
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ドルは利上げによる金利差の拡大と、安全な避難通貨としての位置づけによりドル高になっている。
アメリカの主要指数は金曜日にわずかな上昇をみせた。ダウ ジョーンズ は0.23%増、ナスダック総合指数は0.09%増、S&P 500は0.08%増と軒並み僅かな上昇であった。
アメリカと主要貿易相手国との間で進行中の貿易摩擦は世界の市場に大きく影響を与え、さらに欧州とアジアの経済の減速も逆風に追い打ちをかけている。米連邦準備理事会(FRB)は、依然として米国経済が成長していることから、利上げに積極的姿勢を保っているが、欧州およびアジアの中央銀行は現状維持の姿勢だ。
しかし、投資家の見通しは、米国の経済政策によって株価が上昇軌道を維持している限り、米国市場は楽観的だろう。ただし、現在加速している貿易摩擦などの現状は、今後の不安要素にはなりえるだろう。
世界のマーケットが下落する中、アメリカ市場は好調
米国の株価指数は、米国以外の経済指標を大きく上回っている。 2月に底をつけて以来、欧州、アジア、そして世界の株価指標は上昇トレンドラインを下回っているが、アメリカは好調を維持している。
上記チャートの MSCI ACWI インデックスでは、2016年2月に底をつけてから、ブル相場(強気相場)、ベア相場(弱気相場)を繰り返しシンメトリーの三角形を描きながら上昇トレンドを形成してきた。しかし、金曜日にその上昇トレンドのサポートラインを下抜けした。
欧州市場は、アジア市場よりは良い。アジア市場の指標は浮き沈みを繰り返しながらダウントレンドを形成しているのにも関わらず、欧州はいまだダウントレンドは確定していない。
MSCI ACアジア太平洋インデックスは6月18日に高値をつけた後、19日に上昇トレンドのサポートラインを抜け、20日には下抜けが確定した。最終的に、25日には2月8日の底値を下回り、浮き沈みを繰り返しながらダウントレンドを形成した。
欧州STOXX 600は、上昇トレンドのサポートラインを下回り、ダウントレンドに転じた。高値圏でみられる、ブロードニングパターンと呼ばれるチャートパターンを形成し、弱気相場を示している。しかし、決定的な下抜けを確認する必要がある。
米国の主要な株価指数は、大きく世界の指標より好調だ。ダウ・ジョーンズ工業株価指数(Dow Jones Industrial Average)は、多国籍メガキャップ企業が輸出にたよっているため打撃を受けているが、米国の株価指数はいまだに上昇トレンドにとどまっている。
多くのアナリストは、貿易摩擦が米国経済に及ぼす悪影響は一時的なものに過ぎないと考えているため、米国の投資家はこのような悪材料がなくなるまで株を持ち続けていると考えられる。第二次世界大戦以来2番目に長い9年間にわたる上昇相場である今、まだ米国の株式市場が大変有望という訳ではないが各国を上回る状況ではあるといえよう。
経済は順調?
米国経済は、経済指標を見るとバラ色だ。 2012年4月以来、連邦準備理事会(FRB)の2%の目標は達成されている。失業率は18年ぶりの低水準であり、個人所得 は4月の0.2%から5月には0.4%上昇し、賃金は0.3%上昇した。ジェローム・パウエルFRB議長は6月13日のFOMC会議で「経済は非常にうまくいっている」と述べた。
しかし、米国経済活動の2/3以上を占める消費者支出は先月0.2%の上昇にとどまったと商務省が報じた。 4月のデータもまた、0.6%の上昇から0.5%のへ下方修正された。
先月、貯蓄は前月の4,480億ドルから4,820億ドル増加し、3%から3.2%の上昇となった。これは、消費意欲の後退していると言えるだろう。消費者はおそらく、現在進行中の貿易摩擦のため、世界経済の衰退を恐れていると考えられる。
先行指標としての株式需給バランス
私たちが本当に注意しなければならないのは、景気転換の指標としていみられている株式の需給バランスだ。 S&P 500は2週間連続で下落したが、3ヶ月連続で上昇した。ダウ・ジョーンズ工業株価指数は3カ月連続で下落したが、2カ月連続で上昇した。 S&Pと同様に、 NASDAQ Compositeは、週2回連続でマイナスとなったが、3か月連続上昇中だ。 Russell 2000も下落したが、4か月連続の上昇の中の下落である。
米国以外の指標は、明らかに弱気である。 STOXX 600は2週連続で下落し、2カ月目の下落である。MSCI ACアジア・パシフィック・インデックスは3カ月連続で減少し、2カ月連続で減少した。最後に、MSCI世界株価指数は、3週連続して下落したほか、2カ月の下落となっている。
とはいえ、進行中の米国の強気相場を支持する議論は、米国市場が今や最高潮に達しているというシグナルとも取れる。結局のところ、古い格言がいうように、「ローソクは消える直前が一番輝く」ということだ。これは相場が強気姿勢をとる中、イールドカーブ(利回り曲線)に対する景気後退の警告の正しさを裏付けると考えられる。
米国の 10年物と 2年物の国債の利回り差は、今や32.8ベーシスポイントとなり、2007年以来の最も狭い金利差となっている。
短期債の金利が上昇している中、投資家は、長期金利の低下に対するFRBの利上げ見通しの高まりが、イールドカーブ(利回り曲線)の逆転を招くことを懸念している。一般的に、短期債は長期債よりも高い利回りにはならないが、実現すれば景気後退の確かなシグナルと考えられているからだ。
しかし、それが実際に起こるとしても、統計的には、景気後退のシグナルが出てから5四半期かかると言われている。未来を完全に予想することはできないので、現状を注視しなければいけない。アメリカ経済は好調で、潜在的な悪材料がでているが、アメリカの投資家は堅実に株式を保有し続けている。
したがって、相場は強気なままであり、最近の下落はただの買い時でしかない。今の相場は、弱気の投資家を狼狽させ、情報通の投資家が保有数を増やしているだろう。そして、海外投資家にとっても魅力に見えている。もし、彼らの読み通りであれば、株式市場はより強く安定的な反発で回復をみることになるだろう。NASDAQ とRussell 2000がすでに過去最高根の更新を見せるように、S&P 500とダウ・ジョーンズも1月の高値に到達するだろう。
原油・米ドルは続伸、ビットコインは鈍化
先週の原油価格は、2014年以来の最高水準である74.15ドルに上昇した。原因はOPECの生産限度枠の引き上げであった。通常、供給が増えれば価格は下がるものだが、実際には需要と供給のバランスに影響を与えなかった。
厳密に言えば、2016年の底上げ以来、明らかに上昇傾向にある一方で、2008年半ばの150ドル台のピーク以来、長期的にはダウントレンドだ。短期的な2年間の上昇トレンドは10年におよぶダウントレンドを上回るだろうか?
ビットコインはいまだよい好材料はない。オーストリアで400を超える郵便局支店と1,300の支店で仮想通貨を利用できるようになった良いニュースは、価格上昇の材料にはならなかった。また、中国四川省の洪水により、Bitcoinのマイニングセンターが崩壊したことも価格上昇の原因にはならなかった。
ビットコインは先々週の土曜日、$5,762.9と安値を更新し、ダウントレンドに転じた。ビットコインは3月から続く下落で大きな三角形を描がきながら、2月に$6000ドルを切ったあたりまで反発した。
このパターンは、供給が需要を上回っていることを示している。しかし、仮想通貨は5月5日以降のダウントレンドのラインを上回って反発している。これは、$8,000を再び試す形で上昇した。
ドルはドナルド・トランプの大統領就任以来、四半期最高の高値を記録した。
ドルは、利上げによる金利の拡大と、安全な避難通貨という2つの要因からドル高になっている。
しかし、最近のドルの上昇によって去年の10月のように95レベルを上回ることはできていない。ドルは、2017年から続く大きなヘッド&ショルダーを形成し、上昇シグナルの可能性を示している。