この記事は2018年8月31日8:53に投稿されたものです。
政治経済のファンダメンタルやエネルギー市場のボラティリティーが原油価格に影響をあたえているが、季節性も原油価格が動く要因である。
9月に先駆けて、原油価格の方向性に影響を与える可能性がある3つの要因を下記で述べた。
1.原油の季節性として、米国でガソリンの価格は来週のレイバー・デー(祝日)の後に下がり始めると考えられている。
典型的にアメリカで秋には、ガソリンの需要の低下や製油所が比較的安い「冬用」ガソリン(夏用に比べ揮発性の高いガソリン)を生産するために、ガソリンの価格は下がる。クルード原油価格はここ数ヶ月で比較的安定し、ガソリンの急騰が抑えられている。一方、初夏のメモリアル・デー(休日)あたりでは正反対にガソリンが急騰していた。
11月終わりに、アメリカではハリケーンシーズンに突入する。もし、ハリケーンが南東の州で発達した場合、供給面の混乱によりガソリン価格は特定の地域で急騰する可能性がある。
11月をさらに考えると、米国がイランに対する 原油 と 天然ガスの輸出制裁が11月の最初の週に始まり、ガソリン価格の波乱が予想される。これは、アメリカの中間選挙と時期と一致し、トランプ政権は選挙のため、様々な戦略をもってガソリン価格を抑えることになるだろう。もし、原油価格の急騰の懸念がでたら、米戦略石油備蓄を解放することを検討し、そしてサウジアラビアに10~11月の生産増加の圧力をかけるだろう。
2.今後数ヶ月で世界の原油市場に直面する問題は、イランの生産に対する影響である。当初、アナリストは、この制裁単体ではイランの輸出に関し大きな影響はないと見ていた。制裁の発動が近づくにつれて、実際には制裁は決定的な影響を与えることが明らかになってきた。
ウォールストリート・ジャーナルによると、イランの原油輸出は9月に150万バレルの減少が見込まれている。6月には、イランは約230万バレルを輸出した。もし、制裁2ヶ月前にイラン原油が1日あたり80万バレルの減少が見込まれるようであれば、制裁が発動すれば多くの原油が市場から消えることになる。5月に初めて制裁が発表されたときに、多くのアナリストは30万から50万バレルの原油が市場から消えると予測されていた。現在の予測は80万から100万バレルの消失に修正され、一部のアナリストは200万バレルが消失すると予想している。
制裁の影響が全面的にすでに反映されているとは考えにくいだろう。原油は2017年や2016年のような供給過多ではないため、今後数ヶ月でイランへの制裁の懸念が原油価格を押し上げることを予測させる。
原油価格を押し上げるニュースには、制裁免除が却下されたり、世界の製油所がイランから原油の輸入を減少した時だと考えられる。
3.調査会社のウッドマッケンジーは原油の長期需要が増加していると伝えた。特に、中国とインドの原油の需要は拡大し、インドは2024年までに原油需要が中国を上回るという。ウッドマッケンジーは、インドの中流階級の拡大によって、原油需要の拡大が起こっているとみている。インドは追加で1日あたり470万バレルのクルード原油がガソリンやディーゼルのために必要だという。さらに、インドの需要拡大に伴い製油所を増やすか、もしくはガソリンとディーゼルを輸入し始める必要があり、エネルギー関連株に影響を与えると考えられる。ウッドマッケンジーの予測が正しいのなら、インドのエネルギー不足は深刻になり、インドの需要は長期的に原油価格の要因となるだろう。
世界の大手石油会社は、これまで製油所を拡大させようとインドに目をつけていた。去年Rosneft (OTC:OJSCY) がインドのEssar OIl(現:Naraya)を買収し、同社はさらなる買収の機会を伺っている。去年の4月にアラムコ(Aramco)といくつかのインド会社は、440億ドルの製油所と、石油化学プラントをインドに建設することに署名した。
インドの製油所が拡大する必要がある中、世界の大手石油会社はプロジェクトを立ち上げ、インドの需要に答えるように動いていることは明白だ。