第3四半期の最後の週は、 米ドルにとってよい週となった。ドルは日本円に対して13ヶ月ぶりの高値まで上昇し、スイスフラン、ユーロ、ニュージーランドドル、 オーストラリアドルに対し、強くなった。連邦準備制度理事会(FRB)の今年3回目の利上げによって、金利差が拡大したことがドル上昇に大きく寄与した。
今月は貿易戦争とともにブレグジットとイタリアの債務危機が特に大きく通貨に影響した。円は大きく下落したが、最大の敗者はユーロとスイスフランだった。 逆に ポンドは安定していた。
9月の為替取引に影響を与えた出来事の多くは、10月も引き続き外国為替市場を揺るがすだろう。今週末英国は保守党大会を開催しているが、米国とカナダの貿易交渉が続く中、イタリアのトリア経済・財務大臣は依然として辞任する可能性がある。 これらの動き次第で、8月下旬または9月初旬に底を打ったいくつかの主要通貨は、第3四半期にさらに下落する可能性がある。
米国の金融政策の方向性に関して、10月に変化があるかだけが唯一の市場の注目点だ。前回の連邦公開市場委員会(FOMC)で政策金利を0.25%引き上げた後、FRBは2.5ヶ月間金融政策を変更する予定はない。ドルが強い理由の1つは、FRBのドットチャートが12月のさらなる利上げを支持したためだ。 6月にはFOMCメンバーの半分だけが今年の4回の利上げを支持したが、12月には75%が賛同している。その結果、投資家は72%の確率でさらに0.25%上昇することを予想している。
しかし、今と12月までには経済指標に多くの変化が出るだろうし、12月19日のFOMCに近い指標ほど10月のものよりも重要になる。言い換えれば、今月の経済指標は、ドルへの影響が少ない可能性がある。 9月のISM製造業景況指数と非農業部門雇用者数は来週公表の予定だ。 8月の雇用と賃金の伸びは強かったので、9月はやや弱いかもしれない。しかし、たとえそうであったとしても、この指標結果だけでは12月のFRBによる利上げを止めることはない。テクニカル的には、ドルは USD / JPYの主要な抵抗線である114.75まで上昇する余地がある。
ユーロの最大の問題はイタリアだ。新しく選ばれたポピュリズム政権が2.4%に2019年の財政赤字のGDP比率を決めた後、金曜日のユーロは大きく下落した。EUと各国の財務大臣は財政赤字比率をGDPの1.6~2%に維持することを望んでいたが、はるかに高い赤字比率に決定して彼らの願いを無視した。これによりイタリアの株式は崩壊し、利回りは大きく上昇。この決定がイタリアをより困難な状態に導くことを投資家が懸念し、ユーロが犠牲となった。
この新たな赤字比率はEUが制限する3%を下回っているが、トリア経済・財務大臣による要望に反する決定は、彼の辞任を促す可能性がある。独立した経済学者として彼の存在は市場を安心させたが、辞任となれば政府を窮地に陥れるだろう。イタリアの大統領はすでに安定維持のために辞任しないよう頼んでおり、今後も続ける可能性が高いが、公式発表を行うまでは不確実性がユーロを圧迫する可能性がある。
イタリア問題を除けばユーロ圏の状況は悪くない。ドイツは景況感が改善され、9月の失業率も低下。欧州中央銀行(ECB)の関係者もインフレについてより前向きな意見を述べている。週の初めにドラギECB総裁は、基調的インフレ率に比較的強い上昇を見込むと発言。レーンECB理事は賃金データがますます上昇していると述べた。もし10月の終わりにECBからこの意見を聞けば、インフレに対するコメントがよりタカ派なことを意味する。来週市場を動かすようなユーロ圏の指標があまりない中、ユーロにとってイタリア関連のニュースと米ドルがリスクとなるだろう。テクニカル的には、ユーロドル(EUR / USD)が1.1650を下回っている限り、下に向かいやすいだろう。
来週は、英ポンドにとって重要だ。メイ首相の演説で締めくくる保守党大会が週半ばにあるからだ。 英国政府はEUの国境に関する提案を拒否しており、国境問題で屈服しないことで交渉が難しくなっている。これらブレグジットのニュースと英国PMIは今週の英ポンドに大きな影響を与えるだろう。9月の英国製造業購買担当者指数は弱くなることが予想されている中、メイ首相がEUに対して強硬な態度を維持すると予想されるため、ポンドは下落すると思われる。
一方、カナダは先週、米国と貿易協定を結ぶに至らず、トランプ大統領はメキシコとだけの協定で進めることになりそうだ。しかしながらカナダドルは下落せず金曜日に急騰した。これは貿易協定より今月のカナダ銀行による利上げ見通しを投資家が重要視したからだ。いずれカナダは米国との協定を結ぶはずであり、ファンダメンタル的には金融引き締めの必要性がある。貿易関税にもかかわらず、カナダの経済は順調に推移しており、7月には予想を上回るGDP成長率が示された。スティーブン・ポロズ総裁は、不確実性が利上げを妨げてはならないと述べている。先週の急激な減少から雇用の回復が見込まれるため、来週のカナダの IVEY PMIと雇用者数増減は、金融引き締めを支援する材料になるだろう。