※この記事は2018年10月5日に投稿されました。
現在、原油市場に影響を与えているファクターが2つある。1つ目は、数ヶ月後に現在の原油需要をカバーするだけの原油供給がなくなる「恐れ」と、2つ目は、この供給不足の懸念が原油価格を100ドル以上に押し上げるのではないかという「憶測」である。
ヘッジファンドや原油の商社は今後数ヶ月、米国、サウジアラビア、UAE、イラク、クウェート、ロシアによる原油の供給は、ベネズエラやイランの問題によって失われる原油をカバーできないと見込んでいる。この原油情勢は過去7日間でブレント原油を4.82%上昇させ、WTI原油を5%上昇させた。
サウジアラビアの石油相であるハーリド・アル=ファーリハは今週、ロシア・エネルギー週間で「6月以来、原油を求めてきたのは一カ国すらない」と述べたとPlatt社が伝えた。これは正しいかもしれないが実際はブレント原油は7月に入ってから10%上昇している。これは市場が需給ではなく、「恐れ」と「推測」によって動いているということを示している。
トランプ米大統領はOPECとサウジアラビアに対し、原油価格上昇に不満をぶつけている。米国のガソリンの平均価格は、1ガロンあたり3ドルであり、現在から中間選挙までにまだ原油は上昇余地を残している。
実際供給に関していえばサウジアラビアやロシアによって供給ができるというのが事実であるが、市場はそのような事実を無視している。OPEC加盟国と非加盟産油国は、9月の会合で原油増産が必要であることを公式的に指し示してはいないが、実際はサウジアラビアやロシアなどの動向は違う。
ハーリド・アル=ファーリハは水曜日、サウジアラビアの10月の生産はすでに1日あたり1070万バレルに増加していると伝えた。これは9月から1日あたり20万から30万バレル増えたことが反映されている。
同様に、ロシアは9月に1日あたり15万バレル増産することを発表している。プーチン大統領はロシアの原油生産を1日あたり30万バレル増やす可能性があると述べている。
他の原油増産のニュースとしては、サウジアラビアとクウェートの中立地帯での原油生産再稼働の合意がされそうである。しかし、原油生産はその中立地帯の調整や再稼働に最低でも6ヶ月かかり、合意後すぐに供給できないという側面がある。
市場はこれらの情報を重要視しておらず、原油価格は引き続き上がっている。
需要面からも原油価格が下がる要因がある。しかし、市場は需要面も重要視していない。EIAの 米国週間原油在庫量は大幅に上がっている。通常は在庫量が上がれば、価格は下がるものだが、そのようになってはいない。 米国ガソリン在庫はこの季節ではもっとも多い水準だ。普通の状況なら、石油製油所は在庫量を使い切るまで 原油 の買い付けを減らす。しかし、欧州では石油製油所のメンテナンスシーズンに突入し、原油価格は、需要を反映するはずだが市場には無視されている。
現在、米国のイラン原油制裁をはじめとする「恐れ」と「憶測」が原油市場を動かしている。いずれ供給状況が明確になれば「恐れ」は消えるだろうが、2つの疑問がまだ残っている。
どこまで価格は押し上げられるのか?そしていつバブルが弾けるのか?ということだ。