先週ドル円(USD/JPY)は11ヶ月ぶりの高値をつけた後、今週月曜日はアメリカとカナダの市場は休日のため休場であり、そのため流動性の少なさから大きな値動きが誘発された。
今週月曜日の下落によってUSD/JPYは20日間の移動平均線まで落ちた。この水準は最初のサポートと言えるだろう。もしUSD/JPYが112.80で反転するのなら114円に向かっていくが、割ってしまうと112円まで下落するだろう。
ファンダメンタル的には、米国経済は何も変わっていない。今週のインフレの指数(=消費者物価指数(CPI))は引き続き強いと予想され、米国連邦準備理事会(FRB)は今年もう一回 利上げを控えている。
しかし、中国とイタリアの問題は強まっており、 リスク選好度を悪化させている。中国株は一晩で4%下落し 中国人民元が弱まっている。米財務省は来週、為替報告書の発表によって1994年ぶりに中国を為替操作国と認定する可能性があり、中国人民元が下落する懸念を表明したことによって追い打ちをかけている。
これらを考慮すると、USD/JPYは、月曜日の下落は押し目とみて115円に向かっていくだろう。
(ユーロドル)EUR/USDは、ドイツ 鉱工業生産の弱い結果を受けて依然として売り圧力がかかっている。経済学者は鉱工業生産は7月に大きく減少したあと8月に回復することを望んでいたが、結果的に3ヶ月連続の減少となった。欧州中央銀行(ECB)によるタカ派的なコメントにもかかわらず、まだユーロ圏の経済指標の改善はみられていない。また、 BKForex.comの共同創業者であるBoris Schlossberg氏によると、「マッテオ・サルヴィーニイタリア副首相がイタリア政府はEUを離脱する計画はないと発言し、安心材料が出たにもかかわらず、イタリアの予算案危機は投資家を混乱させている。イタリア 10年債利回りは4.5%まで上昇しており、イタリアが経済的悪循環から回復することをさらに難しくしている。イタリア債の上昇は欧州中央銀行(ECB)にも影響を与えており、バランスシートを悪化させ、この流れが続くのなら、ECBが段階的に国債買い入れをやめるテーパリングを延期せざるを得ない可能性がある」と述べた。テクニカル的には、EUR/USDは下降トレンドであり、1.1650のラインをクリアしない限り下降トレンドは続き、1.13まで下落するだろう。
一方ポンドは、投資家がEU離脱に関しアイルランド国境問題が解決することを期待される中、下落は留まっている。今週はイギリスにとって大事な週である。英 貿易収支、英 鉱工業生産や、毎月の英 GDPが公表されるだけでなく、EU主席交渉官の ミシェル・バルニエが10日に欧州委員会に「英国との新たな関係に関する概略」を提示する予定である。(追記:この提案に変わり、合意なき離脱の場合も含めEU側の備えの議論が中心になることが明らかになった)しかし、今週この自由貿易協定を合意することはないだろう。英国政府関係者によると、まだ解決していない大きな問題があるという。そして、メイ英首相が「合意なき離脱(ノーディールブレクジット)」の可能性もまだあると宣言していることも忘れてはならない。
中国の経済的打撃にもかかわらず、 豪ドルとNZドルはドルに対し反発している。一方カナダ・ドルは再び下落に転じている。
これらの国々で大きな経済指標の公表はなく、豪ドルとNZドルは中国株の下落と同調して悪影響を受けるはずであった。豪ドルやNZドルが回復しているのをみると、いかにこれらの通貨が売られ過ぎであったかを物語っている。しかし、米国がいまだ中国と貿易戦争を続けている限り、豪ドルとNZドルの大きな回復は見込まれないだろう。一方カナダドルは、確実視されているカナダ銀行による今月の利上げが反映されて上昇すると考えられている。また、メキシコ湾岸を襲うハリケーンは 原油価格を押し上げる要因になり、これはカナダドルに追加的な圧力になりえる。