9日EURとGBPはオプション満期である日本時間23時あたりで跳ね返った。また、米国連大使のニッキー・ヘイリー氏の予期しない辞任があった。9日の為替相場の動向は、ヘイリー氏の辞任によるものなのか、オプション満期によるものなのか分からない。どちらにせよ、これらが短期的に通貨に影響を与えたことは間違いない。
9日反発したが、イタリア問題や米中の貿易戦争によって、ユーロがや他のハイベータ通貨の上昇は長くは続かないという見通しは変わらない。
米国債利回りは9年来の高値を打った後、下落基調である。 USD/JPYは113円以下まで押し下がっている。カプラン総裁の弱いタカ派のコメントは何も作用しなかった。カプラン総裁は中央銀行は中立金利にするべきだと考えており、段階的でゆっくりな利上げを主張している。
一方で、トランプ米大統領は中国に対し姿勢を変えることはない。トランプ米大統領は中国は合意に対し準備できておらず、それどころか中国が報復措置をとった場合2670億ドルの追加関税を課す準備ができていると述べた。中国は9日、輸出を加速させるために人民元を弱めることはしないと述べた。しかし、米財務省は1994年ぶりに中国を為替操作国と認定する可能性があり人民元に追い打ちがかかる。
利上げに肯定的な見込みとそれに対する米ドルの見通しが変わるような要因はないが、リスクオフによってUSD/JPYが押し下げられている。 生活社物価指数は水曜日に発表が控えており、上昇が予想されている。これによって強い消費者物価指数(CPI)が予想され、USD/JPYで反転が起こる可能性がある。
ユーロは6週間の安値を打ってからはさほど変わらず9日を終えた。2回連続でドイツの経済指標は残念なものだった。貿易収支は黒字幅増加したが、 輸出と輸入は減少した。しかし、重要なのはイタリア問題であり経済指標ではない。イタリア債の上昇を止める試みとして、トリア財務相は財政赤字を目標に戻し、ドイツ債とイタリア債の利回りのスプレッドが400または500ベーシスポイントに達するようならばイタリア債の上昇を抑制するために、なんとしてでも財政目標を達成すると述べた。財政赤字の拡大する可能性は強く、EUR/USDの圧力になっている。ユーロの回復は1.1550-1.1580と限定的だと考えられる。
9日もっとも強かったのは英ポンドだ。ポンドはEU離脱(ブレクジット)の憶測によって取引されている。EUと英国の交渉が進んでいるという報道はGBP/USDを1.31以上に押し上げている。しかし、公式的には何も発表されていない。EUは新たな自由貿易協定案を水曜日に提示すると予想されており、ポンドのパフォーマンスから判断すると、投資家はこれに期待していると考えられる。英国の 貿易収支、 鉱工業生産や毎月のGDPレポートが水曜日に予定されているが、これらの指標はブレクジットの進展には及ばない影響力だろう。
3つの商品通貨のパフォーマンスは良かった。そのなかでカナダドルは、住宅着工件数が弱くなり1.30を超えることはなかった。また、米ドルの下落と 原油価格の上昇はカナダドルを助けている。
もしUSD/CADが月曜日の1.2935の安値まで下落するのなら、次のストップは1.2900だろう。豪ドルとNZドルは2日連続で反発している。豪ドルは若干良かった企業信頼感指数によって支えられている。しかし、イタリア問題や米中間の貿易戦争によって、ユーロとこれら商品通貨の下降トレンドは続くと考えられている。