今週水曜日に行われる、今年度最後のFRB(米連邦準備制度理事会)の政策決定会合を前に、市場では今年度4度目の利上げが行われるとの見通しだが、ドル売りが先行している。過去2年間では、中央銀行の政策決定が経済成長を加速させ、ドル高、株高へと貢献してきたが、利上げは必ずしもドルにとって好影響がもたらされるという訳ではない。
しかし、ここ3ヶ月間における株式市場、ドル相場、米国経済は下落局面へと転じている。経済への警戒感が株式、為替市場へ影響をもたらしているのだ。その警戒感は、製造業や農業、住宅市場の減速から表れ始め、その後米中貿易戦争の激化や、FRBの利上げに対する米国経済の成長維持への投資家懸念が強まったことで、株式市場が急落することとなった。下落は株式市場から始まり、その後FRBが米国経済の成長に懸念を表したことで、ドル、米国債利回りは下落することとなった。FOMCでの政策金利の決定を前に、一部投資家はドル売りを行う一方、パウエルFRB議長が中立金利に近づいているとの表明をし、追加利上げを行わないのではないかという様子見ムードでいる投資家もいるだろう。FRBは2019年度に3回以上の利上げを見込んでいたが、利上げの見通しの変更によって今後のドル相場は大きく左右されるだろう。
パウエルFRB議長は先月に金利は中立金利を下回っていると述べたが、FOMCメンバー全員が同氏の考えに同意しているわけではない。もし仮にFRBが利上げペースを緩めた場合でも、来年度に利上げを行う中央銀行はFRBだけである可能性がある。こういった理由によって、一部の投資家はFOMCの発表まで様子見ムードを続けている。
今月のFRBの利上げを織り込んで取引するのであれば、以下の複数のポイントを検討しなければならないだろう。まず一点目として、市場では25ベーシスポイント(0.25%)の利上げを織り込んでいるため、今回のFOMCで利上げが発表されたとしても予想通りの反応となることだ。次に、大半の投資家はFRBが今後タカ派的な考えは示さないとみているため、仮に追加利上げの必要性や2019年度に3回の利上げを行う考えを表明した場合、ドルは急騰すると考えられる。そして、FRBは2019年に3回の利上げ見通しを立てているが、FF金利先物は来年度の利上げがたったの1回で織り込まれた水準となっており、予想が大きく外れた場合、為替市場は大きく変動するだろう。FRBのドットプロット(FOMCメンバーが向こう数年間のFF金利予想を分布図で示したもの)が3回から2回へと下方修正された場合、ドルは下落することとなるが、その下落幅はFRBの発表内容によるだろう。現在、株式、米国債利回り、ドル相場が下落局面となっていることから、FRBが今すぐ利上げへ姿勢を強める理由はない。利回りの低下やドル安は、株式市場を下支えしてくれる。
月曜日のUSD/JPY相場は大きく下落し、FOMCを前に112.40円をテストする必要があるが、政策金利が決定されるまではその水準を下回ることはないと考えられる。下図を参照してみると、株式市場や利上げの弱気予想が反映されているほど米国経済は低迷しているわけではない。そのため、FRBが今後極端なハト派発言を行わなければ、USD/JPYの下落もすぐに回復する可能性がある。だが、その他のEUR/USD、GBP/USDといった通貨ペアに関しては違う展開となるだろう。