フロリダ州は理由もなく「陽光の州」と呼ばれているわけではない。しかし、オレンジジューストレーダーは、豊作によって柑橘系製品の値段がを直近3年間の最安値まで崩落したため、フロリダ州への寒波によって豊作の抑制を望んでいる。
冷凍濃縮オレンジジュース(FCOJ)先物はフロリダ州の気象状況に非常に敏感に反応する傾向がある。冬場はしばしば作物の凍結によって市場が大幅に反発するのだが、今回はそういった状況が起こっていないのである。
シカゴでブローカー業務を行っているPrice Futures Groupのアナリスト、ジャック・スコヴィル氏は、現在のフロリダ州のオレンジ市場の状態について次のように述べる:
「フロリダ州の気候は温暖でほぼ乾燥している状態だ。生産状況は、小さいサイズからかなり大きいものまで、豊富に生産できている」
12月22日に米政府機関の一部が閉鎖されるまでに発表された最新の農作物レポートでは、米農務省は今シーズンのオレンジ生産量が347万トンになる見通しを立てている。これは、ハリケーン・イルマによってフロリダ州の多くの果樹が破壊された2017年と比較して、70%増加している。
オレンジの豊作によるFCOJ先物価格の下落
オレンジの豊作は、ジュース加工会社に最大限の販売を狙うフロリダ州の柑橘系栽培農家にとっては良いニュースとなるかもしれない。しかし、豊作は、フロリダ州の生産量によって取引量が決まるFCOJ市場にとってあまりうれしいニュースではない。
FCOJ先物は12月の1ヶ月間で13%の下落幅を見せ、2018年終わりには8%安という結果で終わった。これでも2017年に比べると高水準であった。2017年にはハリケーン・イルマの影響によって数ヶ月間の価格上昇があったものの31%安となっていたのだ。
2019年初めのFCOJは高値を望むジューストレーダーの望みとは裏腹に、下落している。
フロリダ州の温暖気候の継続によって、トレーダーは買い持ちポジションを取っており、ニューヨークのインターコンチネンタル取引所の3月限取引は34ヶ月間ぶりの最安値である、1ポンド=1.1865ドルを今週初めにマークした。
価格は下落局面にある
Price Futures Groupのスコヴィル氏は次のように述べる:
「価格トレンドは日足チャートで下落局面へと転じ、週足チャートでは依然として下方トレンドを続けている」
2019年に入って現在までのところ、ニューヨーク又はロンドンで取引されているコモディティ市場33種ほとんどの価格は上昇している。原油や天然ガスといったエネルギー関連コモディティは、2桁成長となっている。しかし、FCOJは年初2週間で4%以上の下落幅と最悪のパフォーマンスとなっている。Investing.comのデイリーテクニカル分析としてもFCOJは「強い売り」のレーティングを付けている。
コモディティ先物市場で30年間取引を行っている個人トレーダーのアンドリュー・ヘッチは、次のように述べる:
「FCOJは価格変動時に、価格差の影響を受けやすい脆弱な市場である。流動性が低いため、私はFCOJでの取引を誰にもお勧めしない」
ブラジル生産者との競争に苦しめられる
不振にあえいでいるのは先物市場だけではない。フロリダ州での生産増にもかかわらず、実際のジュース市場はブラジル生産者に支配され続けているのである。ブラジル生産者は、低価格かつ米国産と同等の質で、ペプシ(Pepsi) (PS:PIP)の「トロピカーナ」やコカ・コーラ(Coca-Cola)(NYSE:KO)の「Simply Orange」といったブランドに供給しており、米国農家の主要な競争相手となっている。
フロリダ州のボカラトンで農家へのコンサルティングを行う、Hackett Financial Advisorsのショーン・ハケット氏は、今回の冬場のオレンジ生産増によって価格が急落し、「理由もなく急落しすぎた」と述べる。
「1月後半から2月にかけて、フロリダ州の柑橘類栽培地域においては寒気が訪れる可能性が高い時期であるのに、オレンジジュース市場は下落してしまった。これに加えて、ブラジルで増加している干ばつによって、晩春に収穫されるはずの収穫量を減らしてしまう可能性があるため、干ばつの状況に注意しなければならないだろう」