原油価格は昨年末下落から回復してきているが、トランプ米大統領は再び価格上昇を抑えにかかっている。
同氏は北朝鮮の金正恩委員長との非核化に向けた米朝首脳会談を控える中、25日に自身のツイッター上にて原油価格は高すぎる、OPECはもっと価格を抑えるようにするべきだと発言した。
その結果、米WTI原油と英ブレント原油は3%以上の下落幅を見せた。 直近2週間の上昇幅を一気に打ち消し、ブレント原油は2ヶ月間で最大の日中下落幅を見せた。
トランプ大統領のツイートや原油市場に詳しい人向けに、原油市場とトランプ大統領の動向をまとめたものが以下である:
昨年、米国のイラン原油制裁による供給不足が懸念されるとともに、サウジ率いるOPECとロシアは、原油の減産によってWTI原油を1バレル77ドル近辺に、ブレント原油を86ドルを上回る水準にまで引き上げようとしていた。当時、同氏は米国政府とは非公式に、自身のツイッター上で原油の高止まりについて非難していた。
OPECとOPEC非加盟産油国(OPECプラス)は、昨年の夏にトランプ大統領に譲歩する形で、減産の一時中断と増産を決定した。同氏は昨年11月の中間選挙の時期に、脆弱な米国経済の回復と原油価格の高騰による影響を危惧していた。
しかし、減産の一時中断が決定された直後、同氏はイラン産原油禁輸の一部免除を突如発表し、今度は原油の供給過剰が懸念されるようになった。その結果、WTIとブレント原油は10月上旬からクリスマスまでの間で約40%近く下落した。
突然の同氏の行動に憤りを感じたOPECプラスは、12月上旬に翌月の1月から減産を行うことを決定した。同氏のベネズエラに対する新たな原油制裁と相まって、原油価格は年初来で20%以上反発している。直近2ヶ月間で同氏は原油について全くコメントしていなかったが、突如25日に再び発言を行ったのである。
トランプ大統領のOPECへの警告 - 独占禁止法でOPECを訴える可能性
トランプ大統領の最新の原油価格に対する非難は次の通りである:
同氏の発言は26日のアジア時間での原油取引で原油安を引き起こした。トレーダーやアナリストは、トランプ大統領とOPEC間での新たな論争による長期的な影響について議論をしていた。
それは、同氏がOPECの減産に対して訴訟を行う可能性である。
米議会委員会は2月7日に石油生産輸出カルテル禁止法(NOPEC)法案を承認し、米司法省は「外国政府と共同して」「原油、天然ガス、石油製品の生産や流通の制限」を取り締まることができる。また、これらのコモディティの「価格設定や維持」も取り締まることができる。同法案は、原油高に向けたOPECの減産計画にとっての脅威となる。
ANZ銀行の調査によると、同氏はOPECに対して警告していると述べられている。
「米議会でOPECを独占禁止法で訴えることができる法案が承認されたため、今回こそは重大な影響が生じる」
イラン制裁を新たに免除する可能性
ニューヨークのヘッジファンドAgain Capitalの共同設立者であるジョン・キルダフ氏は、トランプ大統領の新たな決断によって、OPECは苦境に立たされるかもしれないと話す。イラン産原油禁輸の新たな免除によって、原油市場で更なる供給過剰がもたらされ、価格が暴落する可能性がある。
タンカーを追跡したデータの基では、イランの原油輸出量は市場予想では100万バレル/日を下回るとされていたのに対して、1月が110~130万バレル/日、2月が平均125万バレル/日となっていた。
キルダフ氏はCNBCの取材に対して次のように語った。
「トランプ大統領のツイートの意図を考慮すると、2つのことが読み取れる。まず、トランプ氏はサウジアラビアに気づいてもらいたいということである」
「そして、イラン制裁の新たな免除が検討されていること。これが同氏のツイートから読み取れる2つ目の事象である」
OPEC自体は同氏の最新のツイートに対してまだ何も反応していない。
OPECが12月に原油価格を引き上げるために再び減産を行うと発表した際、サウジのファリハエネルギー相は、トランプ大統領の発言はOPECの決定に重大な影響を及ぼさないと発言していた。
「原油の供給量を決定する際に、トランプ大統領は大勢の人がいる中での1人に過ぎない」
OPECはトランプ大統領に屈しない、という人もいる
ノースカロライナ州ダーラムに拠点を置くICAPのエネルギー先物ブローカー、スコット・シェルトン氏はOPECは対抗するだろうと考える一人である。
トランプ大統領のツイートで原油価格がこれほどまでに下落するとは「本当に馬鹿げている」とシェルトン氏は25日に答えた。しかし同氏は、市場は過剰に反応しすぎており、正常な状態に戻る必要があるとも考えている。
「私は米原油在庫統計が上昇するだけで、WTI原油は55ドルを下回る水準まで下落すると考えている」
シカゴのPrice Futures Groupのフィル・フリン氏は、OPECはトランプ大統領の言いなりにはならないと考えるもう一人の人物である。
フリン氏は次のように述べた:
「OPECは1月に生産量を4年間の最低水準である3083万バレル/日にまで減産を行い、現在は原油を増産する意向を全く示していない。トランプ大統領は自身の都合を好きなだけツイートできるが、同氏がOPECに減産姿勢を変える方法は限られている」