トランプ米大統領は、夏季の原油価格の高騰を緩和すべく、サウジアラビアが期待しているイラン産原油の全面禁輸措置を行うなど奔走している。同大統領は、サウジアラビアに対し原油価格を抑えさせるため、リビア武装勢力に協力する姿勢を示した。
サウジがトランプ大統領に応じるとなると、原油価格を維持すべく過去5か月にわたり努力してきた意義に疑問が呈されることになる。
イラン産原油は5月2日を最後に禁輸となるが、どの国がどの程度適用除外されるのか注目が集まっている。
米国の対イラン政策への驚き
CNNによると、マイク・ポンぺオ国務長官は、イラン原油を5月2日をもって禁輸とし、延期する予定もないと発表した。また、この禁輸は「イランの悪行に制裁を加え、平和と安全への脅威に対処する」ためのものであると述べた。
年初来でWTI原油は44%高、ブレント原油は37%高、ガソリンに至っては60%以上上昇している。
ここ数か月、トランプ米大統領はOPECに対し、原油急騰をクールダウンするため減産を取りやめる、あるいは緩和するように圧力をかけてきた。同氏は2020年の再選を目指し、原油価格を抑制して米国の燃料価格を上昇させようと目論んでいる。ガソリン店頭価格は今年およそ25%上昇している。
6か月前、イラン産原油を禁輸できるとの見通しをもって、トランプ大統領は増産へとOPECをミスリードした。その後米国はイランへの制裁放棄を取りやめ、原油市場は飽和した。結果、原油取引史上最短での価格崩壊を招いた。
トランプ氏を無視できないサウジ
これ以来、サウジはトランプ氏に再び取り込まれることのないようにしてきた。
とはいえ、米国が本当にイラン産原油を全面禁輸にするとなると、OPEC産原油への需要を無視することは難しいだろう。
数十年にわたり両国は協力し、イランの力が中東で台頭するのを牽制してきた。
双方はイスラム国に対しても協力して立ち向かっている。.
サウジにとっては皮肉なことに、OPECの主要メンバーであるイランと何十年も敵対している構図となっている。
トランプ大統領は、核開発の制限をすることで得た見返りとして原油を輸出するというオバマ政権との不当な合意をし、テロ事件への支援を行うロウハニ政権を罰することは彼の役割と考えている。
サウジがOPECの減産を継続すれば、トランプ政権は苦境に立たされることになるだろう。
ブレント原油が1バレルあたり80ドルの目標をおおむね達成した一方で、原油価格を支えてきた同じ資金が逆に価格を下落させるとの懸念から、サウジは減産を発表していない。
イランに対する決定にプーチン大統領が対抗する可能性は低い。OPECとロシアの減産合意により、サウジはロシアを米国よりもサウジ側に引き寄せたといえる。
サウジが米国によるイランへの制裁に報いないとすれば、原油市場を揺るがすトランプ氏の独走を引き留めるため、減産停止の発表を留保し続けることもありえそうだ。
トランプ氏の対OPEC別策:リビア
国際社会から承認されているリビア暫定政権を追放しようとしている、ファリハ・ハフタル氏をトランプ氏が支援するというニュースも衝撃的だった。同氏のねらいは、リビアによる日量約120万バレルの原油供給を損なわないようにすることである。
同氏は、日量35万バレルを生産する西リビアにリビア国民軍(LNA)が進軍している脅威を回避しようとしている。リビア国民軍は、同国の輸出のうち日量70万バレルを占める東部の原油インフラも支配下に置いている。国民軍は、日量約40万バレルを生産する、ハリファ氏統治下のリビア西部方面にも爆撃した。
トランプ大統領は先週月曜日、ハリファ氏と電話で会談した。当局によると、大統領は
「ハリファ氏が、テロと闘いリビアの原油資源を保護する上で、非常に重要な役割を担っていることを認知している。また双方は、リビアが安定した民主的政治システムへ移行することへの認識を共有した」という。
S&P Globalのエネルギーメディアユニットによると、ホワイトハウス広報のホーガン・ギドリー氏はそれ以上のコメントを差し控えたという。
先週、ウォールストリートジャーナルが報じたところによると、ハリファ氏は暫定政権に対抗するためサウジから数千万ドルの支援を水面下で得ているという。原油供給がさらに脅かされれば、価格を高止まりさせたいサウジの目論みが支えられることになるだろう。
詳細は明らかになっていないものの、トランプ氏がサウジに増産を促していることは確実だ。
原油価格が上昇するのか、あるいは下落するのか見極める上で、サウジアラビアの反応が鍵になるだろう。