投資家は金曜日の 非農業部門雇用者数発表前に米ドルを買い続けた。パウエルFRB議長の楽観的な見方は、前回より向上した非農業部門労働生産性と製造業新規受注により裏付けられた。失業保険申請件数はわずかに上昇したが、 4週平均は歴史的な低さであり、強い雇用統計への期待につながった。強い米ドルに最も打撃を受けたのはユーロであるが、金曜日の雇用者数が予想を上回った場合、EUR / USDが1.11に下落するだけでなく数週間のうちに1.10をつけることもあり得る。一方、ユーロ圏の経済指標は、3月のドイツの小売売上高と製造業PMIの悪化など弱いままだ。ユーロ圏全体では改善したが、圏内最大の経済が戻らなければ、ユーロ圏経済の回復は持続可能とはいえない。この懸念は木曜日にEUR / USDの急落を招き、さらなる下落の可能性も残している。
米国の 非農業部門雇用者数だけが、金曜日の EUR / USDにとって重要となるわけではない。4月の ユーロ圏CPIの速報値も発表される予定で、もし数値が低くなれば、雇用統計前にユーロの下落につながる可能性がある。欧州中央銀行には利下げの余地はないが、2020年半ばまで利上げがないことを明らかにした。6月のインフレ率の低下は、より寛大な条件のTLTROにつながる可能性がある。対照的に、米国雇用統計が良好な結果になれば、金融引き締めを新たに想起させる可能性がある。
毎月、我々は非農業部門雇用者数を予想するのに役立ついくつかの指標に注目している。今月は ADP非農業部門雇用者数、失業保険申請件数 、失業保険継続申請件数、消費者信頼感が強い結果となった。今回は3月とほぼ同じ雇用者数の増加を予想しているが、ドルの上昇に本当に寄与するのは賃金があがることだ。平均時給は前月の低下から回復するだろう。4月上旬に失業保険申請件数が50年ぶりの少なさになったことで、強い労働市場の状況が時給を押し上げるはずだ。非農業部門雇用者数が16万を超え、平均時給が0.3%以上であるならば、 EUR / USDは下落し、 USD / JPYは112円へと上昇するだろう。平均時給の伸びが足りない場合、EUR / USDは上昇するだろう。
強い雇用統計を支持する指標
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ADP非農業部門雇用者数は15万1000人から2017年2月以来の27万へ増加
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4週平均の失業保険申請件数は21万4000件から21万2500件へ減少
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失業保険継続申請件数は171万から167万件へ減少
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4月の消費者信頼感は上昇
弱い雇用統計を支持する指標
- ミシガン大学消費者信頼感指数が低下
- チャレンジャー人員削減数は10%へ上昇
- ISMの雇用指数が大きく低下
一方、 ポンドトレーダーにとって、イングランド銀行の低いインフレ見通しはカーニー総裁の前向きなコメントとGDPの改善を覆い隠した。イングランド銀行は現在、インフレ率が年末には1.6%になると見ており、目標の2%を大きく下回っている。そして2020年のインフレ率の予測も引き下げた。イングランド銀行は GDP予想を上方修正し、インフレ率と需要が2、3年で強く上昇するだろうという自信を表明したが、現在の価格圧力の欠如はイングランド銀行の政策金利を据え置きのままにさせるだろう。カーニー総裁によると、投資はブレグジットの不確実性の影響を受け続けている。 総裁の予想(ブレグジット協定合意の条件で予測されている)が正しいのであれば、利上げが必要になり、インフレ率も上昇するはずだ。これらのタカ派なコメントは 欧州中央銀行、 オーストラリア準備銀行、 カナダ銀行、ニュージーランド準備銀行とは一線を画している。イングランド銀行は現在利上げをしないかもしれないが、次の動きが利上げであると確信しているのは間違いない。