トランプ米大統領は5月、イラン産原油の全面禁輸を開始した。
対するイランのビージャン・ナームダール・ザンゲネ石油相はイラン産原油輸出について「見通しは明るい」と発言している。
両者の発言は対立しているが、真実はどこにあるのか。
6月20日、イラン革命防衛隊はホルムズ海峡上空で米軍の偵察ドローンを撃墜したと発表した。
禁輸と核合意を巡る応酬による地政学的リスクで、原油市場が今後どう影響を受けるかは未だ不透明だ。
イランは5月12日にサウジ、イラン、ノルウェーの石油タンカー計4隻がホルムズ海峡沖で攻撃された事件への関与も疑われている。
これらの対立は、どのように終息するのか。そして勝利を収めるのは誰なのか。
米国とイラン、高まる不確実性
米イラン関係の不確実性は、WTI原油やブレント原油価格の重しになっている。
OPECプラスは2日、協調減産を2020年3月まで延期することで合意した。原油価格を支持する狙いがあったが、現時点では功を奏していないようだ。
米イラン関係のリスクは原油市場にとって悪材料となっている。一方で、トランプ米大統領は2020年大統領選を控え、米ガソリン価格の引き下げを望んでいる。
イラン産原油を全面禁輸する一方で原油価格の引き下げを要請するトランプ米大統領は自己矛盾していると言わざるを得ない。
また米国は核兵器開発を阻止すべく、イランに対し考えられうるうちほぼすべての制裁を課している。
イラン核合意は2015年、オバマ大統領時代に実現された。参加国は他にドイツ、イギリスや中国など。
だが今回イランは米国と交渉する代わりに、核合意で決定された上限を超えてウラン濃縮を行う道を選んだ。
トランプ米大統領は7月7日、「イランは気をつけた方がいい。ウラン濃縮に着手した理由は分かっているが、口には出さないでおく。イランも慎重になるべきだ」と警告した。
イランは強敵
トランプ米大統領はイランに制裁を加えながらも、武力行使は望んでいないと発言している。対中国・メキシコと同じような手段を取っているようだ。
しかしイランは米国側の歩み寄りをことごとく却下するかもしれない。
英海兵隊特殊部隊は4日、英領ジブラルタル沖でイランの石油タンカーを拿捕した。米国の禁輸制裁に違反している可能性があり、米国とイランの対立は全世界的に拡大している。
拿捕されたタンカー「グレース1」は200万バレル余りの原油を輸送していたという。イラン側は英国に対し報復措置を取る意向を示している。
一方、スペインのボレル外相代行によると、米国が英国に対しタンカーの拿捕を要請したという。
イランはウランの濃縮や研究は非軍事目的だと長らく主張してきた。米国による禁輸制裁が撤回されない限り、核合意に立ち戻ることはないとの姿勢を示している。
業界筋によると、5月に禁輸制裁が強化されたことで後、イランの6月原油輸出量は日量30万バレルへと減少したという。ロイターが報じた。なお2018年4月の輸出量は日量250万バレルであった。
トランプ大統領の制裁はイランの天然ガス事業にも影響を及ぼしている。
2018年12月、中国石油天然ガス集団(CNPC)がイランのサウスパース天然ガス田事業への投資を停止したとの報道があった。
これは仏トタル(NYSE:TOT)に代わりCNPCがサウスパース事業を先導することになったとイラン石油相が発言した1か月後のことであった。
米国とイラン、どちらが先に仕掛ける?
危機的状況の中、イランは強気な姿勢を崩さない。イランのザンギャネ石油相は国営テレビで「原油輸出が回復する見通しは明るい」と発言した。
また、ザンギャネ石油相はサウスパース天然ガス事業を再開するようCNPCと協議を行っているとも明かした。
「中国はイランの味方であり、関係を断つようなことは選ばないだろう。我々は代替案を探している」
一方で、中国はトランプ米大統領が核合意を脱退したことを非難している。
この持久戦を耐え抜くのは米国か、それともイランか。My guess is as good as yours.
答えは誰にも分からない。