20日は原油価格が大幅に下落する一方、米ドルは再び値を上げた。また、カナダドルは歴史的な原油安を受け、売りが加速した。原油価格は300%以上下落し、史上初のマイナスとなった。BKアセットマネジメントのBoris Schlossberg氏が述べるように、「サウジアラビアとロシアの価格競争による原油需要の崩壊」が原油安の要因とされているが、それだけではないだろう。今回の原油安が産油国へ与える影響は非常に大きいものが予想される。今後24時間以内に米国やOPEC、OPECプラスなどが何らかの声明を出し、原油価格を下支えすると見られる。
今回の原油安を受け、一部のカナダや米国の原油関連企業は倒産に追い込まれるだろう。カナダにおける小売売上高とインフレ率は、今週後半に発表予定である。小売売上高は2月のデータではあるが、軟調な結果となることが予想されている。
米ドルは国債利回りの下落や株安をよそに、主要通貨に対して値を上げた。過去数週間、新型コロナウイルスの流行が米国内で加速する中、なぜ米ドル高になるのかについて再三語ってきた。ジョンズ・ホプキンズ大学によると、米国における新型ウイルス感染者は75万人を上回り、スペインでは20万人を上回っている。しかし、米ドルは安全資産であり、米経済の回復なくして世界経済の回復は起こりえないとの見方が一般的である。さらに、ドナルド・トランプ米大統領は経済活動再開に向けた指針を示し、都市封鎖の段階的な解除への期待が高まっている。トランプ大統領は先週末、ドルは非常に強く、強いドルが望ましいと述べた。17日にはFRBが国債買い入れを継続すると明らかにした。
20日に米ドル高となった要因
- 株価は500ポイント下落、安全資産のドルが上昇
- トランプ大統領による、強いドルは全体的に非常に良いとの発言
- FRBの国債買い入れの継続
- 経済活動再開にむけた指針の発表
今週発表の米経済指標は少なく、米ドルにとって材料は乏しいだろう。他方、欧州やカナダにおいてはたくさんの経済指標が発表されるため、ユーロやポンド、カナダドルに注目が集まっている。
欧州では、4月PMIや独ZEW景況感指数、IFO景況感指数が今週発表予定。20日発表の貿易収支は予想を上回ったものの、4月のデータでは軟調な結果が見込まれる。欧州では依然として厳しいロックダウンが続いており、ドイツは依然として移動制限を緩和する計画はないとした。また、スペインとイタリアにおいては2021年まで、移動制限を実施する可能性があるとされている。テクニカル分析の観点では、ユーロ/米ドルは1.08まで下落することが予想されている。英国では、4月PMIや小売売上高、失業保険申請件数、インフレ率などが発表予定。これらは、軟調な結果が見込まれており、ポンド/米ドルはさらに下落する可能性がある。
豪ドルとNZドルの見通しはそれほど暗くない。21日の10時30分にRBA議事要旨が発表され、14時からロウRBA総裁が発言予定である。さらに、豪州とニュージーランドは新型ウイルスの抑制に成功しつつある。豪州のノーザンテリトリーと南オーストラリア州における新規感染者数は0である。ニュージーランドも来週、経済活動再開の見込みである。また、NZ消費者物価指数は予想を上回り、NZドルは値を上げている。