先週金曜日に発表された11月の雇用統計は労働市場の回復が減速していることを示す結果となり、非農業部門雇用者数は10月の546,000人から11月は210,000人に留まった。これは市場コンセンサスであった550,000人の半分にも満たない水準だ。雇用統計の発表直後、米ドルは弱含んだものの、その後は直ぐに回復した。それには3つの理由があるものと考えられる。
1.失業率は4.2%に改善し、コロナ禍の発生以来で最低値となった。エコノミストはより控えめな改善を予想していたが、労働参加率が上昇していることから、失業率の低下は職探しをそもそも諦めた人が増えたことによるものではないことを示唆している。
2.これまでの結果を合計すると、コロナ禍によって失われた職の80%以上が回復した。
3.FRBによる利上げ期待は依然として高く、先物市場では来年6月に25bps、11月に50bpsの利上げを見込んでいる。
平均時給の上昇が落ち着いたことには安心はしていないものの、米ドルが下落からすぐに反発した理由としては、FRBが今月の会合でテーパリングのペースを加速する上で、今回の雇用統計が十分な好材料になったことを示唆している。サービス・セクターの活動も回復し、ISM非製造業指数は66.7から69.1に上昇した。
対照的に、カナダの雇用統計は非常に堅固なものとなった。11月には150,000人が新たな雇用先をみつけ、これは先月よりも5倍高い値であり、市場予想の35,000人を大きく上回る結果である。失業率も6.7%から6%に低下し、これは2020年2月以来の低位な値である。対照的な両国の雇用統計を受けて、米ドル/カナダ・ドルは急落し、米ドル/カナダ・ドルが4番天井となっても驚きではない。今回の雇用統計は、会合を控えるカナダ中央銀行がタカ派なスタンスを維持するのを正当化するものとなるだろう。
豪ドルおよびニュージーランド・ドルは米ドルの強含みおよび中国における軟調な経済指標の 発表を背景に急落した。中国では11月のCaixin製造業PMIが低下し、同国の経済活動が減速していることを示すものである。オーストラリア準備銀行は金融政策の発表を控えている。オミクロン株の出現、大きく変動する株式市場、中国での軟調な経済指標を勘案すると、同準備銀行は慎重なスタンスを維持するだろうとみている。
ユーロ圏および英国でのPMIが下方修正されたことを受けて、 ユーロおよび英ポンドは低下した。イングランド銀行のMichael Saunders氏はオミクロン株による経済への悪影響は12月の会合を控え、大きな懸念事項であると話した。ドイツのZEW景況感指数、英国の工業生産指数や月次GDPレポートなどにも注意が必要だ。米国では11月の消費者物価指数およびミシガン大学消費者信頼感指数に注目したい。