今週、ロシアのプーチン大統領がウクライナ東部の2つの分離独立地域を承認したことで、米国(および北大西洋条約機構(NATO)の同盟国)とロシアの緊張は劇的に高まった。プーチン大統領はまた、分離主義地域にロシア軍を配備し、緊迫した状況が全面戦争に発展するのではないかという不安を煽った。
西側諸国はロシアへの制裁圧力を強めているが、米国政府は水曜日に追加制裁を導入することを示唆した。
すでにインフレ率の上昇、差し迫った利上げ、そしてグロース株の寵児たちの業績悪化に晒されている投資家に対して、ウクライナ情勢の悪化はさらに市場の動揺をもたらしている。
しかし、すべてのセクターが現状からマイナスの打撃を受けているわけではない。特に紛争が激化する可能性があることから、防衛セクターの株価をプラスに押し上げる可能性がある。
ここでは、地政学的緊張の継続から恩恵を受けると思われる有力セクター3銘柄を簡単に紹介する。
1. Raytheon Technologies
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時価総額:1389億ドル
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年初来のパフォーマンス:+8.7%
Raytheon Technologies (NYSE:RTN)は、米国の大手防衛請負業者および産業企業で、兵器および軍事・商業用電子機器の製造を中核とする企業である。
この大手防衛企業は、世界最大の誘導ミサイル製造企業であり、ミサイル防衛システムの主要メーカーでもある。同社は、レーダー・ネットワークやパトリオット・ミサイルなどの弾道ミサイル迎撃ミサイルを製造している。また空対地、地対空、空対地、地対地精密誘導ミサイルを幅広く製造も手掛けている。
RTXは年初来で8.7%上昇し、火曜日の終値は93.54ドルで、2月10日につけた最近の最高値96.96ドルに遠く及ばない。現在の水準で同社の時価総額は1389億ドルに達している。
ミサイル防衛システム、精密兵器、レーダー、指揮統制システムの世界的な主要メーカーの1つである同社は、今後数週間のうちにさらなる地政学的な不確実性をヘッジしたいと考える投資家にとって良い選択肢になるかもしれない。
また1月25日に市場の予想を上回る第4四半期決算を発表したが、主要事業の業績がまちまちだったため、収益は予想よりも低位な水準であった。
主要部門のうち、ミサイル&防衛部門とインテリジェンス&スペース部門の売上高は前年同期比でそれぞれ8%と2%減少したものの、軍用機用の航空宇宙システムを製造するCollins Aerospaceは13%、航空機エンジンの設計・製造を行うPratt & Whitneyは15%の売上増となった。
これらを考慮すると、InvestingProのモデルによれば、RTX株は今後12ヶ月で約17%上昇し、1株当たり109.43ドルに近づく可能性がある。
出所:InvestingPro
2. Lockheed Martin
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時価総額:1051億ドル
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年初来のパフォーマンス:+8.6%
Lockheed Martin (NYSE:LMT)は、航空宇宙、軍事支援、セキュリティ、テクノロジー産業における世界有数の企業の一つである。米軍とそのNATO同盟国が主要な買い手であるF-16、F-22、F-35戦闘機など、幅広い軍用機の開発・製造をリードする企業としてよく知られている。
西側諸国とロシアの敵対関係が激化する中、2022年の株価はこれまでに8.6%上昇し、同時期のダウ工業株30種平均とS&P500のリターンを大きく上回った。
同社の株価は、2020年2月に442.53ドルの最高値を記録したが、昨日は386.20ドルで終了し、時価総額は1,051億7千万ドルとなっている。
戦闘機に加え、戦闘艦、極超音速ミサイル、ミサイル防衛システムなど、様々な軍用品や先端技術の世界的製造リーダーであることから、今後数週間、株価の上昇が続くと予想される。
1月25日、堅調な第4四半期決算を発表し、航空・防衛事業の好調により、利益、収益ともに市場予想を上回った。
航空事業の売上高は、同社最大の成長要因であるF-35戦闘機の納入台数の増加により、前年同期比6%増の71億2000万ドルとなった。このステルス戦闘機は、同社の総売上高の約3分の1を占めている。
一方、THAAD(終末高高度防衛ミサイル)などのミサイル防衛システムを製造する同社のミサイル・火器管制部門は、直近の四半期で最も好調な部門の一つであり、売上高は12%増の32億2000万ドルに達した。
実際、InvestingPro の定量モデルでは、今後 12 ヶ月で LMT 株は現在の水準から約32%上昇し、510.90ドル に近づくと予測している。
出所:InvestingPro
3. Northrop Grumman
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時価総額:610億ドル
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年初来のパフォーマンス:+1%
世界最大の兵器メーカーであり軍事技術プロバイダーの1つであるNorthrop Grumman (NYSE:NOC)は、世界のドローン市場で最大のシェアを誇っている。同社はその提供品の一部として、1億2000万ドルのRQ-4グローバル・ホークを製造しており、これはアメリカ空軍とNATO加盟国によって広く使用されている。また、レーダーを回避できるRQ-180ステルスドローンの設計・製造も手掛けている。
さらにB-2ステルス爆撃機の製造でも知られている。現在、通常兵器と熱核兵器の両方を運搬できる長距離ステルス爆撃機、B-21レイダーの開発を主導している。また、極超音速兵器プロジェクトや極超音速防衛システムにも投資している。
NOCは、2022年年初来で1%、過去12カ月で31.4%上昇しており、昨夜は1月19日につけた史上最高値408.97ドルを目前にして390.73ドルで取引を終えた。現在の評価額における同社の時価総額は610億ドルとなっている。
同社はロッキード社のF-35の主要な下請け業者であり、また高度な無人機の主要メーカーでもある。西側とロシアの緊張が高まっている現在、利益を得るには絶好の位置にある。
1月27日に強弱まだらな4四半期決算を発表したが、労働力不足とサプライ・チェーンの問題の悪影響により、主に収益予想を下回るものであった。
現在の環境の中で世界的な政府・軍の防衛予算の増加から利益を得ているため、同社の2021年の総利益は2倍以上の70億ドルに達している。
当然のことながら、InvestingProのモデルによると、NOCの株式は現時点で過小評価されており、494.32ドルの予想株価になるためには、今後12ヶ月でおよそ26.5%の上昇を見る可能性があることを意味する。
出所:InvestingPro