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ロシアによるウクライナへの攻撃で急騰した原油だが、需給決定に欠かせない3つの要因

発行済 2022-02-24 22:49
更新済 2023-07-09 19:31
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今朝はロシアがウクライナに侵攻し、東欧での地政学的リスクがエスカレートしたため、ブレント原油WTIはともに100ドルを目指す動きとなっており、今後も高値更新が続くと思われる。

ブレント原油 週次チャート

状況が急速に変化する中、トレーダーはレトリックと政治を整理し、現在のエネルギー状況に実際に影響を及ぼしている要因を理解する必要がある。

原油(WTI)週次チャート

また、なにが石油やガスの供給に長期的に影響を与える可能性があるのかを特定できなければいけない。以下の情報はすべて執筆時点のものであることに留意してほしい。

しかし、現地や市場の状況は依然として非常に不安定であり、情勢は急速に変化する可能性がある。そのため、適切なデューディリジェンスを行う必要がある。以下は、3つの重要な問題点である。

1. ノルド・ストリーム2はまだ取引が停止されていない

火曜日、ドイツはノルド・ストリーム2パイプラインの稼働を許可する証明書をまだ発行しない意向であることを発表した。このニュースが流れたとき、多くのメディアは、この行動がエネルギー供給にとって実際よりもはるかに重要であるかのように報じた。例えば、CNNの見出しは「ドイツがノルド・ストリーム2を停止、ロシアは厳しい警告で対応」となっている。同様に、ニューヨーク・タイムズは、「ドイツはロシアの重要な天然ガス・パイプラインであるノルド・ストリーム2を停止させる 」と書いている。

これらの見出しはいずれも、ドイツが実際にパイプラインを通る天然ガスの流れを止めたと読者に思わせるものである。このため、投資家は西ヨーロッパのエネルギー危機が差し迫っていると考えるかもしれない。しかし、ノルド・ストリーム2はまだ稼働してもいない。

当パイプラインは物理的には完成しており、ガスを出荷できる状態になっているが、使用されていないのだ。パイプラインを所有するロシアのGazprom (MCX:GAZP)は、EUの反競争的規制をまだ遵守していないのである。ドイツが火曜日に行ったのは、パイプラインの最終的な認証を当面保留にすると発表しただけである。

しかし、ドイツがこのパイプラインを認証するのは、いずれにせよ今年後半になると予想されていた。この動きによってガスの配送に影響が出ることはない。ノルド・ストリーム2に関する今回の発表がもたらす短期的・長期的な影響を考える投資家は、エネルギー問題に関する不正確な見出しや報道に注意する必要がある。

本来のノルド・ストリーム・パイプラインにも天然ガスを供給しているGazpromが、ドイツとEUにノルド・ストリーム2の認定をさせるよう圧力をかけるため、欧州へのガス輸出の抑制を決定する可能性はある。しかし、これはあくまで仮定の話である。

2. レトリックと実態は異なる-ロシアの石油とガスは今も流れている

米国のバイデン大統領とジョンソン英国首相のスピーチは、「ロシアの侵略に反対する我々の結束」を強く表明し、制裁を厳しい「最初の弾幕」と位置づけた。バイデン大統領はまた、米国民「自国においても、我々にとってのコストが発生する」と警告した。

演説の中でバイデン大統領は、ガソリン価格の上昇に言及している。確かに米国では、ロシア・ウクライナ情勢の不透明感による原油価格の高騰もあり、ガソリン価格が上昇している。しかし、これまでに発表された制裁措置は、情報弱者の投機筋の間以外では、いずれも原油取引に影響を及ぼしていない。

実際、TankerTrackers.comによると、火曜日には70万バレルのロシアの原油が米国に向けて出港している。投資家は、両国の指導者のレトリックが、必ずしも地上や水中での行動に結びつかないことを忘れてはならない。

天然ガスに関しても、レトリックは現実と一致していない。例えば、米国の高官は記者団に対し、ドイツがノルド・ストリーム2の認証を一時的に停止したことは、パイプラインが「これから無駄になる」ことを意味し、これは「世界がロシアからエネルギーを独立させる大きな転換点」であると述べた。

これは、単純に現場での話ではない。ノルド・ストリーム2における実態は前述した通りだが、ロシアから欧州や中国の各地に天然ガスを送り続けるパイプラインも複数存在する。

3. OPEC+は計画を替える可能性は低位

バイデン政権は、サウジアラビアとOPECに対して増産を何度か促したが、サウジアラビアは現在のOPEC+協定で認められている以上の増産はしないという姿勢を貫いている。

むしろ、増産余力のあるOPECのアラブ諸国が、米国の懇願に異例の結束力で対抗している。2月20日にサウジアラビアで開催された業界会議では、サウジアラビア、UAE、イラク、クウェートの石油大臣が、決定した生産枠の範囲内で生産を継続することを約束し、同様の意見を表明した

実際、UAEのSuhail Mazrouei石油相は「現在、市場が大幅に供給不足に陥っているとは考えていない」と述べ、「我々の手の届かないところにある」地政学的緊張が原油価格に作用していると指摘した。

OPEC+が米国の増産要求をはねつけ続ける中、ロシアがOPEC+の活発で強力なメンバーであることを思い出すのは有益なことである。OPEC+の他の加盟国は、ロシアとの同盟関係を維持することに意欲的である。

このことがアラブ諸国の原油生産者の現在の政策の原動力となっているかどうかはわからないが、一役買っていることは間違いないだろう。しかし、投資家はOPEC+がまだ月次ベースで会合を開いており、加盟国は十分な理由があれば生産政策を変更できることを念頭に置いておく必要がある。次回の OPEC+の会合は3月2日に開催される。

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