ハトを放て:
別の面では中道派であるセントルイス連銀総裁のジェームズ・ブラード氏によるハト派的な発言によって、米国経済に関し、すべてが順調というわけではないとの考えが示された。彼の見方により、DXY指数は、昨日の朝以来、全体で0.06%低下することとなり、対EUR、対GBP、対CHFでUSDの日中の上昇を一掃し、対JPYで60pipのリトレースメントを招き、日銀がさらに金融を緩和することはないとの決定を受けて、対JPYでのその動きは今朝さらに進行した。FOMCメンバーの投票は、米国におけるインフレ率の低さによって、FRBは「より長期的な枠組みで」引き続き資産購入刺激策を維持することができ、インフレ率がFRBの2%目標を優に下回るディスインフレ環境にある限り、量的緩和からの後退は正当化されないことを強調した。このため、ブラード氏が、過去1年間実際に改善の見られた労働市場環境の改善の必要性に言及したほか、彼は、資産購入を縮小するための条件としてのインフレ基準について繰り返し言及した。ブラード氏は、米国債よりも不動産担保証券の削減が好ましいとしているため、どの程度、縮小するかということについては、1ヵ月850億ドルの債券購入における削減が、100億ドル~200億ドルの間で「相対的に少なくなる」と述べた。6月18日の金融政策会合前のFOMCメンバーによる公的な行事への参加としてはこれが最後の行事であったことに鑑み、ブラード氏のハト派的発言は、市場で過度に重視された。
今日は、データ面では比較的閑散とした1日で、最も重要なイベントは、ドイツの憲法裁判所が、ドイツの納税者から国内目的のために資金をはく奪するECBによる国債買取制度(OMT=Outright Monetary Transactions)の合法性を判断する点である。この制度の許可は、市場で大いに材料視されているが、これが最初の事象ではないため、ECBの訴訟の却下によって、EURに対する大きな下方圧力が生じ、ユーロ圏内の問題を浮上させる可能性は高い。
本日、英国は、4月の鉱工業生産指数と製造業生産指数を発表する。前月比での鉱工業生産は、変わらずと予想され、前年比での数字は-1.4%から-0.6%に改善するとみられる。前月比での製造業生産指数は、0.2%縮小すると予想され、3月の数値は1.1%となり、2ヵ月連続での拡大は終了するだろう。製造業生産指数は0.3%の低下が予想されるため、前年比では16か月連続での縮小を示すことになるだろう。ただし、15か月で最低水準の縮小である。国立経済・社会研究機関は、GDP速報値を発表する予定であるが、予想は発表されていない。
米国では、5月のNFIBの小規模企業楽観指数は、92.1から91.5への悪化が予想される。ホールセール在庫も、4月は、0.4%から0.2%への減速を示すと予想される。
最後に、オーバーナイトでは、日本の4月の機械受注が縮小を示すと予想され、前月比では8.1%、前年比では4.3%の縮小を示すだろう。興味深いことに、前年比での国内企業物価指数は、14か月ぶりのインフレを示すとみられ、0.6%の上昇となるだろう。
マーケット
EUR/USD
フランスの鉱工業生産指数が、昨日、予想よりも大幅に高かったことが、EUR/USDに何等かの上方への動きをもたらし、3ヵ月ぶりの低水準であり、予想よりも悪かったユーロ圏の6月のSentix投資家信頼感指数が、同ペアが1.3230のレジスタンスまで上昇するのを遮ることはなかったが、その後、1.3185へのリトレースメントが生じた。そして、ブラード氏のハト派的発言が、110pipの上昇を招き、1.3230の突破を招き、非常に重要なレジスタンス水準である1.3300をわずかに下回る水準でレジスタンスを見出した。
• これらの水準は1日維持され、非常に強力なレジスタンスが1.3300 – 1.3320領域に見出され、従来のトレンドライン・サポートである1.3330は、レジスタンスに転換した可能性がある。この領域を突破すれば、次のレジスタンス水準は1.3370と1.3425に現れる。1.3200はサポートとして機能し、現在はトレンドライン・サポートが見られるため、重要なサポートは、1.3230のフィボナッチ水準に存在する。
USD/JPY
本日早い時間に、日銀は、昨日の予想外の成長率4.1%となった景気の回復を理由に、4月の誓約にこだわり、一層の刺激策に反対する決議を行った。市場は、日銀が、特に不動産投資信託の一層の購入を発表すると、ある程度期待していたため、動きがなかったことから、USD/JPYは97.78のサポートにまで急落した。
• レジスタンスは、99.15 – 99.35領域内の昨日と同様の水準に見られ、次のレジスタンスは100円の大台をわずかに下回る水準に存在する。サポートは上昇する可能性が高く、23.6%フィボナッチ・サポートである97.90-98.15のあとは、97.05でサポートを見出すだろう。
GBP/USD
RICS住宅価格指数が、約3年ぶりの高水準を示したことが、同ペアに最低限の影響を与え、昨晩、ブラード氏の発言を受けて100pip超上昇した。本日、大半のデータは英国が中心で、その他の指標は閑散とした一日になるとみられることから、GBPは、トレーダーから過剰な注目を集めるだろう。
• フィボナッチ・レジスタンスは、1.5610に現れ、弱いトレンドライン・レジスタンスは1.5650に現れる。重要なレジスタンスは、2012年下半期に見られた上昇局面の61.8%リトレースメント水準であり、200日移動平均と一致する1.5690に見られる。サポートは1.5500に現れ、トレンドライン・サポートは1.5515に現れる。
金
金は、非常に狭いレンジでの取引となり、レジスタンスを1388ドルに、サポートを1375ドルに見出し、USDが対EUR、対GBP、対CHFで100pip超下落したにも拘わらず、ブラード氏のウォーストリート・ジャーナルのインタビューを受けて、10ドル超の上昇を達成することはできなかった。
• 1378ドル~1387ドルのレンジのほかに、トレーダーは、1400ドル~1404ドル領域にあるレジスタンス、また1423ドルにある次のレジスタンスに注目されたい。サポートは、1363ドルと1348ドルの弱い水準に見られる可能性がある。
原油
WTIは、2008年の史上最高値から延びている主要なトレンドライン・レジスタンスである96.40ドルから戻し、ブラードが演説を始めたときには、USDが下がり始めたため、95.50ドルからの下方突破は止まった。
• サポートは、2つのフィボナッチ・リトレースメント水準がみられる95.50ドル~95.70ドルの領域に現れ、次のサポートは94.45ドル、94.05ドル、50日移動平均である93.50ドルに現れるだろう。強力なトレンドライン・レジスタンスは96.40ドルと97.00ドルに現れる。
通貨レートベンチマーク - 今日の勝者と敗者
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